【ぶんぶくちゃいな】「香港衆志」:政治青年たちの青春残酷物語

月刊「ぶんぶくちゃいなノオト」の「すり替えられた、中国政権下の『香港』『民主』『選挙』」で、3月に行われる香港立法会選挙に政党「香港衆志」から立候補した周庭さんが、その参選資格を剥奪されたことを取り上げた。香港の若者たちを中心に盛り上がる民主化運動にとって大打撃ともいえる事件となっている。

2月12日に香港のネットメディア「端伝媒」が「香港衆志」のメンバーたちに詳細なインタビューを行い、最新の状況をまとめた記事「将政治注入生命,衆志青年的青春残酷物語」を掲載した。香港で今最も注目を浴びる若者グループの政治運動がいかなる状況に置かれ、彼らが今なにを考えているのか、つぶさに分かる大変貴重なドキュメントである。

今回はこの記事を端伝媒編集部の許可を得て翻訳掲載する。なお、文中の登場人物の敬称は略した。また、()内はオリジナル記事の説明、[]はわたしが追加した注釈である。

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(新年を前にした会議に集まった「香港衆志」の中心メンバーたち。みんなが集まれば、冗談やイジり、ボケをかまして大笑いする普通の若者たちである。前列左から右へ陳珏軒、羅冠聡、周庭、黄之鋒、袁嘉蔚。後列左五から右へ鄭家朗、黄莉莉、林朗彦。撮影:林振東/端伝媒)

新年が近づき、黄之鋒[ジョシュア・ウォン]、羅冠聡[ネイザン・ロー]、周庭[アグネス・チョウ]らは連日、ビクトリア公園の年末露店[*1]に立ち、さまざまな商品を手に、彼らが所属する政党「香港衆志 demosistō」の活動資金集めをしていた。商品の一つは小さなスーツケースタグで、本来ならそこに「小心被人話勾結外国勢力!」[外国勢力と結びついているなんて噂されないように!][*2]と印刷する予定だった。しかし、香港のメーカーが印刷をしぶったため、最終的に簡単な言葉「廃青去旅行」[イカれた青年が旅に出る][*3]に改めるしかなかった。

[*1 年末露店:香港では毎年、旧暦の新年を前にビクトリア公園など市内数カ所の公園に政府が運営する新年用品を売る露店市が立つ。申し込みは政府の募集要項に見合っていれば既成の商業機関でも個人でもOKで、人びとは並んだ露店をそぞろ歩くのも年末の醍醐味である。]
[*2 「外国勢力と結びついているなんて噂されないように!」:昨今、中国政府は国内の政府に批判的なグループを「外国勢力にそそのかされている」「外国の資金をもらっている」などと攻撃している。だが、もともとイギリス植民地で西洋文化の薫陶を受け続け、外国人と共存する香港人の多くはこの物言いをバカバカしく感じている。]
[*3 廃青:昨今の香港で特に政治的な活動をする若者に向けられた罵り言葉。「くだらないことに首を突っ込む、イカれた青年」といった意味で、特に親中派が政治的な意識を持つ若者に対して使う。]

思い通りにできなかったのはキャッチコピーだけではない。この半年ほど、成立してまだ2年も立っていない、この新党は全面的に抑え込まれ、チェックされ、そして逆境に立たされている。羅冠聡の議席は取り消され[*4]、[議員生活を送った]300日分の賃金を立法会から返済を求められており、補欠選挙に立候補した周庭もその参選資格を取り消された。政党の綱領にある「民主自決」は政治的センシティブな言葉に仕立て上げられてしまった[*5]。ほかにも、新界地区東北部の開発計画反対運動[*6]および公民広場事件[*7]で、同党から林朗彦、黄、羅の3人が前後して有罪判決を受けた。

[*4 羅冠聡の議席取り消し:2016年9月の立法会選挙で歴代最年少の議員となった羅冠聡は10月の初登庁時に義務付けられた議員宣誓で、テンプレート以外の言葉を「民主」という言葉を挟み込んだ。それが問題になり、その後中国中央政府下の全国人民代表大会常務委員会[=中国共産党メンバー]によって法律解釈がなされ、それを受けて2017年7月、羅の議員資格が取り消された。]
[*5 「民主自決」:羅ら複数の議員資格が無効になった結果、2018年3月に補欠選挙が行われる予定で、周庭が立候補申請した。しかし、香港衆志が掲げる「民主自決」を香港政府が「香港独立と同義」とみなして「香港基本法」違反と判断、その立候補資格を取り消した。詳しくは「ぶんぶくちゃいな」218号を参照のこと。]
[*6 新界地区東北開発計画反対運動:中国政府の求めで香港政府が受け入れた、中国から香港に乗り入れる高速鉄道路線の開発建設で収用された土地をめぐって起こった官民対立事件。香港で数少ない農地が収容されたことに、若者を中心とした人たちが立ち退きを迫られる人たちの支援に回ったが、最終的に逮捕者を出した。]
[*7 公民広場事件:2014年の雨傘運動前夜に政府に抗議する若者たちが、政府敷地内に柵を乗り越えてなだれ込んだ事件。黄と羅らが起訴され、昨年8月に有罪判決を受けた。その後入獄するも控訴して保釈。2018年2月になって黄らの主張が受け入れられて有罪判決は棄却、社会服務令を命じた一審を支持する判決が出た。]

「少なくとも今頑張っている連中が餓死しない程度には続けられるだろうか? ぼくはそれをはっきりと、絶対に大丈夫だと保証できる自信はない」と、今後について尋ねた記者に香港衆志主席の羅は言った。その口調は重く、疲れた様子だった。議会入りのための道は完全に絶たれてしまい、安定したリソースと足場を失ってしまった今、彼と年若い政党メンバーたちは「生き残るためにもがく」必要に迫られているところだと彼は認めた。

この若い香港の政党には目下、10人の常務委員がいる。それぞれが20歳ちょっと、最年少は18歳の新常務委員、鄭家朗だ。彼らはここ数年香港で風雲を巻き起こしている政治の道に踏み出すためのさまざまな試みを行い、自分の能力と方向性のボトムラインを試し、またその道筋における自分の立ち位置を探し求めている。

「本当のことをいうと、ぼくは今でもまだ判断がつかない。彼ら(中国中央政府)は恐れているのだろうか、それとも純粋に一匹のアリを踏み潰すように叩き潰してしまおうと思っているのか」。2018年2月、あるカフェでのインタビューの最中、羅冠聡は時どきメガネを外し、腫れた目を手でもみほぐした。政界入りを決めたばかりのころにとっくに叩かれたり、締め付けられることへの心の準備はできていた。だが、「相手がどんな手法を使って、どんな形で目的を達そうとするのかについては予測しようがなかった」という。

●生々しい政党政治の泥沼にはまりこんでしまった

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