【ぶんぶくちゃいな】「スラムダンク」も巻き込まれた、中国映画業界の興行マジック

5月3日、中国では日本よりひと足早く、4月29日から始まったメーデー5連休が終了し、4日から多くの人たちが職場に復帰した。

同時にこの5連休の消費統計が発表され、政府系メディアは派手に「メーデー休暇の成果は中国経済の底力を示すものだ」と騒ぎ立て、景気回復ムードをイメージ付けようとしている(https://bit.ly/3B2YHbv )。

連休ごとにその消費の「成果」を政府系メディアが喧伝するのはもう恒例の行事だ。ただ、今年は特にポストコロナで行動規制のない状況下における初のゴールデンウィーク(「黄金週」)だったため、これを機に過去3年来の重苦しいムード、そして中国経済の将来を覆う不安、さらにはこの3年間追い詰められた諸外国の包囲網を打ち破ろうと、当局はことさらに声高に「中国の実力だ」と強調しているフシがある。

党機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙「環球時報」は、道路の混雑ぶりのみならず、甘粛省の砂漠で観光客を乗せたラクダが「渋滞」したり、内蒙古のフフホトを漢代の衣装に身を包んだ人たちが徒党を組んで練り歩く写真を、コロナの「発祥地」武漢の鉄道駅を埋め尽くす乗客たちの写真と並べ、その「回復ぶり」と「辺境地区の隅々まで埋め尽くす」人々の消費意欲を持ち上げた。その他、中国の観光地の賑わいや混乱ぶりはすでに日本のワイドショーが面白おかしく取り上げて紹介していたので、ここで繰り返す必要はないだろう。

だが、「ぶんぶくニュースクリップ」でも触れたが政府文化旅游部が公開した統計数字はあくまでも「国内旅行」のみであり、海外旅行については一切触れていない。これは奇妙だった。

一方で、旅行予約サイトの「携程 Ctrip」(以下、Ctrip)が発表したレポートによると、現時点で国際航空便がコロナ前の2019年に比べてまだ4割ほどしか回復しておらず、今回の連休ではマカオ、アラブ首長国連邦、モルディブへの観光客数が2019年同期のそれぞれの数を上回ったとしているが、やはりその具体的な人数については触れていなかった。

つまり、これらの公式統計数字から「中国の経済力の実力」に結びつけて論じるためには、海外を含めてしまうと「不都合な現実」があるということだろう。

そんな「不都合な現実」は、中国お得意の「まるっと統計」だけではよくわからないが、それぞれの業界に注目してみると浮かび上がってくるのだ。

たとえば、今回の連休では、ここ数年の利用者増大を受けて大型連休直後に増え続けてきたEV車両の「エンコ」話がほとんど話題に上がっていなかった。一部国産自動車メーカーはガソリン車の給油よりもかかる充電時間や充電地点の少なさに対応すべく、カセット式電池駆動モデルの発売を始めたものの、さすがにわずか半年で全国津々浦々の充電事情が一挙に向上したとは思えない。なによりもその充実ぶりを示す報道も上がってこないからだ。

これは今後の経済回復のために政府がEV車の国内製造、販売に力を入れていることと無関係ではないだろう。

そして同じように「不都合な現実」は、「チケット売上15億元!」となった映画業界にもチラチラと見え隠れする。

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