見出し画像

星降る夜を残そう

 都心でも雪が降る! とみんなが騒いでいた日、僕は凍える東京から南に180キロ離れた、穏やかな南の島にいた(……と言いたいところだが、この日の最高気温は10度)。
 友人の誘いを受けて、とあるツアーに申し込んでこの島にやって来た。「神津島(こうづしま)」という地名はそのとき初めて知ったが、数年前に旅した八丈島の風景が頭に思い浮かんだ。都市には無い自然と穏やかな空気感が、島にはある。また旅することができるならば……。二つ返事で参加を決めた。
 そんなこのツアーのタイトルは「星を観て、星を撮ろう。神津島で星空撮影会ツアー」。そう、夜空に輝く星々をカメラに残すことが目的である。

 僕は写真撮影が好きだし、カメラも持っている。でも、それは10年前に買った安いデジカメだ。撮影目的はスポーツの写真をとることなので、それらの要素に最も適した性能のものを選んだ。素早く動く被写体に対応できるシャッタースピード。遠くにいる選手も捉えられるズーム機能。ただ、星空はゆっくり動くし、風景は引きで撮る。このカメラの強みが活かせるとは言い難い。
 そんな不安を抱きつつ、神津島へとたどり着いた。そして、ツアー客と合流したとき、まずいと思った。30名弱の団体ながら、全員立派なカメラを首にぶら下げている。これだけで気圧されてしまう。
 お昼過ぎには星空撮影のレクチャーがあった。なるほど、かくかくしかじかの方法で設定をすればいいのか……。
 ここでも躓いた。どうも自分のカメラでは、先生が仰られていたその設定が上手くできない。嗚呼、どうしよう。星空は諦めようか。肉眼で眺め、頭の中に焼き付ければそれでいいか……。

 迎えた夜7時。我々ツアー客一行は目的地の展望台にたどり着いた。周囲に外灯はひとつもない。撮影時間は約2時間。真っ暗闇の中で、ひたすらチャンスを待つ。
 夕方に通り雨があった影響もあり、当初は空には厚い雲が広がっていた。ひたすら真っ黒な空を見つめながら、根気強く待つこと30分。ポツポツと空が明るく照らされ始めた。8時を回った頃になれば、たくさんの冬の星座が確認できるようになった。理科の教科書に載っていた絵図の通りに、星が配置されている。多くのツアー客がわいわい言いながら、シャッターを押している。

 僕の中にも欲が湧いてきた。こんなに綺麗な星空ならば、頭の中だけに残すのはもったいない。ここはひとつ、カメラに頑張ってもらわねば。
 絞り、シャッタースピード、ISO感度。この3つの設定をいじり、撮影し、失敗したらまたいじる。先生の設定通りにはいかないけれど、合わせていくうちに別のやり方に辿り着けるのでは? 何度も何度も繰り返した。だけど、いくらシャッターを切れども、ディスプレイは真っ黒に写る画像を表示していた。

 視線を空へ戻す。ちょうどオリオン座が目に入った。僕の実家からだと、よく晴れた冬の日はオリオン座が確認できる。ばりばり文系の僕にとって、数少ない馴染みのある星座だった。
よし、ここに焦点を合わせてみよう。その方向にカメラを調整しながら、再び作業を進めた。

 写真撮影タイム終了まで残り20分。遂に僕の願いが通じた。オリオン座だけでなく、冬の大三角形もデータには残されていた。寒い中、よく頑張った、僕のカメラ!(そして僕も!)
 その写真を撮影した数分後、再び雲が星空を隠していった。間一髪だった。徐々にぼやけていくオリオン座を確認し終えた僕は、凍える体を温めるべく、そそくさと帰りのバスへ乗り込んだのだった。

↑ 2時間カメラと格闘した結果、このような写真となりました(※大幅な補正済)

===============

本稿は当方が編集長&イベント主宰を務める「電子雑誌をつくろう!」の最新号に収録されております。今回は「やってよかった!」をテーマに、参加者の挑戦&体験の記録を掲載しました。こちらも併せてお読み頂ければ幸いです。下記リンクより無料で読めます(※紙本は有料)

そんな感じで、よろしくお願いいたします

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)