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【ぶんぶくちゃいな】「若者消費者をつかまえろ!」 中国伝統酒メーカーの大キャンペーン

9月4日朝、眠たい目をこすりながらベッドの中でいつものように中国のSNS「微信 WeChat」(以下、WeChat)を開いたところ、タイムラインにコーヒーを手にした写真がずらりと並んでいた。

いったいなにが起きているのか理解できずにただただタイムラインを繰っていたら、次第に頭が冴えてきてやっとのことでそれが、お持ち帰り専門のカフェ「瑞幸珈琲 luckin coffee」(以下、ラッキンコーヒー)がその日発売を始めた新商品キャンペーンに並んだ友人たちによる「成果報告」だと理解した。

彼らが嬉しげに撮って流していた写真の中には、コーヒーそのものだけではなく、真っ赤な地色の真ん中に斜めに走る白い帯の上に「醤香拿鉄」と大きく書き込まれた特製お持ち帰り用バッグもあった。お目当ての「醤香拿鉄」が入った、このことさら目を引く袋を手に職場に向かう人たちはどれほど得意な顔をしていたのだろう……久しぶりにタイムラインを埋めた写真の波にそんなことを考えて、思わず笑ってしまった。

商品名についた「拿鉄」(なーてぃえー)とは中国語で「ラテ」を意味する。そして「醤香」というのは、穀物を発酵させた中国酒独特の香りを指す。この「醤香拿鉄」は、ラッキンコーヒーと中国で「最も価値のあるブランド」に連続5年選ばれ続けている貴州茅台酒(以下、「茅台酒」)とのコラボ商品で、コーヒーの苦味と茅台酒の「醤香」を売りにする商品だった。

中国人の酒呑みに尋ねたところ、「醤香」というのは中国酒独特のもので、使用している材料の穀物によってそれぞれに「醤香」があるのだそう。ただ、お酒が飲めない筆者のような人間には、中国酒の香りはかなり鼻につくものが多く、時には明らかに「臭い」と感じるものすらあるが、好きな人にはそれぞれにたまらない香りなのだという。

ラッキンコーヒーとコラボした茅台酒とは、中国人民大会堂の宴会御用達白酒として知られている高級酒である。そのボトルはぽってりとした真っ白い陶器製で、その上に真っ赤っ赤の地色に斜めに白い帯、そしてその上に「貴州茅台酒」という文字が書かれたラベルが貼られている。つまり、「醤香拿鉄」のバッグは中国人にはおなじみのその茅台酒ラベルをそのままもじったもので、その独特の赤い色といい、それを持って歩けば周囲の人々の目を惹かないわけがない代物だった。

その結果、「醤香拿鉄」は発売当日だけで542万杯を売り上げ、その売上だけでなんと1億元(約20億円)を突破した。


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