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「医療事務はコストセンターか、プロフィットセンターか」問題について

病院にとって医療事務とは、どんな存在か

先日、精神科医の三木 崇弘先生がこんなnoteを書かれていました。

結語として
「事務部門は、医療機関のギアでありオイルです。」
とまで言っていただいて震えました。
そもそも医師の立場から事務部門を慮ってくれることに
先ず大きな衝撃と、大変なありがたみを感じた次第です。
私も一介の事務員ではありますが、事務側のアンサーソング的に
「事務部門はどういう存在なのか」
を考えてみたいと思います。

医療事務はコストセンター

タイトルで大きく打ち出したんですけど、
僕個人の感覚としては医療事務は「コストセンター」です。
「感覚」と書いたのは、実はこの「プロフィット?コスト?」みたいな部分は結構いろんな観点がもうわちゃわちゃとありまして。
そもそもそのコストやらプロフィットやらを金銭的な価値で測るのか、それとも機能的な価値として測るのかというところから
いろんな理論やポリシーがひしめいているのです。
推察ですが、「お前はコストセンターだ!」と言われて
気分よく思わなかった人たちが
「いやいや!僕らも利益を生み出してるんすよ!」
という理論を生み出して、
働く意欲を湧き立てようとしたんだと思います。
でもね、正直「お金を生み出す」という本質からずれていくと
ちょっとカッコつけすぎじゃね?と思うのです。

『受付しないと診療できないので、医事はプロフィットセンター』
とか
『レセプト作るから請求ができるので、医事はプロフィットセンター』
というのは僕は違うと思う。
これらは、お金を生み出すわけじゃないんですよね。
「お金を生み出す部分に接続する機能」なのです。
診療行為という価値を金銭に変換させるために
事務というコストが必要なのです。

そもそも医師以外はコストセンター

そもそも、僕は病院において、究極にシビアにとらえて
「医師がプロフィットセンター、医師以外はコストセンター」
ぐらいに考えています。
例えば、医師が全然いないけど、
看護師や薬剤師、事務がたくさんいて
かつ彼らがやる気に満ち満ちている病院があるとします。
どうなるか。
絶対に潰れます、絶対に。
医師がいないと患者が集まらないので、外来も入院もスカスカになります。
ケアしようにも患者がいなくなります。
処方することもままなりません。
医師が少ない、つまり「診療」という価値創造行為が少ない病院は
「お金を生み出せない」のです。

コストセンターとしての矜持

コストセンターだからといって卑下する必要もないと思います。
プロフィットセンターとコストセンターは
それこそ「利益」と「損失」という対立関係ではなくて
組織の経営にのために必要な機能を分担している関係性です。
プロフィットセンターは収益を生み出し
コストセンターは収益を最大化させるのです。
なので、コストセンターの使命は
プロフィットセンターのリソース効率を最大化させることだと思うし、
そういう矜持をもって仕事をしたいと思っています。

簡単にいうと「医師にもっと診療をさせる」ために
コストセンターは存在しているのです。
お金を生み出せる人が、お金にならないことをしていることこそ
何よりも無駄です。
「医師でなくてもできることを多職種で行う」
ということは極めて病院経営において合理的な考え方です。
そして、医事もその一端を担っている、
つまり経営に参画しているということは
忘れてはならないことだと思います。

医療事務をどう取り扱うべきか

「士農工商・医療事務」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
医療事務は士農工商の下、
つまり最下層の扱いをされているよという比喩です。
私の勤めている病院では、そこまで痛烈に感じることはないですが
その思想が漂う行為に遭遇することは、そんなに珍しくはありません。
(もう感覚が麻痺してるのかも知れません…)
2019年の新卒採用がそろそろ佳境を迎えています。
どうも労働人口が増加するピークが今年とのこと。
来年以降は退職者に対して新卒者がマイナスに転じるようです。
そんな中で「士農工商・医療事務」に組み込まれたい人を
どれだけ採用することができるでしょうか。
既に年々厳しい採用が続いている状況に、
今後ますます拍車がかかるでしょう。
今までのように、「僕エラい人、君エラくない人」という扱いや
待遇で働き手が集まるのか、きわめて不安です。

もう一つ、頻繁に耳にする言葉があります。
「そんなこと、事務を雇ってやらせればいい」
という言葉です。
医師や看護師が雇えないから、事務なら雇えるだろう
これぐらいならやれるだろう、という上から目線の言葉だと思います。
誰が「そんなこと」と言われることをやるんでしょうか。
貴方の娘や息子が「そんなこと」をやっていたらどう思うでしょうか。
「そんなこと」をやるのは「損な事」だと、
さすがに一般人でもわかります。
こういう発想で事務を取り扱う組織は、人が逃げていきます。

確かに対等な知識や経験を有していないかもしれない。
儲けを生み出すことが出来ないかもしれない。
でも、組織を経営するうえでは
プロフィットセンターもコストセンターも
必要な機能として対等な位置にあるんだということを
全ての医療にかかわる人たちは認識して
これからを作り出していければいいなぁと
祈りのような気持ちでいる次第です。

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