【ぶんぶくちゃいな】著名元記者が語る「中国の言論の自由、ネット、そしてプロパガンダ」(前篇)

今回、次回の2回に分けて、昨年11月に香港バプティスト大学ジャーナリズム学院の閭丘露薇(ローズ・ルーチウ)さんを迎えて行われた、中国のプロパガンダと言論統制についてのzoom講座の内容を翻訳してご紹介します。

ローズさんは1969年中国上海生まれ。上海の名門校である復旦大学を卒業後、深センで働き、1995年に香港に移住しました。その後、香港のテレビ局を経て、設立されたばかりの香港フェニックステレビに転職。2003年に起きたイラク戦争で、バクダッドに乗り込んだ唯一の華人女性記者となりました。その時につけられたあだ名が「戦場のローズ」です。

香港に拠点を持ち、主に中国の視聴者向けに放送をしていたフェニックステレビで、彼女はその後国家指導者の海外遠征にはなくてはならない随行記者の1人となり、また同テレビ局では取材部門のトップ責任者に上り詰めますが、2015年に突然離職。米国に留学してジャーナリズム専攻の博士号を取り、2018年に香港バプティスト大学ジャーナリスト学院の副教授に就任しました。

現在は中華圏のフェミニズムに関心を寄せる一方で、中国のプロパガンダと発言の自由について研究を行い、がんがん論文を発表しています。

ただ、そのアグレッシブさのおかげで言論統制を強める中国の「微博 Weibo」(以下、ウェイボ)上に持っていたアカウントは2019年に起きた香港デモにまつわる発言で「恒久書き込み禁止」処分をウケています。

今回の講座では、そんな彼女が見た中国の「プロパガンダ」の視点に立つ発言への締め付け、そしてメディア統制について語られています。講座は中国人の若者に向けた形になっていますが、我われ外国人が読んでみても中国という国のプロパガンダ、あるいはニセの情報に振り回されない方法を知る上で非常に参考になるはずです。

書き起こしの元は、北京語で行われた彼女の講義と質疑応答で3時間の長い講座ですが、彼女の講義だけを日本語訳にしました。それでも長いので2回にわけて配信します。講義の後の質疑応答もなかなか興味深いので、後編にオリジナルの講義YouTube映像のURLを付けておきますので中国語ができる方はぜひ御覧ください。

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閭丘露薇(Rose Luqiu):中国の報道の自由と権威国家のプロパガンダ(前編)

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