「荒野に咲く天使」の作詞について

こんにちは。わさべさんことWasabeepです。
改めましてM3-2022秋お疲れ様でした&ありがとうございました!

今回も例の如く、Oin RECordsの新譜「Fairy Sign」にしろさきあやさん歌唱の新作「荒野に咲く天使」で参加させていただきました。
アルバムのテーマがファンタジーということで、以前からやりたかったラテン調ポップに挑戦してみました。

「荒野に咲く天使」はWasabeep史上ぶっちぎりで作詞を頑張ったし、かなり自分の好みが反映されたものになりました。
おそらく客観的に見ても今までで一番クオリティが高いんじゃないかな、と思ってます。
今まで自分の作品について(しかも主に作詞について)長文で振り返ることはなかったんですが、曲から興味を持っていただいた方にもぜひ歌詞に注目してほしいと思い、試験的に解説のようなものを書いてみることにしました。
また、何かの間違いで曲より先にこの文章にアクセスしてしまった方が興味を持って曲を聴いてくれるかもしれない、という期待も抱きつつ、歌詞全文載せながら順番に語っていきたいと思います。

構成は1A→1B→1サビ→2A→2B→2サビ→D→ラスサビとなっております。


1A・1B

寂しさ抱えたまま 旅人は荒野を彷徨う
陽炎の中に見た 救いは鮮明な幻
命のひとしずくを 終わらぬ旅に導きを
眠る炎呼び覚まし そっと囁く蜃気楼

この曲に関して、作詞のみならず作編曲・ミックスにいたるまで一貫した表現のテーマがありました。
それは「寂しさ」「孤独感」です。
例えば、伴奏を賑やかにしすぎないようにする(ただでさえラテン調なので、一歩間違えるとカーニバル感が出るんですよね)とか、ボーカルのリバーブを控えめにするとか(声を反射するものが何もない砂漠の風景を表現)。
1Aは割とそれを語彙にストレートに出した気がします。
一方1サビではかなり情熱的な表現をしたので、1Bでしっかり盛り上げる必要がありました。
ある種の必死感、感傷に浸っているというよりは割と死にそうな感じを出したかったんです。
ここではまだ「天使」の存在は仄めかすだけにとどめています。

1サビ

金色になびく髪を 燃える赤の薔薇が飾る
美しく舞い散る羽は 黄昏の火に染まりゆく
手と手取り合い踊れば 伝わる魂の調べ
激しく熱く奏でたら 私に身を委ね
夢を見ましょう?

や〜〜〜〜〜〜〜!好き!(自画自賛)
やっぱりラテン調はこうじゃなきゃね!
「天使」の登場です。
まずサビ前半ですが、ぐっと世界観に引き込むために情景描写に全振りしました。
過去作「水銀の姫」についてもそうだったんですけど、僕は人外に翼を生やすのが好きらしいです。
後半は「天使」の言葉を1人称的に書いています。
実は「天使」というのは美しさを持つ人ならざるモノという意味で使っていて、想定している存在自体はどちらかというと死神や、セイレーンとかの方が近いかもしれません。
ここは完全に魅了パートです。
「天使」のペースで物語が進んで行きます。

2A・2B

人はどう抗えど 孤独に従順な生き物
叶えても違えても 交わした約束は消えない
罪に罰を与えよ 永久に赦されないように
心臓の奥深くで 枷は二人を繋ぐから

soundcloudのデモを2番にしたのは2ABの歌詞がバカほど気に入ってるからです。
ここでは「天使」が揺さぶりをかけられて人間味を出してきており、起承転結の転に当たります。

2Bの歌詞は構想だけはかなり前からあって、作詞の途中で、ピタッとハマるじゃん!ということに気づき採用しました。
共犯者の関係って良いですよね。
関係性オタクが出てしまいました。
ところで、僕は「命」や「魂」、「心」を表す語彙として「心臓」がかなり好きです。
「水銀の姫」では人としての命が失われてしまう文脈で使いましたが、今回も生々しい実在感と神秘性を両方ともしっかり表現してくれています。

2Aは、実は作詞中最後の方まで空白として残ってしまって何を入れようかと悩んでいたんですが、2Bで2人の間を繋ぐものとして罰(ここでは枷と表現しています)を用いたのと対比して、ここでは一般に人と人を繋ぐものの例として約束を挙げ、そこから構想を広げました。
「約束」に対して、「叶えても違えても」というエモくてかつ母音の揃った語彙を引っ張り出せたのは正直かなりドヤァと思っています。

ここで、「約束」は「旅人」と「天使」の間に交わされたものと解釈することもできますが、僕は作詞時点でそれを想定していませんでした。
約束は誰と誰のどんな約束なのでしょうか?
罪とは何を表すのでしょうか?
ここはぜひご自身の解釈を楽しんでいただければと思います!

2サビ

照らす月の冷たさに 夜風の旋律を歌う
零れる吐息の甘さは 焦がれた蝶を誘う蜜
やがては去りゆく人よ せめて今だけ抱きしめて
瞳の奥に刻んだら 刹那に酔いしれて
溶け堕ちましょう?

1サビの黄昏の描写と対比させるように、時間を進めて夜にしてみました。
オレンジ、赤、暖色のイメージから、黒、紺、寒色のイメージへの転換を意識しています。
また、最初は意識してなかったんですが、「冷たさ」という言葉から昼夜の気温差が大きい砂漠感がめっちゃ出せたと思っています。
2行目から…ヤバくない?えっちすぎない?これほんとに自分が書いた?
実際ここ書き終わった後自分の頭から出た歌詞だと思えなくて一人でゲラゲラ笑っていました(異常)。

D

この世は乾ききった砂漠の闇
私は貴方だけのオアシス

2番で「天使」の人間味がかなり出てしまったんですが、ここで1行だけ上位存在感を出しています。
でも実は(2Aもそうなんですが)、そうだよね、誰だって寂しいよね、と人間側に寄り添うように見せて、どこか自分自身にも言い聞かせているような表現をしたかったんですよね、伝わってますか…?
2行目では「貴方だけの」で、もう誰彼構わず襲うタイプのモンスターじゃなくなってしまっていることを表現しました。
余談ですが、Cメロってサビのことらしいですね。
最近までDメロのことをCメロって呼んでました…

ラスサビ

灯が消える日まで 遥かな旅路の果てまで
解けない魔法をかけたの 呪いにも似たくちづけで
いつか地平の彼方で 静かな眠りにつくとき
瞼の裏でいつまでも 微笑んであげるわ
意地悪でしょう?

この曲の作詞始めて最初に思いついたのはラスサビなんですよ。
僕は曲→詞の順で作るんですが、曲作ってる時はすでにこの辺のストーリーは思いついていて、ガッツリ作詞するぞって段階になってそこに至る情景や心情の描写を足していった感じです。

いや〜残酷ですよね。
別れた後も死ぬまで自分を忘れられないように記憶に刻みつけようとする女、関係性萌えのオタクとしてかなり性癖に刺さるかも。
表現活動によって自分の中に気づきを得られる実例となりました。
サビの最後を全て「〜しょう?」というセリフで締めているのもこだわりポイントですが、12番は「〇〇しましょう」という"do"の意味なのに対しここは「〇〇でしょう」すなわち"be"なんです。
もうこれっきり、これ以上の進展がない閉塞感、諦めのようなものがちょっとでも表現できていればと思います。

そうそうここ!
僕は何も言ってなかったんですがしろさきさんが勝手に微笑んで歌ったテイクが偉業すぎて採用となりました!
わかり手が過ぎるだろ…


以上、お付き合いいただきありがとうございました。
今作は、作詞ってこんなに楽しかったのか!と思えたのが本当に大きな収穫でした。
今後も良い感じの歌詞書けたらまた長文書くかもしれません。
それではまた!

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