見出し画像

稚拙すぎる大人たち

ーこのお話はフィクションですー

コロナも落ち着き、帰省客でごった返す列車内のやっととれた指定席で年内最後の資料をタブレット上で入力を始めた頃だった。

なにやら騒がしい声が聞こえる。おそらく帰省客と思われる家族の未就学児のようだ。大声をあげながら車内を走り回る。ケガをしていると思われる人にも容赦なくぶつかりそうな勢いで縦横無尽に走り回る小さいモンスターたち。

親は一体どうしているんだ?おそらく乗客の多くがそう思ったことだろう。上体を起こし、座席の合間から車両内を伺うと、母親と思われる女性二人が携帯モバイル機器に見入っている。ミニモンスターが一旦その二人の方に歩み寄るが、画面から目を離すこともない。ミニモンは女性のバッグからなにやら菓子のようなものをとりだすと、それを握り締めまた車両内に飛び出し突進を続ける。

業を煮やしたらしく勇気を出して注意してくれた人がいたようだが、謝罪どころか開き直って暴言を吐き、罵詈雑言をあびせ、容姿に関する揶揄までする非道っぷり。

その声が耳に入ってきた途端、僕の中の何かが動いた。

「はい、どうも!ゆーてぃーばーのKakkunです!今、移動中の列車内なんですが、かわいいモンスターちゃんたちが大暴れ中です。親モンスターはどうしているんでしょうか?・・・・なんと!絶賛モバイル中、子モンスターに目をくれる様子もありません。放置です。放置プレイ中!

あ、コメントありがとうございます。え?美人かって?そうですねー少なくとも性格は1mmも美しいとは思えないですね。え?旦那がかわいそう?いや、自分で選んだんだから愚かなだけやろ。いや、気づいて逃亡した可能性もある。事故にみせかけて顔映してって?」

すると、その声がきこえたのか親モンスター二頭がもぞもぞ動き出した。身を乗り出して、前列に座っている僕のタブレットを覗き込み、こう問いかけた。

「ね、リアル配信とかしてる?」(なんとも無礼な。やはりモラルレベルも知識レベルもゼロ以下やな。)

僕は親モンスターを無視し、おもむろに携帯の方をポケットからとりだし、「あ、はい、僕です。今、移動中なんですが、はい。年内中には送信できると思います。(どーちゃらこーちゃら)」

すると、リアル配信をしていたかと思われる男の声と、電話をしている男の声が同じだろうとほぼ確信したエンプティブレイン♀モンスターずは、

「ねえ、今、配信してた人だよね?リアルで勝手に配信とかありえないんだけど?」

棚上げ職人は世の中に少なくないが、常識があるようにみせかけて、仕事で人のせいにしたり、責任転嫁するちょっと智恵はあるが、人でなし半人間モンスターもいる。が、しかし。今目の前にいるエンブレ♀モンは、言葉も通じないようだ。人間じゃないからね。仕方ないや。

僕は答えた。

「何をおっしゃっているかわかりませんが、いいがかりだと思います。それより、お子様の迷惑行為などで、他の方にけがをさせたりした場合は、親が罪に問われ、賠償金も支払わなければいけないということをご存じですか?保護者義務違反ですよ。」

ちなみに僕はユーティーバーでもなければ、誰とも話をしていない。もちろんリアルタイム配信どころか、動画も取ってはいない。

どうやら漢字でしゃべると、モン脳は解析できないようで、顔じゅうに???がついていたが、なにやらやべぇことになるかもしれない

ということは本能で察知したらしく、自分たちの愚行が勝手に動画されていることよりも自分たちが加害者として訴えられる可能性をなんとなく感じとったのか、こどもたちを座席に連れ戻し

「おまえたちがじっとしてないと、なんかぁ、おれらがやべえことになるらしいから、ここから動くな」

と、わけのわからない自分流の理屈をくっつけて、とりあえずチビモンを座席周辺にとどまらせ、体に悪そうなスナック菓子を大量に与えて、一旦は沈静化を図ったようだった。

やれやれ

こどもたちよ。親は選べないけど、自分の人生は変えられるから、この♀醜モンを反面教師として、よい大人になるんだぞ。

と、ミニモンたちを見ながら心で問いかけると、ミニモンたちはじっとこちらをみながら、小さくうなづいた。

そういえば、自分の弟も今はおっさんでこどももいるが、その弟が5歳のときに、列車の座席シート(頭部カバー?)を、がーーーっと全部剥がしながら車両をダッシュし、母親がすいませんすいませんと言いながらカバーを戻し、7つ年上の自分も、速攻でカバーをもどしごめんなさいと言ったら、いいのよ。元気な弟君ね、とやさしく微笑んでくれた大人の女性の笑顔が今でも目に焼き付いている。

子供が動くのは仕方ない。成長している証拠だから。しかし世の中の大人たちがこどもとどう向き合うかが大事ではないだろうか。

赤ちゃんが泣いてしまい恐縮してしまっているおかあさんに、怒号を浴びせるバカな中年男などは優しくない自己中大人で、如何なものかと思う一方、人の迷惑顧みないモンペア種族も存在している。おそらく、この中年男のように思いやりに欠ける大人のこどもが迷惑モンペアに育ったりするのかもしれない。

どちらも子供に対しての愛情が圧倒的に不足しているし、人を思いやる、気遣う心が欠けている、いや、喪失している。

ある意味かわいそうな人たちなのだろう。自分たちがちゃんと躾けられておらず、愛情もかけられなかったんだろうな。

今度から車内アナウンスで、こどもが走り回るのを止めない親は、途中下車してもらいますって言った方がいいかもしれない。その変わり、こどもがちょっとの間、時間をつぶせるような薄いミニ絵本かなにかを車両入口に設置し、無料利用できるようにしたらどうだろうか。

また、子連れ車両を設けるのはどうだろうか?車内はちょっとした保育室仕様で、車内装飾をこども仕様にして、モニターに子供用動画を流すとか。

子供を育てにくい環境を改善していくことで、子供を産みたくなるような社会に変えていけるのではないだろうか。



サポートしていただきましたら、きっといいことがあるでしょう!少なくとも私から多大なる感謝を持って、心より敬意を表します。ありがとうございます!!