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都市対抗野球へ、ようこそ!【2019.7.21編】

都市対抗野球において、最も観客動員が多いチームと言えばJR東日本であろう。
どんな場合においても、試合前には入場待機列が多数発生している。外野席はもちろん、3階席も必ず一定数以上埋める。そして、この人数を毎回スムーズに捌く関係者の手腕は、実に素晴らしい。

今年の7月は涼しい。今まではJR東日本の大行列に並ぶのが嫌で避けていたが、今年ならば「暑さに耐える」というストレスは無い。チャレンジしてみるにはいい機会である!
……と思ったのだが、この日の2試合目に組まれていたNTT西日本戦は、すんなり入場できた。どこにも行列はできていなかった。
それもそのはず、第1試合はグループ会社のJR東日本東北の試合が組まれていたのだ。「第1試合でJR東日本東北の試合をご覧の方は、そのまま第2試合も見れます」と、チームの案内板に記されていた。そうか、1塁側応援席の人たちの多くは、2試合連続で応援しているというわけか。

思わぬ流れに拍子抜けしつつ、3階席を案内され、14時ちょうどに着席することができた。周囲にはJR東日本のファン、関係者で席が順調に埋まってきている。ここから今日はどこまで埋まっていくのだろうか……。
そんなことをぼんやり考える暇も無く、試合は大きく動き出す。JR東日本の先発はプロ注目の太田。彼の立ち上がりが最悪だった。早速4者連続でヒットを浴び2点を先制されると、さらには6番・中村のスリーランホームラン。初回で早くも5点のビハインド。応援席からはため息が何度も漏れた。予想以外の展開だった。
何とか少しでもビハインドを縮めるべく攻撃陣も奮闘するが、チャンスに憤死・凡退・盗塁死が重なり得点できない。NTT西日本の先発・濱崎にのらりくらいとかわされながら、試合は8回裏に突入する。

この回からNTT西日本のマウンドにはセットアッパーの河津が上がった。ここでJR東日本は意地を見せる。先頭バッターの佐藤が出塁すると、代打の柴田はフォアボールで出塁。ノーアウトながら、スコアリングポジションにランナーが立った。

ここでJR東日本の応援が、間を整えだした。チャンスということは次の曲は……

1! せーの! 2! せーの! 3! せーの! JRファイヤー!

「JRファイヤー」はJR東日本のチャンステーマである。元の曲は「Night of fire」というダンスミュージックなのだが、それを感じさせない独特のアレンジで多くの社会人野球ファンに愛されている。
「JRファイヤー」を一言で表せば「怖い」だと僕は思っている。スピーディーでアップテンポなサビから一転し、シンプルに選手の名前を繰り返す掛け声。この緩急が組み合わさり、そして繰り返されると相手側としては不安定な気持ちになるのだ。
そして、応援席を埋め尽くす多くの人たち。今年は配布されたタオルを振り回し、耳だけでなく目からも威圧感を与えさせる。
まさに、相手の戦意と集中力を削ぐためにはもってこいのチャンステーマなのである。

次のバッターもヒットで出塁し、ノーアウト満塁で4番の渡辺。ここまで余裕の試合展開だったNTT西日本に焦りが見え始めてきた。1塁側応援席はひたすらJRファイヤーのメロディーに合わせてタオルを回し続けている。
速球に臆する事無く、渡辺はバットを振りぬく。しかし、勢いよく放たれた打球は運悪く、ピッチャーのグラブに吸い込まれてしまった。飛び出した2塁ランナーも刺され、まさかのダブルプレー。2アウトで1・3塁。NTT西日本はさらに流れを取り戻すべく、抑え投手の吉元にスイッチした。

だが、ここで終わらないのがJRファイヤーが魔曲とも称されるゆえんである。続く丸子が何球も粘った末にツーベースを放てば、代打の大城もセンターの頭上を越える長打を放つ。この2本で3点を加え、1塁側応援席のボルテージもこの日一番の盛り上がりを見せる。
さすがに、ココまで来ると僕も怖くなってきた。こんなに出来過ぎな展開に、たった1曲奏でるだけで辿り着けるだなんて……。

バッターは7番・近森。押せ押せの展開に合わせるように、ライト方向に勢いのあるゴロが飛んだ。外野まで届くか!? いや、そこには運悪く、ダイビングするセカンドの山田の姿が……
長い長い8回裏の攻撃が終わった。NTT西日本は魔曲に打ち克ったのだった。だが、JRファイヤーがここで終わる曲ではない。さらに「怖さ」に磨き上げて、再び東京ドームで奏でられることだろう

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