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米中貿易戦争の裏の顔

■米中貿易戦争で譲歩せず
 アメリカと中国は貿易戦争で対立している。お互いに譲歩することはせず、徹底抗戦で挑んでいる。アメリカと中国はお互いに関税を課した。これで世界経済は嫌でも米中貿易戦争に巻き込まれることになった。

 だが世界は米中貿易戦争に干渉しない。何故なら米中貿易戦争は表の顔で、裏の顔は米中の覇権が激突している。経済ではなく政治と軍事が原因の対立だから、世界は関わらないようにしている。これは今だけの話だが。

■経済圏と覇権
 経済圏は安定して継続的に使えることが条件。交通路がテロや紛争で遮断されたら物流は停止。一部の遮断は経済圏全体に影響する。だから迅速にテロ・紛争に対応する能力が求められる。

 これには軍隊投入が必要で、アメリカは第二次世界大戦後から世界各地に軍隊と基地を展開させた。アメリカは海上交通路を用いた経済圏を優先し、世界の警察として活動した。建前は世界の平和維持が目的だが、本音はアメリカの国益と覇権拡大。

国家戦略=外交×軍事

 覇権は軍事力を継続的に投入できる範囲に限定される。だからアメリカは30年以上の年月を費やして基地ネットワークを造成した。アメリカ軍は基地ネットワークを用い、海上交通路付近のテロや地域紛争に介入。

 アメリカは世界平和を大義名分に海上交通路を脅かす存在を排除してきた。これでアメリカの覇権は世界に及んでいる。覇権は言葉による指導力だが軍事力が無ければ効果は無い。これは電話で威嚇しても相手は怯まない。何故なら言葉で威嚇しても自分の所にいないからだ。

 だが相手を殴る実行力が有ると電話で威嚇すると効果が有る。アメリカは軍隊を投入するから、政治家の発言で外交ができる。これが覇権。

■国家戦略
 国家戦略としてマハン海軍戦略は概念として適用されている。実際にアメリカはマハン海軍戦略を用いている。これは平時から基地ネットワークを造成し、経済と軍事を適用する戦略だ。

マハン海軍戦略概要
1:有事・平時両用において行使する戦略であり「国益と不可分」。(外交の延長)
2:海軍の目的は海洋支配。作戦原則は目標を一つに絞り、全戦力を集中する。
3:海洋戦略の要素は、基地網+海洋戦力+海洋輸送力。(基地ネットワーク)

海洋国家=海洋支配力+輸出産業力+海運力

 アメリカは第二次世界大戦後から世界の警察として海上交通路を守った。これは海の経済圏であり、アメリカの覇権拡大と維持に使われた。だが中国が経済力を持ち始めるとアメリカの覇権に挑戦するようになった。中国も同じ様に海外に基地を求め、基地ネットワークを模索するようになる。

■一帯一路は平和の書き換え
 中国が一帯一路を国家戦略として発表すると、アメリカとの対立は先鋭化した。一帯一路は経済圏だが、同時に中国の覇権拡大が目的。一帯一路の維持には人民解放軍と基地ネットワークが必要になる。これはアメリカの覇権を否定する行為になる。

 フランス・イギリスも海外に基地を置き軍隊を派遣している。これはフランス・イギリスが覇権拡大を行っている証。だがアメリカはフランス・イギリスには反発しない。これには理由が有る。

 今の平和は強国に都合が良いルールだから、フランス・イギリスはアメリカの平和を認めている。だからアメリカはフランス・イギリスの覇権拡大を認めている。それに対して中国は今の平和を否定。これは中国による平和の書き換えだからアメリカは怒るのだ。

■アメリカの一帯一路潰し
 アメリカは中国の一帯一路潰しを開始。アメリカは中国がウイグル人を強制収容所に入れて働かせていることを批判。アメリカは中国にウイグルの人権問題で干渉した。だがチベット・国内のキリスト教徒・気功団体の法輪功への人権弾圧は扱わない。

 ウイグルが使われたのは、一帯一路の中国側の出入り口に位置することが理由。ウイグル人への人権弾圧を人権問題として扱えば、アメリカは正義を盾に中国を批判できる。これは世界を味方にできるから都合が良い。
 
 アメリカが真に人権問題で中国と対立するなら、チベット・国内のキリスト教徒・気功団体の法輪功への人権弾圧も問題視する。だが一帯一路潰しが目的ならウイグルだけを扱う。

 さらにアメリカはイランを危険視し、イラン付近に空母打撃群と爆撃機を派遣。さらに地対空ミサイルと揚陸艦を増派。これでアメリカによるイラン空爆は確実視される。アメリカがイランを空爆すれば中国の一帯一路を遮断可能。何故ならイランは一帯一路の中継地点に位置する。

 国際社会はテロ組織を攻撃する越境攻撃を黙認する。何故なら、テロ組織は国境を無視して移動する。だからテロ組織に合わせて作戦しなければ対テロ作戦は行えない。アメリカは既にイランの革命防衛隊をテロ組織に認定した。これは革命防衛隊を攻撃する下準備と言える。

 アメリカがイランを空爆すれば中国の一帯一路の価値は低下。容易に経済圏が遮断できるなら一帯一路の価値は無くなる。アメリカは、このことを宣伝するためにイランを攻撃するだろう。

■距離を置く世界
 世界はアメリカと中国の覇権争いから距離を置いている。フランスはイラン空爆に参加する可能性が高いが、他の国は干渉も関与も控えている。それがウイグル人への人権弾圧だとしても、今は巻き込まれることを嫌がっている。

 理由は覇権争いの未来が見えないのだ。表向きは米中貿易戦争だが中身は覇権争い。しかも平和の書き換えだから対立は過激になる。だから世界は米中から距離を置いている。その方が安全なのだ。

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