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【読んでみました中国本】塙昭彦「中国人のやる気はこうして引き出せ」(ダイヤモンド社)

最近、中国で実際にビジネスを展開している人たちから、既存メディアが流す中国情報に対して「何か違う」という声をよく聞くようになった。実際に現場関係者からのメディア設立を持ちかけられたことすらある。「偏った情報が堂々と流れているのを見るのは我慢できない。日本にいる家族ですら誤解している」というのだ。

それは単純に一般にいわれる「メディア不信」とも違う。現地で暮らしたり働いたり、あるいは現地との間を行き来したりしながら、日本のメディアの中国報道を読んでいても、「ツボを抑えた記事がない」という思いのようだ。

一方、マスメディア中国報道に関わっている人たちの多くは、生粋の「中国屋」が多い。わたしも何度も指摘してきたが、彼らは「中国事情」を「中国という国の動き」あるいは「与党独裁である中国共産党の意向」と捉えているから、まず中央政権の動きで判断を下すタイプの記事になる。

だが、「中国という国はそれだけではない」という点をマスメディアの報道はほとんど拾えていない、とビジネス関係者の多くが言う。

これはわたしも反省するところでもある。21世紀に入ってからの中国はもう政治だけを語っていればよい相手ではなく、大事なビジネスパートナーとなった。そして実際にビジネスや市場の現場に乗り込んでいった人たちはそこでまさに展開する「生身の中国」と裸で付き合う必要があり、そのための情報を求めている。だが、悲しいかな、マスメディアの記者は日経ですらそこまで踏み込めていない、とビジネスマンたちは言う。

実際、わたしもビジネスマンたちの体験や分析を聞いて、初めて知る「現実」がたくさんある。現地で悪戦苦闘してきたビジネスマンの「中国体験」はマスメディア記者の知見を大きく上回っている。特に消費者が中国の顔になりつつある今、マスメディアの型にはまった中国報道だけを読んでいては、本当の中国の姿や事情はわからない(だが、伝統メディアはまだその事実にあまり気づいていないように見受けられる)。

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