【ぶんぶくちゃいな】パーティ事件その後:高官処分で暴露された香港政局の「地勢図」

春節、香港では「農暦新年」と呼ばれるが、この中華圏にとって1年で最も大事な旧正月の大晦日にあたる1月31日、政府の民政局長だった徐英偉が辞表を林鄭月娥・行政長官に提出したことが明らかになった。

やっと、というべきか、さもありなん、というべきか。

徐氏は《【ぶんぶくちゃいな】 「オミクロンか、政治力か?」香港政治新生態》でお伝えしたとおり、1月3日夜に開かれた、なんと200人以上が出入りした誕生パーティに出席。あろうことか、出席者がマスク無しで歓談し、カラオケに興じたりしていたその場に長時間滞在していたことがわかった。出席者の一人が翌日、陽性判定され、足取り調査によって芋づる式に暴露されたのだった。

文字通りの民生行政を管轄する民政局は、新型コロナウイルス感染防止対策では衛生署に次ぐ重要な任務を負う政府の部署である。また徐氏は行政長官の顧問機関である行政会議のメンバーで、そこで新型コロナ対策を議論する立場にあった。

さらに気まずいのは、このパーティの主人公は中国の全国人民代表大会香港地区代表という「中国政治システムにおける要人」だったことだ。徐氏の他にも香港政府の要職者15人(先の記事では「16人」としたが、うち一人は昨年定年退職した元税関局長)や、昨年12月の選挙で選出されたばかりの立法会議員20人あまりが出入りしていたことも暴露された。

すでに市内のあちこちでクラスターが出るたびに団地ごと封鎖されたり、同月7日から飲食店の夜間営業禁止措置が始まることになっていた。そのような厳戒態勢において、政府の要人たちがマスク無しの大規模パーティに興じていたのである。

加えて、件の陽性判定が出た人物が夜9時半に会場に到着したため、出席者の出入り時間を調べようとしたところ…徐氏は昨年12月に義務付けられた、飲食店出入り時のQRコード読み取りアプリを利用していなかったことも明らかになった。

つまり、香港の新型コロナ対策ルールを作る立場にある民政局長が自ら数々の「ルール破り」をし、またそれが同パーティの出席者の中でも最も深刻な「違反行為」だった。既報のとおり、林鄭月娥行政長官は緊急記者会見の席で、徐氏を名指しして「非常に失望した」と厳しい口調で非難した。

特に、パーティ参加者のうち9時半以前にその場を離れたことが証明された高官や議員たちがPCR検査によって陰性が確認された後、続々と政府の強制隔離施設を後にするなか、当然徐氏はそこで2週間の強制隔離期間を過ごさなければならなかった。そこから、徐氏の進退が大きな注目を集めていた。

それは「ルール破り」高官への市民の不満爆発だけが理由ではなかった。徐氏の進退は、現状の香港の「政治構造」を論ずるための重要な指標になるからだった。

●劣勢をさらした親中派政党


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