【ぶんぶくちゃいな】中産階級という「海賊船」

昨年末、いつものように中国メディアに流れている話題やニュースを読んでいて、「中産階級」を語ったものがバラバラとさまざまな媒体で流れているのに気がついた。

そのタイトルがどれも、「『中産』という海賊船に決して乗るなかれ」「中産階級の夢と現実」「折り畳まれた中産階級」などとひと目見て重苦しいものばかり。またなによりもそれが掲載されているメディア(個人メディア含む)は一つ残らず、いわゆる中産階級が集うメディアというのも、気になった。

習慣的にメディアを眺めていて一つのキーワードがどーんとあちこちで吹き出すとき、わたしはそのきっかけになった「事件」がある。木の葉を見てそれがどんな木の葉っぱなのかに興味を持ち、その生えている根っこを探し出す、ようなものだ。

だいたいにおいて、一つのキーワードが噴出するときはまさにそれに関する注目事件が中核にあることが多い。流れている記事をとにかく大量に読み込むことで、だいたいなにがきっかけなのかはわかってくる。

だが、昨年末にばらばらっと流れた「中産階級」話題はどれを読んでも、共通の話題や記事がきっかけになったわけではなさそうだった。強いて言えば、12月26日にネットポータル大手「新浪網 Sina.com」と経済学者の呉暁波氏がインタビューでまとめた「2017年新中産白書」が発表されたことだが、わたしの目に最初にとまった記事はそれより前に発表されていたし、同白書もそれほど目新しい話題もなかったようで、その後話題には上がってきていない(加えて呉暁波氏の日ごろのイメージが、学者というよりも商魂たくましい経済商人という点も同氏が販売している白書への評価に関係しているようだ)。

つまり、中産階級バナシは特に何か刺激されるようなきっかけがあったわけではなく、どちらかというとこれまでずっと水底に溜まっていたものがじわじわと「水面」に現れてきたという感じだった。

●「中産」と「中流」

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