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【ぶんぶくちゃいな】端媒体:蔡英文の中台関係「100字発言」戦略を読む

今回は、香港のネットメディア「端媒体 The Initium」に掲載された記事を、許可を頂いて翻訳してご紹介します。台湾で女性として初めて民進党から総統に就任した蔡英文さんが、民進党を「台湾独立派」として警戒する中国に対していかなる戦略を取っているのか。台北からライター史派西さんによる非常に興味深い分析です。

民進党のスポークスマンはメディアに求められ、手にしたメモの文字を一文字も間違えないように、丁寧に読み終えた。

5月5日の午後、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」は、「『92年コンセンサス』(注1)を認めないのは中台関係の共同政治基礎を破壊である」というタイトルの論説員の署名入り論説を掲載した。中国共産党の政治用語をよく知る人にとっては、これは政府の立場を代表する意図が非常に詰まった政策キャンペーンスローガンであり、ある意味「挑戦的だ」と言ってもいい。

[注1 92年コンセンサス:1992年、中国と台湾がそれまで論じてきた「一つの中国」という原則を確認し合ったもの。一方でここでいわれる「中国」が「中華人民共和国」なのか「中華民国」なのかについては具体的に定義づけず、曖昧な「合意」とされた。]

論説は台湾で今年1月に行われた総統選挙を順序立てて整理した、北京側の一連の主張が述べられており、そこで使われているのはこれまで一貫した口ぶり、一貫した用語で、民進党が「92年コンセンサス」を否定し、その中核的な意味合いを認めず、「台湾の新たな指導者に当選した人物が口にする、いわゆる『現状維持』は口先だけのものであり、その責任とそこから生まれる結果を民進党当局は受け入れるしかない」と述べている。

「人民日報」はそこで1325字を使って滔々と自説を展開したが、民進党のスポークスマンはそれに対する返答を求める台湾メディアたちを前に、わずか82文字でこう応えた。

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