表現の不自由展その後

あいちトリエンナーレでの一連の騒動に際して、8月7日に緊急開催として、舞台芸術制作者オープンネットワーク「ON-PAM」さんの主催により、京都ロームシアターで開催され、オンラインで東京のパルクホールとも繋ぎ、総勢30名ほどの芸術関係者や、今回の問題に関心ある様々な人たちが集まって意見交換をした。

その場に参加して思ったのは、やはりというか当然なのだが、芸術の表現そのものを考えるという方が多かったように思った。それ自体は全く悪いことではないんだけど、この問題の本質についてあまり議論できなかった。

 つまりこの「少女像」の展示についての本質は、この一連の問題を批判している人たちの主張の「異様さ」だ。それはいわゆる「歴史修正主義者」と言われる人たちのことであるが、批判しているこの手の方達というのは、世間一般的に「右派」と呼ばれている人だけど、右派や右翼とは一線を画していて、そのほとんどの主張は、基本的人権の否定や戦前の大日本帝国の覇権主義を肯定し、天皇万世一系を崇拝している。そんなある種「異様な」人たちが、一連の騒動を批判しているのです。

 そして、その手の方達に拍車をかけているのは、その人たちの主張に無自覚に賛成している若い世代がいるということ。なぜ若い世代が賛成しているのか。おそらくそれは、昨今のメディア状況が大きく関わっているのではないかと推測している。 

 現政権に中立報道をしているといいながらも、忖度し、現政権の政策を歪曲してあたかも政策が正しいかのような報道をする。それがワイドショー、バラエティー番組というポップな番組の姿を借りて、「面白おかしく」報道している現状が、若い世代に無自覚に浸透しているからではないかと思っている。

 今回の問題で明らかになったのは、「歴史修正主義者」たちとそれに対抗する市民という構図だと思っている。つまり、現政権とその取り巻きたちをいかに打倒するのか、それにかかっていると思っている。

 少なくとも現政権のような思想の人たちを持ち上げている以上は、今回のような表現の自由をめぐる問題は、これをきっかけにどんどん増殖する一方だし、脅迫や実力行使されることを恐れて勝手に「自粛」していく傾向に向かっていくのではないかと危惧しているし(現に今のテレビメディアはそれが行われている)、それが実は、我々自身の首を締めていくことにもなるし、この問題を発端にして、歴史修正主義者達が増長し、より一層強固な団結をしていき、「全体主義」が加速していくと思う。

だからこそ、今回の問題はここで終わらせてはいけないし、粘りつよく戦っていくしかないと思っているし、今回、緊急開催をという展開だったけど、個人レベルでどんどんこういった場を作っていくことが大事になっていく。それは、全国の劇場や芸術ギャラリーなどを使ったり、各大学や市民会館、カフェ、様々な場所で「戦い」が行われていくことを願う。

これは表現の自由という内心の自由をめぐる「思想戦」なのだ。


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