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初めてを、労おう

この日の中山競馬場は、黄色いタオルマフラーをした人がやけにいた。
最初はどこかの一口馬主クラブが集まっているのかと思った。しかし、「菅」やら「明」やら、そのマフラーから見切れている緑色の文字に該当するクラブ名を、僕は思い出すことができなかった。

謎は中山9Rで解けた。マフラーに書かれていたのは人名だった。【菅原明良(すがわら・あきら)】。今日JRAでデビューする新人騎手だ。
ゴール前のウィナーズサークル付近に、菅原騎手の応援団は集っていた。20人弱はいただろうか。確か、中山競馬場の近くに実家がある云々という記事があったな。そう考えれば、この応援団の数も納得がいく。

迎えた中山9Rはダートの1800メートル戦。逃げるレオアルティメットから数頭離れた位置に、菅原騎手騎乗のタイキダイヤモンドがいる。今日のダートは前がよく残るレースが続いている。この位置は正解である。
第3コーナーまで隊列が崩れない中、タイキダイヤモンドは外に持ち出して勝負を賭ける。少し膨れたけど、まだ脚は残っている。
それと呼応するように、歓声のボリュームが一気に上がった。最後の直線、残ったのは3頭。逃げるレオアルティメット、半馬身差でタイキダイヤモンド。同じく逃げ馬を追いかけていたカラリエーヴァは少し苦しい。
レースカメラが一気にズームアップする。3頭の追い比べ。
勝つかもしれない! そんな期待感を含めた歓声と悲鳴が、ウィナーズサークル付近からこだましている。

勝ったのは馬番11。レオアルティメットが逃げ切った。タイキダイヤモンドは差を詰めきれずに2着。ただ、菅原騎手は7番人気の馬を見事馬券圏内へ手繰り寄せた。

応援団はレース後、検量室前の広場に集っていた。周囲は労いの言葉でざわついている。レンズ越しに、菅原騎手の表情を覗いてみた。直接的に言葉は交わしていないけど、そんな労いの言葉に応えるような、悔しさと満足感が漂う表情を見せていた

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)