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意味が分かると怖い話~留守番~

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「今日の夜は仕事でいないから」
 曇天の夜、俺は疲れ切った顔をした母さんから、玄関にてそんなことを言われた。俺の父さんは既に他界しているため、母さんの発言は俺に『留守番』が与えられたことを意味している。
 俺は、『留守番』という物がとてもありがたかった。
 父さんがいなくなった後は必然的に母さんが一人で俺の面倒を見ている状態となっているため、母さんは仕事漬けだった。無論、ストレスもたまるので常に不機嫌だった。
 場合によっては俺を殴ったり、蹴ったりしてくる。俺は、母さんが母さんなりに頑張ってくれているのを知っているので、仕方ないと割り切っていた。それでも無いに越したこはないが。
 それ以外にも一つ、留守番がありがたい理由があった。いや、どちらかというとこっちの理由がメインかもしれない。俺は知覚過敏(音が異様に大きく聞こえる症状)であるため、母さんが何かしらの物音を立てている間は寝れず、寝れてたとしても再び母さんが物音を立てた瞬間に俺は起こされた。どんな小さな足音でも起こされた。
 お陰様で俺は不眠症。目の下には常に濃い隈が出来ており、自覚症状があるほどにイライラしていた。その原因である母さんが留守にしてくれるなら、俺は暴力も受けず、ゆっくり休むこともできる。つまりは一石二鳥だ。
「……遅くても二時までには絶対に戻ってるから。それじゃあ、いってくる……」
 母さんが玄関の扉を開けると、外から涼しい風が吹き込んできた。
「いってらっしゃい」
 疲れているのでそっけなく返す。双方の顔からえみがこぼれることは無く、そのまま扉は音を立ててしまった。先程まで吹き込んでいた風が嘘のように消え、家中が静まり返る。
 そんなことは気にもせずに俺は、二階の自分の部屋のベッドへと、ゾンビのようにふらふらと歩いて向かった。
 部屋に入った瞬間、俺は電光石火の早業でシーツと毛布の隙間に体を挟み込んで目を瞑った。たった三十秒ほどで段々と意識が遠ざかり……一分後、俺は寝付いていた。
                 ※
 翌日の朝、俺は目覚めた。一度も起きることなく安眠できたので、いつもより気分が良い。俺は『うーん』と伸びをしたのち、机の上に置いてある時計を見た。秒針がさしていたのは八時丁度、いつもよりも遅い時間だった。。
≪解説≫
 初めに要点をまとめます
①主人公は聴覚過敏で、寝ている間に音が鳴るとそれに反応して起きる
②母親は『二時』に戻ってくるといった
③主人公は八時に起きた。それまで一度も起きることは無かった
④母はストレスが溜まっていた
 結論から言えば、この話で母親は育児放棄しました。その理由として、③が挙げられます。母親が帰ってくると主人公は起きるはず(①、足音でおきる)です。なので主人公が起きる時間は、母親が戻ってくる二時であるのが自然です(②)。
 ですが、主人公が起きたのは『八時』でした。これは夜の間に物音が立っていない、つまり母が家に帰ってきていないことを示してます。動機としても④が挙げられるので、育児放棄したと考えるのが妥当でしょう。
  
 

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