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暑いゲームは、暑いうちに

僕が尊敬するスポーツライター、故・山際淳司氏の本に「夏の終わりにオフサイド」というものがある。山際氏は「江夏の21球」など多数のスポーツノンフィクションを生み出している作家だが、この本はどうも毛色が違う。
一言で評すならば、ノンフィクションとフィクションの間を彷徨っている。もちろん、実在する有名なスポーツ選手が出ている作品もある。でも、その周囲を取り巻くエピソードは、どうやらたっぷり「虚」が含まれている。
本そのものの情報を何回か調べたことがあるが、どういう経緯で生まれ、作者がどういう意図でまとめたのかはわからないままだった。氏の歴史を紐解けば「著者初のフィクション集!」と宣伝してもよさそうだが、そういう謳い文句も出てこない。不思議は不思議なままである。

夏が繰り返されるたびに、僕はこの本をカバンにしのばせてスタジアムに足を運ぶ。
そして、毎年、僕は7月から8月にかけて、必ず一試合はデイゲームに足を運ぶ。観戦するとなると、野球のファームの試合とか、地方競馬とか、そういう類いのものが多い。
暑いときに何故? と普通は思うだろう。でも、暑いときに見るゲームほど、不思議なシチュエーションに出くわすことが多い。崖っぷちの選手が放つ一振りの輝きとか、低い人気で隠れていた馬の恐るべき末脚とか……。
えっ、なんで? と思う。でも、次に頭をよぎるのは決まってこれだ。「今日は暑いから、仕方がない」。

そう、「夏の終わりにオフサイド」という本は、そういうエピソードであふれているのだ。

とは言え、今年はいくら何でも暑すぎる日が続く。ウェザーニュースの警告に耳を傾け、7月はナイトゲームでお茶を濁す日々だった。でも、台風も通り過ぎたことだし、そろそろ暑さも和らいでくれないだろうか。突き抜ける真っ青な青空の下で、僕は暑さにうなされながら、ボンヤリとゲームを眺めていたいのである

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