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外国化したニセコの現状から考えた、日本のスノーリゾートの未来

東京はすっかり春ですね。先週から北海道のニセコエリアにいます。

ニセコという地名くらいは聞いたことがあるかもしれませんが、外国人が押し寄せて最近では「日本のなかの外国」とかいわれているスノーリゾートのことです。

倶知安町・ニセコ町をはじめとした5つの町にまたがっていて、一番大きいスキー場であるグラン・ヒラフの麓には、レストランやBAR、ショップなどが集中しています。

そこに滞在していて思ったのがこちら。

実は、「雪」や「雪山」にたいして異常な思い入れがありますので、その話をしたいと思います。


ひとりの雪山好きとしての自己紹介

noteではPR広報など仕事のことばかり書いて、パーソナルな「好き」はあまり出してこなかったのですが、雪山やスノーボードと横乗りカルチャー全般が大好物です。

小さいころから親に連れられてスキーに行っていた影響で、なんとなくスノーボードをするようになり、学生のころは湯沢や白馬に篭っていたりしました。社会人になっても年末年始はよく雪山にいます。

もちろんスキーやスノーボードをすることも好きなのですが、自分が滑ること自体にはそこまで強いこだわりはありません。ちょっと珍しいタイプだと思うけど、自然の雪山そのものとそこに根付くカルチャー、そしてスノーボーダーの思想やスタイルを愛しています。

これを語ると記事が終わっちゃうのでやめますが、スノーボードにチャラチャラした印象しかもっていない人には伝えられることがたくさんあるし、社会文化論として論文1本書けそう。

そんなこともあって、「もう雪も溶けてる春のニセコでなにがしたいの?」と見下されようと、めげずに偵察してきました。


外資の参入が止まらない2019年のニセコ

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この写真はヒラフの町から羊蹄山を見下ろしたところです。

美しすぎて泣ける……。こういう景色を見るために雪山に来ていると言っても過言ではないです笑

下の方にペンション街が見えると思いますが、このあたりに滞在しているのはほとんど外国人。ニセコは想像以上に「外国人の、外国人による、外国人のための街」でした。

2001年ごろから「雪質がめっちゃいいよ!」というオーストラリア人の口コミが広がり、外国人がパウダースノーを求めて続々とやって来るようになったのがNisekoのはじまり。

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街も飲食店も英語&外国人ばかりで、こういうカフェにいくとナチュラルに英語で接客されるので、ここは海外かと錯覚します。歩いていて日本人を見つけるほうが難しいくらいで、標識や案内も英語がメイン。最近は中国人などアジア系の人も増えています。

街全体が「まるで海外の高級スノーリゾート」なのは今にはじまったことではないとして、2019年現在、注目すべきは勢いが止まらない不動産事情だと思いました。

ツイートしたように、外国資本のホテル建設がガンガン決まっています。
ヒルトンに続き、2019年にはHANAZONOエリアにパークハイアットが、2020年にはニセコビレッジにリッツ・カールトンが建設予定。

ニセコエリアある4つのスキー場は、かつてはすべて日本が運営していましたが、現在は「ニセコビレッジ」がマレーシアの大手建設コングロマリットYTLコーポレーションに、「ニセコHANAZONOリゾート」が香港資本の日本ハーモニー・リゾートにそれぞれ買収されています。買収元の企業がホテルの建設を進めているんですね(ニセコビレッジの買収価格は60億円だとか)。

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グローバルブランドのホテルだけでなく、コンドミニアムもすごいです。

景観条例により高さ10mを超える建築物は作れないものの、写真のような低層のおしゃれな外観のコンドミニアムがぼんぼん建てられているんです。

最近では欧米よりも、マレーシアやシンガポール、香港などのアジア圏の勢いがすごいようです。ひらふ十字街からすぐのところには、シンガポールのデベロッパー「SCグローバル」が巨大コンドミニアムを建設中です。

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個人的にとくにすごいと思ったのが、香港資本のTELLUSという住宅ブランド。

すでに骨組みまで完成しているTELLUS Nisekoに続き、巨大コンドミニアム群のTELLUS Hirafuを羊蹄山ビュー抜群の立地に建設予定。ショールームをチラ見してきたら、模型がありました。異世界すぎる。

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さらに、少し離れたところに小さめのヴィラが立ち並ぶTELLUS Villasも作ろうとしています。夏にもよさそうだなぁ。

ニセコエリアでは、年々土地の値段がものすごい勢いで上がっていて、アジアの富裕層による資産分散目的の不動産投資が盛り上がっているるらしいです。コンドミニアムは最低でも1室1〜2億くらいとか。自分が住むこともあれば、住まない時期に人に貸したりして活用している人もいます。

東京五輪の影響もあるのかこれから伸びる予感しかないニセコの価値に気づき、こぞって投資をブチ込んできているというわけです。(日本の富裕層はどうした)


“雪”は何にも代えがたい天然資源

外国人がたくさん来て盛り上がるのはいいんです。むしろ歓迎。

残念だなと思ったのは、こんなにおいしすぎる状況にもかかわらず日本はまるで儲かっていないし、地域経済はぜんぜん潤っていないらしいということです。

雪という資源があるにもかかわらず、外からやってきたやり手のビジネスパーソンたちに、旨みを全部持ってかれてる。もはや陣取りゲームなので、一度建てられちゃったら取り返すのは難しいです。

リゾート経営について何か言える立場じゃないのはわかってるけど、さすがに悔しすぎません?

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こんなことを書いているのは、「“雪”は日本が誇る天然資源である」という意識をすこしでも広まればいいなあと思ったからです。

日本のパウダースノーは世界レベルで見ても質がよく、「JAPOW」と呼ばれて海外にも愛好者がたくさんいます。雪を求めてはるばる訪れて来る外国人が、毎年何人もいるんです。もはやJAPOWは国を挙げて守っていくべきブランドで、たいした資源もない日本に残された最終で最強のコンテンツではないでしょうか。


雪は自然によるものなので、どう頑張っても人間の力で降らせることはできません。その意味では、「石油が湧き出る」「珍しい鉱物が採れる」「地熱エネルギーが豊富」「新鮮な魚が獲れる」みたいなことと同じくらい価値があることのはずですよね。

天然資源って地球全体にランダムに分散していて、何がどれだけあるかがダイレクトに国力に影響するし、資源を巡って紛争が起きるくらい貴重なものです。

なのに、たぶんJAPOWの価値に気づいている日本人はとても少ない。それどころか雪関連の報道はネガティブなものばかりで、どちらかというと悪いイメージがあるような気がします。

雪かきで命を落とす老人、滑って転倒し骨折、雪崩・滑落・遭難事故、電車やバスの遅延、都心の叫ぶ駅員さん、ドロドロの茶色い地面、会社への遅刻連絡

などなど……。天然の雪は、もっと美しいものなのに。

美しい雪の結晶、サラっとした粉雪、朝日を受けて光るつらら、ふわふわのパウダースノー、滑ったあとのなめらかなライン、時間帯と天気でコロコロ表情を変える雪山

全国民がこっちを見てくれないかなぁ。。


今、地球温暖化の影響もあり、降雪量はかなりの勢いで減りつつあります。すぐに食い止めるのは難しいことですが、雪を天然資源として大切に守っていかねばと思う人が増えてくれれば、きっとよいほうに動きます。

雪を大切に守ることは、巡り巡って日本の観光産業や経済を潤すことに繋がると、けっこう本気で信じています。


個人でできることはそんなにないけど

リゾート開発はとても規模の大きいことだし、行政やいろいろな利権も絡んできます。精一杯やってきた結果が今なんだろうし、ニセコはもう諦めて外国人にお任せするしかないかなーと、今回の滞在で思いました。

幸い好き放題やれるというわけではなく、いろいろな認可システムや条件があるようなので、せめて日本人が来づらい状況にはならないことを祈るだけですね。。


そんな日本が今すぐにでもやるべきことは、残された「白馬」を死守することだと思います。

白馬にも外国人は増えていますが、感覚的にはまだ大丈夫。国内企業が頑張っています。日本のスノーリゾートならではのよさも、まだまだ残ってる。でも今シーズンの雰囲気を見ていると、時間の問題のような気がします。海外企業が目をつけたら一瞬でなだれ込んでくるだろうなー。

正直、もうこれは自信をもって言えますが、海外企業にはぜんぜん勝ち目がありません。ニセコを見ると「あ、こりゃ無理だわ」となります。日本人にはたぶん作れなかっただろうなーという理想のスノーリゾートが完全にできてる。


まあなんだかんだ言っても私には何もできないんだけど、ひとつ身近なところで思っている課題は、雪山やスキースノーボード、スノーリゾートまわりのことをマーケティング視点で考えている人、それを発信している人が少なすぎるなぁということかも。

日本にも、この領域で慣習に囚われずにイノベーションを起こしていく姿勢が必要ですね。バブル期を遠い目で見て「あの頃はよかった」「昔はスキー場が儲かってねぇ」と言うだけじゃなく、そこから進めていかないと。

言うのは簡単なんですけどね。ビジネスとして目をつける人がもう少し必要なのかなと。でも、そもそも興味ないのかな、みんな笑

スキー場まわりはけっこう古い業界体質なので、大人の事情かなにかが挟まっていないことを祈ります。


書いて現状を伝えることくらいならできるので、とりあえず書いてみました。

何者でもありませんが、ニセコに来てやっぱり雪山が好きだなあと思ったので、勝手にスノー業界に食い込んでいきたいと思います。

おわり。

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