「これは基本的人権なのよ」:台湾における同性婚合法化

アジアで初めてとなる、同性婚の合法化が立法過程に入った台湾で、このところ立法化に反対する人たちの抗議活動が行われているという。facebookにその最中に起こったらしい、反対派に対して支持派の女性がこんこんと、なぜこの法律が必要なのかと説明する素晴らしい動画がアップされている(2017/5/27注:FBのリンクが切れていたので直接YouTubeのビデオリンクつけました。YouTubeのページによると、この女性は台湾民進党の設立メンバー施明徳夫人の陳嘉君さんだそうです)。女性の主張はクリアで、具体的な例を上げつつ、「これは基本的人権なのだ」と繰り返す。

その見事な説明に、反対派の女性は途中から何をしゃべっていいのか大混乱。その間にも彼女は理を説き続ける。その内容をぜひもっと広く読んでいただきたく、一通り書き起こしてみた。

「わたしたちも普通の人と同じように基本的人権を求めているの。愛している人と自由に結婚し、家庭を作り、そして同じようにわたしたちの子供にも社会や国の法律が彼の権利をカバーする。わたしたちが求めているのはただそれだけ」

($*&#%* 台湾にどんな保障があるというの。「上には政策、下には対策」でしょ…)


「それは政治のお話でしょ」

(いいえ、この台湾でどれだけの離婚した女性が…)
「あのね、どんな弱者のグループもわたしたちは支持するわ。それが人権という課題に関わるものであれば、わたしたちは支持する。

台湾の離婚率がこれほど高くて、台湾の青少年の自殺率もこんなに高いのに、なぜ教育で変えていこうとしないの? 青少年たちは学校で教師たちに好き勝手に侮辱され、そして彼らはビルから飛び降りて自殺してるのよ? 誰も彼のことを気にかけようとしないじゃないの。わたしたちの国ではまだまだたくさんの課題を考えていかなければならないのよ。

でもそれは、こうやって出てきて他人の権利に反対することじゃないわ。そんなの最低よ。

わたしたちの国はものすごく多くの重要課題を克服していかなければならないのよ。経済成長、教育、文化、少数民族、そして…これらはどれもわたしたちの国が進歩するために解決していかなければいけない課題なの

(もし、台湾でこの法案が可決されたら、台湾はアジアで最初に同性婚を認める国になってしまうわ)
「素敵なことじゃないの。わたしたちの国にとってどれほど素晴らしいことか。とても偉大なことよ」

(なにが良いのよ? なんで良いことだけじゃなくて悪いことも一番を目指すのよ。いいえ、悪いとかじゃなくて…)
「悪いことじゃないでしょ、それでいいじゃないの!

あなた、分かってる? わたしたちの国はかつて華人圏で最初に民主自由を標榜する共和国だったのよ。これって素晴らしく偉大な歴史じゃないの。わたしたちは独裁政権を倒し、今さらに一歩先に向かって進もうとしているだけなの。この国はもうすぐ、華人圏そしてアジアで最初に、同性婚を認めるのよ。同性愛者の基本的人権を尊重することになるのよ」

(いやよ、ダメよ)
「それがどうやったらわたしたちの国を傷つけるというの? そんなのありえない。実際に基本的人権が前進しない国が他国の(尊敬を受けるわけがないでしょ)…」

(わたしが読んだ報道によると…以前のソ連ではそんな法案が運用されていたけれど、最後の20年間の混乱で結局一夫一妻に立ち戻ったって書いてあったわ)
「それは間違いよ、誤報だわ。ソ連ではこれまで一度も同性婚に関する法案が可決されたことなんてないわ。一度もない、それは絶対よ」

(でも、そう書いてあった)
「それは誤報よ、あなた、きちんと調べてから言いましょうよ。

この同性婚というのは人類史上、何千年も話題になってきた。同性愛者への差別は歴史を紐解いても古代エジプトから始まってるの。今日始まったことじゃないのよ、お嬢さん。今日のことじゃないの」

(そんなこと、知ってるわ)
「そう、だから、世界で初めて同性婚についての法案を可決したのは、絶対にソ連じゃないのよ。これは間違いないことよ。

それに(同性婚が話題になり始めたのは)それほど昔じゃないの、つい最近のことよ。これはね、まだ新しい世界的な趨勢なの。今になってやっと、わたしたちの世界はこの少数者たちのことに関心を払おうとしているだけなのよ。やっと彼らの置かれた状況を理解したの。そして彼らに平等で、自由な基本的人権を与えようとしているのよ。これはとても大事な世界的趨勢なの」

(この法律が本当に彼らを保障できると思ってるの?)
「法律が彼らを保障するかどうかてことじゃないの。彼らにとって、彼ら自身が声を上げる権利を持てるかどうかってことなのよ。

もし、あなたが同性愛者じゃなければ、この法律はあなたにはなんの関係もないの。なのになんでわざわざ他人に干渉するの?」

(一夫一妻の、わたしたちだって…結婚生活がうまく行かなければ、わたしたちだって離婚するわ。でも、養育費をもらえないのよ。同じ道理じゃないの。わたしが言いたいのは、われわれ一夫一妻の人間だって養育費はもらえないんだから)
「でも、それは彼に選択させればいいでしょ。彼が同性愛者で、彼が結婚するかどうかは彼自身が自分で選択権を持つべきよ。

あなたが異性愛者で、国が保障する一夫一妻制度の婚姻制度に従いたい、結婚がつまらないから離婚したい、というのなら、それら(の権利)は国が保障してくれてるわ。あなたが離婚した後に養育費をもらえるかどうかは、あなたが結婚した相手がお金持ちかどうかによる。それは国が彼に必ずあなたに養育費を払えと規定するものじゃないでしょ

(知ってるわ、そんなこと。でも、法律は法律、わたしたちは「上には政策、下には対策」…)
「わたしたちは自分の運命に責任を持ちたいと思ってる。誰を愛するかはわたしたち個人の自由で、愛した相手に捨てられるのもわたしたちの運命でしょ。それは国が干渉したり、国がどちらかを追いやったりするようなことじゃないわ。

国がやるべきなのは、法律において一人ひとりが平等であることという保障よ。一人ひとりの、それが同性愛者であってもこの国の一分子であれば、彼の基本的人権は国が絶対に守らなければならないのよ

(でも、この法案は本当に、ものすごく少数派の人のために作られるのよ)
「あなた…その言葉には、わたしきちんと真剣にお答えしておくけど、国の公権力って少数の人を守って、少数の人を尊重するべきものなのよ。でなければ、この国はみんなが闘いあって強い者が勝者になってしまうわ。

国の法治というのは秩序を守ること。どうやって? 法律によってよ! そうすることで多数者が少数者をイジメたり、強者が弱者をイジメたりすることがなくなるのよ。国の法律というのはね…わたしたちの国はまだ進歩の途中なのよ」

(あなたがどんな人であっても、時にはね、あなたがどんな人でも、わたしたち台湾人はどんな人にもとても友好的なのよ)
「そうよ、わたしたちはそれを誇りにしていいわ」

(だからわたしたちは誰も差別しないわ)
「でも、わたしたちの法律は同性愛者を差別している、これは間違いないわ。だって、彼らの結婚を許していないんだもの。彼らが普通の人と同じように、継承権や医療権を持つことを認めていないのよ。法律が認めるべきすべての権利を彼らから奪っているのよ、お嬢さん。

今現在はそういうことなの。だからわたしたちは彼らの支援しているのよ。彼らがわたしたちと同じように基本的人権を持てるようにね」

(それはすごいことよ。もしあなたが、あなたが5000年の歴史がずっと愛情を高尚なものとして歌ってきていることを知ってて、あの蘭陵王も愛情を崇高視していて、昔々の北斎も愛情を謳っていて、誰もが愛を求めている。愛がいらないという人は手を上げてみて。ほら、愛がいらないなんて言う人はいないし、わたしだって愛はほしい。だれでも愛情を求めている)
「でも、わたしたちが求めているのは法律上の自由なのよ」

(もし、本当に、本当に愛し合っているなら、わたしたちはこんなもの求める必要なんてないわ)
「それは間違いよ」
「(群衆)だったらあなたは結婚しなけりゃいいじゃん。あなたは異性愛者に結婚するなって言える?」

(もし、本当に愛し合っているなら、本当に…)
「あなたのその言葉、半分は正しいけど半分は間違っているわ。もし愛しているなら、両親が反対してもあなたは駆け落ちすることができるのよ。でも、彼らが言わんとしているのは、彼らが愛し合っていて彼らの両親もそれを受け入れてくれていても、国が彼らに結婚の権利を与えないっていうことなのよ。そこをはっきりと理解すべきよ」
「(群衆)いまの異性愛者は、2人が愛し合っていれば結婚するかしないかを選択できる。でも、ぼくたちにはその選択の権利すらないんだよ」
「そうよ、彼らが選択するための権利が剥奪されているの。彼らもわたしたちと同じよ、同じように愛を求めているのよ。

あなたは彼らに選択権を与えた上で、彼らに向かって気軽に結婚しちゃダメよて言うべきなのよ。もしかしたらトラックが…不愉快なことが起こるかもしれないし。でも、あなたはそんな選択権を彼らから奪うことはできないのよ。わたしだって母親として、自分の子供にははっきりと結婚を決める前によく考えろって言うもの」

(ニューヨークはどうだか知らないけど…)
「ニューヨークはもう合法化されたわ。パリでもね」

(あの「セックス・アンド・ザ・シティ」を観ていたら…)
「ニューヨークが合法化されたのは最近よ、2、3年前のことね」

(ニューヨークは大きな都市で、人も多いし…私たちはこんなに小さいのに…)
土地の大きさとか人の多さとか関係ないわ! 中国は土地も人も大きいけど、いまだに独裁国じゃないの! ここは人口も少ないけど、わたしたちには立派な民主と自由があるのよ! 

土地が大きいとか人が多いとか何の関係もないこと。その土地の人が、不義な政権、不義なことに立ち向かうガッツがあるかどうかの話よ! そして今これは不義なことで、彼らが勝手に他人の人権を蹴散らすようなままにしておけないの。独裁者が『独裁を事実化して、革命を義務化する』なんてことを許しちゃダメなの。

彼らがこんな宗教による独裁を事実だと言うのなら、彼らに立ち向かわなくちゃ。そして彼らに『あなたたちの教義で他人の基本的人権を踏みにじってはならない』って教えてやるわ。

ここで彼らに彼ら自身の宗教上の権利を発揮する自由はあるけど、彼らがやっていることは間違っていると誰かが教えてやる必要があるの。誰かが絶対に教えてやらなくちゃ…そうすれば、夜になってじっくり考えてみて、彼らだって自分たちが他人の基本的人権を踏みにじっているとわかるでしょう。

ここで、わたしたちは少数派が彼らのような多数派に抗うのはなんのためだと思う? それはね、これほど多くの人が他人の基本的人権を踏みにじっているときに、台湾にはそれでもまだしっかりと落ち着いて考えることができる人間がいるってことを教えてあげてるのよ。わたしたちはここでこの国にもまだ希望はあるわと教えてあげてるの」

(わたしたち…わたしたちの教会は絶対に他人を踏みにじるようなことは教えてないわ)
「違うわ、あなたたちは奪ってる…あなたたちは国が他人に有利な法案を定めようとしていることに反対している、つまるところ他人の基本的人権を踏みにじってるのよ。

税法なら誰が少なく税金を納めるか、誰が多く税金を納めるかって話になる。だけど、これはそういう法案じゃない。同性愛者に、性別を超えて、その他のさまざまな考え方を持つ人にさまざまな結婚のチャンスを与えようという法案なのよ。そしてそれは基本的人権なの。それはね、利益が利益を生むとか、福が福を足すとか、額外の補填をとか、額外の福利を出せとかいうものじゃないの。それは福利ではなくて、基本的人権なの。それを福利だと呼ぶのはまったく別のロジックよ。

今ここで語っているのは基本的人権なの。彼らは他の人たちと同じように結婚する権利を求めているだけなのよ。それは誰かが給料上げてくれとかいうのとは違うものなの」

(じゃあ、聞くけど、もし、もし立法されなければ結婚しないの?)
「そうじゃないわ。彼らは法的に…例を上げましょうか。わたしの女友だちはレズビアンだったけど、彼女がある日突然死した。彼女には20年間一緒に暮らしているレズビアンのパートナーがいたんだけど、彼女が亡くなった後、パートナーは(一緒に住んでいた)家にも入れなくなったのよ。なぜだと思う? 

パートナーは彼女の遺体を受け取ることもできなかった。彼女たちの共同財産を手に入れる事もできず、一緒に暮らしてきた家を手に入れることもできず、それらはすべて亡くなった女性の家族に行ってしまったのよ。さらに彼女の家族はパートナーの存在について全然知らなかった。そのパートナーの気持があなたにわかる? あなた、彼らが一緒に暮らした日々のことが理解できる?

彼女たちが奪われているのは、結婚式という儀式のことだけじゃないの。全人生において味わうことができるはずの保障なのよ。財産権が保証されて、初めて彼女は遺産を継承することができるのよ。そうすることで初めて相手が病気の時に、パートナーがお見舞いに行けるのよ。

あなた知ってる? わたしたちの国の病院、台湾大学病院は同性愛者の患者がいても、そのパートナーがそばについていてあげることができないのよ。というのも病院が尋ねるの、あなたは誰ですか、家族ですかって。緊急手術なんですがサインできますか? サインできないのよ!

そんなひどいことある? 彼らが何を奪われているか、あなた分からない? もし、彼が入院してそのまま亡くなってしまったら、彼の財産を彼のパートナーは引き継ぐことができないのよ。さらには、お葬式についても口を出すことができないのよ。

これって非人間的よ。あなたたちは自分が他人の基本的人権を奪っていないとか、それってただの恋愛でしょなんて思ってるとしたら、まったくの見当違いよ! それはね、毎日の生活の寝起きから、日常の飲食までのすべての権利に関わることなの。

さらには税金。夫婦はどんなふうに税務申請する? 彼らは同居していても家族とは見なされないのよ。それでどうやって税金申請するの? 彼らはどうやって自分たちの財産をマネージして、どうやったらしっかりした家庭を築けるというの?」

(聞いてるけど、だいたいわかったわ。結局、あなたたちも家庭がいるってことね。)
「『結局』じゃないわよ。わたしたちは国に結婚の権利を与えろっていってるの」
「(群衆)ぼくたちは家庭をもつチャンスがほしいんだ」

(家庭は大事よね)
「(群衆)つまりね、異性愛者の一部は家庭に入らない権利を持っているけれど、異性愛者には家庭を作るチャンスもあるでしょ。家庭というものを、好きな人も嫌いな人もいる。でも、それは国が我われに与える基本的権利なんだよ」

(あなたが言っているのは、衣食住、そして出かけたり、育てたり、楽しんだりっていう…)
「家庭よ。それは結婚権から延長して法律で国が保障しているすべてのことなのよ。彼らが求めているのはそれ、そしてそれは基本的人権って呼ばれるのよ」

(わかったわ。戻って伝えるわ)
「教会の人たちに伝えてちょうだい。よろしくね」

(わたしは、少なくともあなたたちの言い分が聞けたわ)
「そうよ、ありがとう。わたしたちがここにいるのも、彼らが他人の声に耳を傾ける能力を持ってることを期待してのことなの」

(神もわたしたちに学ぶように言ってるわ)
「そうよ、他人の言葉に耳を傾けるの。もし、わたしたちがここに立っていなければ、あなたたちもわたしたちが何を考えているか、わからなかったでしょ」

(あなたたちアーティストはすごいわね。あなたたちの芸術能力は素晴らしいわ。台湾は本当に芸術人材が不足しているから、あなた方がアートの世界でたくさん素晴らしいことをしてくれるように願っているわ)
「そうよ、同性愛者も異性愛者も一人ひとりが、台湾のために心から力を尽くしたいと思っているのよ。だからこそ、この国の人権価値はみなが一緒になって守らなくちゃ

(Thank you!)
「ありがとう〜!」
「(群衆)ありがとう!」

#私的NC

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