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中国はレアアースでアメリカを威嚇

■中国の戦略兵器
 中国はレアアースの産出国。2010年には世界のレアアース産出の97%を支配。ハイテク機器には必ず使われるので、世界経済の根幹を独占していると言える。中国はこの事実を用いて米中貿易戦争に挑もうとしている。しかし何故中国がレアアース市場を独占したかを無視している。

中国、レアアース対米輸出規制「真剣に検討」=国営紙編集長
https://jp.reuters.com/article/china-usa-rareearth-idJPKCN1SY1WQ

■人権無視で市場独占
 レアアースは世界各地で手に入る。日本の温泉でも微量のレアアースが確認されているので、資源枯渇は問題視されていない。量から見ればレアアースは偏在する。中国は世界の埋蔵量30%を保有しているだけ。

 中国は世界の埋蔵量30%で市場の90%以上を獲得。これには理由が有る。簡単に言えば、中国は人権無視でコストを削減した。だから他国よりも安いレアアースを売れた。コスト勝負になれば他国は中国に勝てない。この理由から他国の鉱床は閉山しただけ。

 コストが高い理由は放射性物質トリウムが含まれていること。岩石を砕いてレアアースだけを取り出す。問題なのは放射性物質トリウム。レアアースとトリウムを分離する作業が必要なので、これに高額の機器が求められる。

トリウム
https://ja.wikipedia.org/wiki/トリウム

 さらに放射性物質トリウムを処理しなければならない。何故なら人体には、肺・腎臓・肝臓などの発ガン性の危険性が有る。各国は作業員の安全と後処理を優先したことでコストが高くなった。本来のレアアースは価格が高いはずだった。

 それを変えたのが中国。中国は人権無視でレアアースのコストを下げた。放射性物質の後処理など軽視するから安いレアアースを売れる。中国は人権と環境を犠牲にして繁栄。ライバル企業は価格競争で勝てないから世界各地の鉱床は閉山した。

■中国を警戒
中国は安い価格で市場獲得したが各国は独占を警戒する。きっかけになったのが2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件。これは中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で、中国は日本に対して事実上のレアアース禁輸措置で対抗した。

レアアースはハイテク機器に必要。だから戦略兵器として価値が有る。これは事実だが、中国は人権無視で安いレアアースを売ったことを忘れている。日本は別鉱床の確保・備蓄・リサイクル・レアアースを使わない素材開発などで対抗した。

これで中国依存度は低下。日本が先例となり脱中国依存の見本を世界に見せ付けた。同時に中国が外交で使うことを確認し、各国は中国を警戒するようになる。長期的に見れば、中国は世界を警戒させるだけだった。

■日本を手本とする
 米中貿易戦争が激化すると中国はレアアースでアメリカを威嚇。日本に対して実行した禁輸措置をアメリカにも適用すると示唆。これだけで威嚇になる。だがアメリカは中国の威嚇に動じない。

 何故なら日本が、別鉱床の確保・備蓄・リサイクル・レアアースを使わない素材開発の先例を残している。さらにリサイクル・レアアースを使わない素材開発が進めば、レアアースの必要性が低下する。

 中国がアメリカ向けに禁輸措置を実行しても、日本がアメリカにレアアースを供給することが可能。中国は日本に対して禁輸措置を実行しても日本は鉱床を確保している。日本は過去の経験から中国依存度を低下させたので、中国が日本に禁輸措置を実行しても困らない。

■間接的な戦争
 中国がアメリカにレアアースの禁輸措置を実行しても、日本がアメリカにレアアースを供給すれば良い。戦前のアメリカは日本と戦う蒋介石に物資供給した。これは間接的な戦争。日本がアメリカにレアアースを供給することは、中国との間接的な戦争になる。

「国家や政権に友人はいない。国家戦略における共通の利益があるだけだ」(西欧の諺)

 日本と中国は領有権で対立。そしてアメリカは日本と同じ海洋国家。日本とアメリカは国家戦略で共通の利益が有る。だから米中貿易戦争を利用し、アメリカを支援することで中国と間接的な戦争を行うことが可能。

 米中貿易戦争は世界を巻き込む経済戦争。同時に政治的に対立する国には旨味の有る世界。アメリカを支援することで間接的に中国と戦争可能。これは軍隊を用いない戦争で、中国経済から弱体化させる戦争。

 中国は人権無視で繁栄を手に入れた砂上の楼閣。世界が技術とブロック経済で対抗すれば、技術無き中国はブロック経済に対抗できない。間接的に第三次世界大戦が始まっているとすれば、これは前哨戦なのだ。

■食料で報復
 中国が戦略兵器であるレアアースでアメリカに挑むなら、アメリカは戦略兵器である食料で対応すると思われる。何故なら食料も戦略兵器。アメリカは食料を戦略兵器として使う国。今度は中国に牙を剥くことになるだろう。

 戦前の日本は農業を犠牲にした近代化を撰んだ。これで日本は世界恐慌(1929)から世界に先駆けて抜け出した。日本は工業を近代化して繁栄した。だが農業の機械化が遅れ食糧生産は停滞。

理由は生産者が工業に移動したことで農業生産に必要な人間がいない。人間の不足分を機械化で補う必要が有るが、当時の日本政府は農業の機械化を無視した。農業の機械化には金が必要。だから目先の欲を優先し工業だけを優先。

本来は政府レベルで農業の機械化を行うことを、農業生産者に責任を押し付けた。見た目の日本は繁栄したが、世界恐慌で各国はブロック経済を採用する。日本は各国のブロック経済から排除され、食糧を輸入に頼る日本は対抗できなかった。当時の日本政府は、移民と称した棄民政策で国民を追い出した悲しい現実が有る。

現代でも同じで、農業を犠牲にした近代化はブロック経済に対抗できない。中国も農業を犠牲にした近代化を撰んだので、農業の機械化が遅れており食料輸入が増加した。この理由から、アメリカが中国への食料輸出を禁止すると打撃になる。

アメリカは食料を自国で賄うことが可能。中国へ輸出する生産者は打撃を受けるが救済可能。だが中国は違う。中国は食料を輸入に依存。国際生産では不足するから、アメリカが停止すれば食料価格は高騰する。

 中国の富裕層は食料を買えても貧困層は買えない。食料は有るが高くて貧困層は買えないことになる。隣接国が中国に食料を輸出しても、不足すれば食料価格は高騰する。さらに災害で食料生産が低下すれば、中国に輸出したくても出来ないことも有り得る。

■追い詰められる習近平主席
 習近平主席は戦略兵器でアメリカに挑んでいる。これで勝てると思っているのかは疑問。だが中国は農業の犠牲と人権無視で繁栄した国。中国が強みとする工業も、人権無視で繁栄した国。

 中国は人権無視で世界に挑んだが、各国がブロック経済を採用すると対抗できない国。トランプ大統領が中国の弱点を突けば、習近平主席は追い詰められる。実質的に中国には外交カードが無いのだ。

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