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210126【特別無料公開・香港15days】隔離後1日目の感想は…「靴履いて歩くと疲れる」(笑)

** 「2021 香港Days」初回の本稿は全文無料でご覧いただけます。 **

1月26日午前0時隔離終了。

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香港では隔離を「検疫」と呼びます。「隔離」することが目的ではなく、「検疫のためだから」という感じでしょうか。でも、「検疫のために隔離措置を採った」みたいな言い方は普通にするんですけど。

わたしは1月5日に香港入りしたので21日間の隔離は25日いっぱいで終了。でも正式には1月5日の夜10時30分に到着し、あれこれと登録させられ、資料をもらい、腕輪をつけられて、PCR検査して、その陰性結果が出るのを待ってから入境手続きしたので、香港入りしたのは1月6日の午前3時半くらい。つまり、着いた時間帯から言っても、正式に香港入りした時間帯から言っても、24時間×21日ではないんですよね。ほぼまるまる1日分「得した」状態です。とはいえ、ホテルは入境するその日から予約していないと、飛行機にも乗れないので1月5日から予約済み、そして実際にチェックインしたのは1月6日午前6時でした。

香港では2月いっぱいまで、政府が指定する隔離専用ホテルで21日隔離を義務付けており、事前にリスト(PDF:https://bit.ly/3bebwEg )上からどこかのホテルの予約を取って「予約確認書」を提示しなければいけません。もともと現在は一般ビザによる入境をすべてストップしているので、たとえビザ滞在でも香港身分証を持っている人(つまり、長期居住者であること)しか入れてくれません。

この身分証所持者はもう20年も前から自動化ゲートができていて、たとえ並んでもだいたい5分もかからずに入境審査を抜けられるのですが、いつも一般ビザによる入境審査は窓口が身分証ゲートの倍あるにも関わらず、いつも長蛇の列。ピーク時には1時間位かかるときも。日本から遊びに来た友人と一緒に香港入りすると、だいたいここで待ちます。とはいえ、荷物が出てくるのにちょっと時間がかかるので、荷物待ちしてたら辻褄が合う、みたいな(笑)

ところで、わたしは事前に先に香港に戻った友だちからアドバイスを受けて日本から隔離用にあれこれ物品を持ち込んだので、来るときの荷物が重かったのは分かるんですが、外出もしていないのになぜかこの21日の間に荷物が増えている。超意味不明。もちろん、ホテルの備品は盗んでないよー。

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ホテルからは前日に電話があって、「さあ、あなたは明日出立できます。何時に出ていきますか?」と大変ビジネスライクなご連絡が来ました。なんか、事後の掃除の手配をするのよワタシ!みたいにいきり立つ感じで大変香港チックです。出立の準備ができたらフロントに連絡して迎えの職員の到来を部屋で待つ。新しい“入所”者や食事を運ぶ人たちと別のルートで移動するように手配しているようで、わたしが案内されたのは物品輸送用のエレベーター。そこを下りたら職員出入り口で(笑)、その入口にお姉さんが座っていて部屋番号を確認し、「これで終わり。このまま出口を出て左、左に曲がると、表通りですよ!」と送り出してくれましたが、その先は半地下駐車場で、これまで冗談半分に使ってきた「出所」という言葉がひしひしと身に迫ってきました。びっくりしすぎて、ビデオも写真も撮ってない。だめね、あたしー。

友人が移動のお手伝いに来てくれていたので重いスーツケースを引きずって、次の15日間を過ごすホテルへ。新しいホテルは市内最大の公園であるビクトリアパークど真ん前なので、隔離中に食っちゃ寝てで増えまくった体重を減らすためにランニングができます。シューズがないので…というと、友人が「地下鉄の杏花村駅すぐ真横にスポーツブランドのアウトレットショップがあるから見に行けば? 俺はだいたいいつもそこでシューズは買う」と教えてくれました。感謝。

友人と別れてからは予定がなかったので、とにかく必需品を買い求めつつ街歩き。

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うおー、街だ。

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この強烈な色と漢字、フォントの迫り具合がなんともいえません。

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香港最大の公共図書館である中央図書館。昨年、「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)の施行とともに、民主派関係者の著作を閲覧、貸し出しできない書庫に入れちゃったことで注目されました。

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びっくりしたのはこれ。バス停留所にあった保険会社の広告なんですが、この黒いタキシード姿の人は香港政府の財政長官を務め、2017年の行政長官選挙でいまの林鄭月娥・行政長官の対立候補だった曾俊華氏。林鄭氏とは香港政府の高級公務員としてもライバルだったと言われているのですが、中国政府が両手を挙げて推薦した林鄭氏の対抗馬として立候補したことで、市民の間では大人気に。ポテトチップ「スプリングル」のイメージキャラクター「ヒゲおじさん」にそっくりなので香港では「ポテチおじさん」という愛称で呼ばれていました。

ただ、一般市民はまだ行政長官選挙に投票できないので、中国政府が委任した人たちがほとんどを占める選挙委員会(1200人)での投票結果、777票を獲得して林鄭氏が当選。「7」という数字は日本では「ラッキーセブン」とか言われますけど、広東語の世界ではその発音「chat(チャッ)」から「つまんねぇ、くだらなぇ」みたいな意味になります。なのでいまでも林鄭氏をなじる人は直接その名前を呼ばずによく「777」(チャッチャッチャッ)と呼んでますね。

曾氏は子どもの頃に米国に移民して米国籍を取っており、それを捨てて香港(中国)籍に戻して参選だったのですが、結局中国的には①我われが立てた林鄭氏に歯向かうとは、②一旦外国籍を取ったやつなど信用できない――というのが根本にあったんだと思います。ただ、曾氏の妻子は米国籍のまま、そして林鄭氏の夫も香港からの移民で英国籍者、2人も息子もそのまんま英国籍なんですよね。こんな2人が香港政府の高官だったり、行政長官選挙に打って出た、というのが本当に香港ぽいとおもいます。

その曾氏はその後政治活動にもちょっと首を突っ込んだようですが、それほど政治的な発言はほとんどしておらず、なにをしているんだろう?と思って調べてみたら、この広告主である保険会社の顧問に就任して、香港の医療制度についても発言しているようです。米国には帰れない、ということではないのでしょうが、それにしても博打を打つかのごとく香港のために身を捧げる/捧げてきた人は多いんですよね…

最後に香港に来たのは1年前なので、デモ後のことは一応目にしてきましたが、それにコロナによる経済不振も伴って、街の変化は大きいよう。この日一番びっくりしたのが、米カジュアルブランド「GAP」が旗艦店だったコーズウェイベイ(銅鑼湾)と、買い物客でにぎわうチムサーチョイ(尖沙咀)店を昨年9月に閉店。ビジネスショッピング街のセントラル(中環)店は昨年12月末の店舗契約終了でそのまま撤退していたことでした。

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分かります? あの真ん中にGAPのロゴがあったんですよ、以前は。いまは郊外の住宅地2地区に店舗を残すだけとなっているようで、オンラインサイトでの販売は継続していくようです。香港では80年代から90年代にかけて大人気だった「Esprit」もなくなってしまい、友人によると「ユニクロもなんか質が悪くなってる…」ということで、カジュアルウェア大好きの香港人にとっても、寂しい状況になっているような気がします。だからといって、志向が高級に向かっているわけでもない。

とにかく街の活気(物欲)がすごく減退しているのが分かります。

また、新型コロナの第四波で街のレストランでは午後6時で食事は終了。後は店の営業時間いっぱいお持ち帰りのみ。これはカフェやバーも同じで、帰りに明日からのコーヒー豆を買おうと立ち寄ったあるカフェはがらーん状態。「誰も来ないよ。お持ち帰りタイムになってからあなたが最初のお客」とお兄さんが言ってました。暇すぎて、そのお店のアプリをわたしの携帯に入れてくれてセッティングまでしてくれた(笑)。

「日本語ちょっとできるよ」というお兄さん、以前は一蘭で働いていて、去年の1月に大阪周辺を旅行して帰ってきた翌日にコロナの緊急事態に突入したんだそうです。「本当は年内に福岡とか九州に行く予定だったんだけど…今年の年末までに行けるといいな」と言ってました。

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ホテルそばの歩道橋で見た落書き。元の書き込みは「光復香港 時代革命」だったのが、「中国 香港」に書き直されている。この8文字は国家安全法の施行後政府が「政府転覆のスローガン」に指定しています。

最初の1日はあちこち出かけたせいもあるのですが、疲れました。スリッパだけで室内で過ごしていた隔離21日後のせいでもあるでしょう、とにかく「靴がこんなに重いとは今まで思ったことがなかった」というのが感想です(笑)。

…明日に続く…

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