【ぶんぶくちゃいな】ofoの冬

シェアサイクル「ofo」を巡る話題がこのところ、どっと流れてきている。

先月末には、創業者の一人でCEO(最高経営責任者)を務める戴威氏が社内に向けて機構改革を伝えるメールで、「最も苦しいときに信念を守り、這いつくばってでも生き延びなければ。生き続けることで希望が生まれるのだ」と述べたことが大きく報道された。「這いつくばって」の原文は実際には「跪いても」という意味だが、跪くというのは中国人にとって相手に頭を垂れる、自分が下位にあることを公然と示す姿勢である。

金銭的に、また政治的にも余裕のある家に生まれ、トントン拍子で北京大学の学生会長まで務め、学生時代に「ofo」を起業してスタートアップ業界の「寵児」となった戴威氏が、ここまで自分がいま置かれた最悪の状況を素直に認めたということが話題になった。

2014年にまず、広大な大学の敷地内を移動する学生向けに、スマホアプリを使って利用できるシェアサイクルという形で起業。戴威氏ら創業者自身が学生だったこともあり、しばらくは学生相手の乗り捨て自由なサービスを展開していたが、2016年に上海で「摩拝 Mobike」(以下、モバイク)が出現し、街中でのシェアバイクサービスを始めたのをきっかけにofoも街中に繰り出した。

そこからシェアサイクルブームが出現。黄色い車体から「小黄車」と呼ばれるようになったofoやモバイク(オレンジ色)以外にも次々と赤やピンク、緑、水色…と彼らに追随するように色分けしたシェアサイクルサービスが始まる。街中を走り回るシェアサイクルを資本が追いかけ始めた。

その成長は同時に「シェアサイクル投資ブーム」を引き起こした。ofoは2014年末にまず150万元(約2400万円)のエンジェル投資を受け、翌年10月にプレA融資900万円(約1億4500万円)を北京大学の先輩が運営するファンドから受けた。だが、2016年2月に1500万元(約2億5000万円、Aラウンド融資、以下同)、4月に1000万円(約1億6000万円、A+)、9月には1000万米ドル(約11億円、B)、10月には1.3億米ドル(約144億円、C)、さらには2017年3月に4.5億米ドル(約500億円、D)、7月に7億米ドル超(約778億円、E)…と、融資額がトントン拍子で大きく変化していった。この間、2017年4月にはアリババ傘下の金融会社「螞蟻金融服務 Ant Financial」(以下、アント・ファイナンシャル)からもその額は明らかにされていないが、戦略的融資を受けている。

このわずか1年半ほどの間に続いた怒涛のようなお金の流れ込み方を見ても、どれほどofoが注目を浴びていたのかがよく分かる。戴威CEOは若き経営者(91年生まれだから、まだ20代)として大きく取り上げられ、注目が集まった。そして、ofoとモバイクは、2014年に花開いた配車予約サービス「滴滴的士」に続く、中国スタートアップの星だとみなされた。

滴滴的士もまた設立当初、ライバルの「快的打車」と市場競争の激しいデッドヒートを演じ、一時はそれぞれに投資するテンセントとアリババが止めどもなく資金を降り注ぎ、お金をバラまいたため、二大巨頭の代理戦争とも言われた。だが、ユーザーが乗れば乗るほどお金がもらえるというキャンペーンは続かないと言われ始めたその矢先、滴滴的士と快的打車が突然合併合意を宣言。なんとテンセントとアリババを差し置く形で、今に続く「滴滴出行 DiDi」(以下、滴滴出行)が誕生し、今では米Uberの中国運営権も手に入れ、配車予約業界でほぼ市場を独占している。

2017年初めになっても社会は「シェアサイクルの時代」に興奮していた。しかし、投資関係者の間からはあまりの急成長に「さすがに続かないだろう」という声もあった。そんな中、ofoは滴滴出行との関係に足を取られ、坂道を転がり落ちて行く。

●湯水のように流れ込んだ資金、そして…

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