【ぶんぶくちゃいな】立場姐姐が語る「香港デモの現場からみた運動の現実」その1

7月1日、みなが衝撃を受けた立法会ビルへのデモ隊突入、そして議場占拠。逃亡犯条例改訂に反対して起こったデモでは初めての激しい破壊力を見せつけた立法会ビルへの突入と、明らかに台湾ひまわり学生運動の縁起を担ぐかのような議場占拠は、突然のことに多くの運動賛同者を困惑させた。ある意味、運動に同調していた人たちの多くにとって、許されざる事件になりかけたと言ってもいいだろう。

だが、そんな市民の視野を変えた現場からの生中継動画があった。

警官隊の包囲が始まる中、議場内になだれ込み、「議場占拠」を宣言して撤退を拒絶する4人の仲間を担ぎ上げてビルの外に撤退した人たちの一人を、インタビューした動画だ。

揺れる画面の中で、顔や姿は一切映らないが明らかにまだ幼い声の女性が、「(警官隊に包囲されて)ビルから出ていけなくなるかもと怖かったけど、あの4人が逮捕されて明日会えなくなる方がもっと怖かった」と嗚咽する様子を捉えていた。

この動画は市民にあっという間にこの「突入ー占拠」の様子を理解させ、その行動に対する評価を180度変えた。これを撮影、配信したのがオンラインメディア「立場新聞」の何桂藍記者である。その後、彼女は「立場姐姐」(立場姉さん)と呼ばれるようになった。

「立場新聞」は、もともと2014年の雨傘運動直前まで運営されていたオンラインメディア「主場新聞」を前身としたメディア。主場新聞は、広告掲載をタテにされて次々と親中派に寝返っていくマスメディアに対して、文化人やビジネスマンが個人企業の形で設立し、反政府、反中国の人たちに大変歓迎された。しかし、中心人物だったビジネスマンが「家族に危険が及ぶ」として突然解散を宣言、ウェブサイトも閉鎖した。

立場新聞は主場新聞を運営していたメンバーの一部が新たに2014年の雨傘運動末期に編集部を設立した。しかし、主場新聞のように個人の運営者に判断を委ねることで瓦解することを恐れ、「信託制」を取って運営されている。

なお、後日談となるが、何桂藍さんは、7月19日に行われたこのBrew Noteサロンの直後の21日に、地下鉄元朗駅で発生した無差別襲撃事件の現場に居合わせ、襲撃されて負傷。しかし、ケガを負いながらも前後1時間半の動画生中継を続け、事件当時何が起こったかを改めてつぶさに市民に伝えている(以下の動画の約7:50くらいに撮影中の彼女が襲われる様子が映っている)。

今回文字を起こしたサロンの実況動画はこちら。

「香港デモの現場からみた運動の現実」その1

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