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「スペシャルワン」 2年・林隆生

私は、「No.1」という言葉より「オンリーワン」という言葉の方が好きです。

誰しもが「No.1」には憧れるものです。
でも、「No.1」が全てでしょうか?

本来持つ自分自身の良さを消してまで、他人との比較で勝とうとする。
世の中的に好まれるテイストに自分自身を捻じ曲げる。
なんてことは少なくないと思います。

人にはそれぞれ個性があります。
人と違う部分があります。違う部分を必ず持って生きています。
「自分にしかできないこと」が必ずあります。
それを突き詰めて、貫き通した状態が「オンリーワン」だと思います。
「異世界」とでも表現すればわかりやすいでしょうか。

他人との比較によって初めて光り輝くことができる。
そんな人は一流じゃない。
自分自身で輝ける人でないと。

他人との比較に無駄な神経を使うくらいなら、自分の「武器」を伸ばし、自分自身を貫き通す作業にエネルギーを注いだほうがよっぽどいい。
これが私の考えです。

私は凡人です。
何の才能も職能もありません。
他人とまともに張り合っても勝ち目はない。
「No.1」になれる可能性は極めて低いんです。
それを高校時代にまざまざと思い知らされたので。

いい企業に就職したい、医者になりたい、政治家になりたい、弁護士になりたい。
誰もが志望する、狭き門を突破しないと到達できない世界で戦う人たちとがっぷり四つで組み合っても勝てっこない。

そんな自分が見つけたのが「大学スポーツを運営する」という立場。
大学スポーツで選手として成功した人はたくさんいるけど、運営する側として成功した人はまだまだ少ない。ブルーオーシャンなんです。

目の付け所は決して間違っていなかった。
これは胸を張って言えます。

そして去年、大学サッカー・大学スポーツと初めて向き合い、現場に立つことで見えた課題を積極的に発信してきました。

4月に初めて観戦した関東リーグで大学サッカーの注目度の低さを目の当たりにしたあの時の衝撃。
でも、7月の早慶クラシコで魅せられた大学サッカーの可能性。

そこからは大学サッカー・大学スポーツをいかにして盛り上げるかが思考の中心となり、同じような志を持つ人たちと集まってディスカッションをしたり、他の部でやっていることを聞いては「これなら大学サッカーでもできるんじゃないか」とシミュレーションしてみたり。

そこからは、漠然とはしているけど「いつしか大学サッカーで革新的な何かを起こしたい」と思い立つようになった。

だけど、高校までの競技歴も何にもない無名の学生は全くと言っていいほど相手にしてもらえなかった。
そう、早稲田大学ア式蹴球部のマネージャーという肩書きだけではまだまだ立場が弱くて、仲間も足りなかった。
だから、学連という新たな世界に飛び込んだ。

運営側に立つことで初めて見えたこともあり、そこからは大学サッカーの課題をひたすらに発信してきた。

そこに一定の価値がつき、自分自身でも少し手応えを感じていた。
あの頃は、本当に成長している実感をひしひしと感じられていた。

ただ、大学サッカーの課題にぶつかり続ける中で、どうしても超えなければならない大きな課題があった。
大学スポーツに対する世の中的な見方、考え方。

そこで思い立ったのが、早稲田大学のスポーツに対する姿勢、ポジショニングの再整理。
早稲田スポーツ(なんならア式)を盛り上げるには、その土台となる部分を整備し直さないといけないと思ったから。

早稲田大学の体育会と非体育会を巻き込んで、早稲田大学全体で早稲田スポーツを盛り上げようというプロジェクトを始めようと思った。

何かを行動に移す、実行力の無さが昔からの課題だった私にしては、とても成長したものだと感じます。
企業の方に相談してアドバイスをもらったり、実際に他の部の人にもプレゼンしてみたり。
組織作りのプランニングをしっかりと立てることができたので、急がず、じっくりと組織作りをしていこう思った。


ここまでが今年の春先までの私。

体育会サッカー部でマネージャーを務め、
早稲田大学というメガ大学の体育会全体を巻き込んだアクションを起こし、
学連では先頭を切って大学サッカー改革の一翼を担う。

完璧な肩書きじゃないか。


オンリーワンになれる。


はずだった。

でも、そのチャンスを自ら手放した。
順調に右肩上がりの軌跡を描いていた成長曲線の傾きを自ら0にした。

一度掴みかけたチャンスは二度も三度も訪れるわけじゃない。
気付けばチャンスはおろか、これまで自分を突き動かしてきた情熱をも失った。

理由は最近なんとなくわかってきたような気がします。

当時、学連とア式の仕事が忙しくなった頃でした。
朝早くに起きて授業を受け、
授業が終われば練習に出て、
それが終われば学連に行って夜遅くまで仕事をする。
そして家に帰って、ご飯を食べて寝て、起きて、
を繰り返す。

まるでプログラミングされたロボットのように、毎日が一定のリズムで刻まれていった。
そして気付けば、心までもがロボットのようになっていった。

情熱を失った。

最近の私は、まるで大海原を筏でプカプカ浮いているよう。
組織や周りの流れに身をまかせることしかできない。

少し前までは"エンジン"をちゃんと持った小型船だったんだけどなあ。
気付いたら筏に変わっていました。

情熱を失った私は、情報発信をぱたりとやめてしまった。
トピックがない、書きたいと思うことがないから。

でも、最近ようやく気付きました。

自分自身に価値があるんじゃない。
自分の発信そのものに価値があるんだ。

だったら、その情報発信を怠ってどうする?

価値は付くものじゃない。
自ら創りにいくもの。

その作業を放棄した自分に価値なんか付くはずがなかった。
ましてや凡人なんだし。
でも、価値が付くのをずっと待っていた。

だから成長しなかったんだ。

辛い時、上手くいかない時も含めての情報発信でしょう。
たまたま上手くいった時の話だけを美談のように書いたって、価値なんか付くわけないですよね。

情報発信に陰りが見えるのは私だけではないと感じています。
チームも、監督も。
情報発信こそが、ア式のバロメーターなんです。


自分をあえて過大評価するのなら、
「大学スポーツの変革」という舞台から”林隆生”という存在は消えました。消えつつあります。

今年の1月に開かれた高校の同窓会で、久しぶりに会った同期から
「最近すごいことしているね」
「起業でもするの?」
などと言われました。

自分の情報発信が届いていたのかな。
これまで劣等感しか感じなかった、キラキラした存在の同期から、初めて認めてもらえたような気がしました。

でも、そんな自分は今はいません。

改めて、過去に発信してきた文章を読み返してみたりもしましたが、まるで他人が書いたものを読んでいるような感覚がします。

正直、悔しいです。

一度失った情熱が元に戻るかは分かりません。

情熱とは、脆くて崩れやすいもの。
その扱い方に注意しなければいけないことを認識できたことでも大きな収穫でしょうか。

このような苦しい胸の内を話していると、私と同じような境遇に陥っている人が結構いることに気付きました。

先述した通り、「大学スポーツの運営」という世界で成功した人はまだまだ少ない。大きな可能性を秘めています。
ただ、逆に言えば広大な未開拓地すぎて、何をどこから手をつけてどうやって課題を解決すればいいのかがわからなくなり、いざ足を踏み入れてみると答えの見えない迷路に迷い込んだような錯覚に陥る。
また、各部や学連の既得権益が強すぎて、ビクともしない大きな岩を前にどうすることもできなくなる。
このダブルパンチに苦しんでいるようです。

私も周りと同じように、このまま終わってしまうのでしょうか。
このままだと、「理想ばかりをいつまでも語っている奴」で終わってしまいそうです。


ぶっちゃけた話をすると、今年の4月で一度ア式蹴球部と距離を置き、「自分にしかできないこと」を追求して成長してからア式蹴球部に戻ってこようと考えていました。それが自分のためにもア式のためにもなると思ったので。
監督に本気で相談する一歩手前までいきました。

でも、やめました。

理由はいろいろあります。
でも、ア式から離れなくてよかったと思います。

結局のところ、自分は弱い人間なので。
「早稲田大学ア式蹴球部」という肩書きがないと何もできないんです。

だから、あの時早とちりしなくて本当に良かった。

ア式蹴球部には、
常に新たな視点を持ち込み、良質な壁打ちをしてくれる監督がいます。
とても魅力的なプロジェクトの話を持ちかけてくれるコーチの方もいます。

でも、それに100%の情熱で応えられていない最近の自分がいます。
情けない限りです。

話は少し変わりますが、
最近、ア式の人間から「ありがとう」と言われることが多くなりました。
小さなことから大きなことまで。
練習中にボトルの水を入れ替えただけでも。
部の広報用の画像を作っただけでも。

リーグ戦の運営で忙しくなる時期になると、グラウンドに立つのが厳しいなと感じることは少なくありません。ヘロヘロになりながら毎日グラウンドに立っています。他のマネージャーと同じ土俵に立って戦えていない、情けない自分がいます。いつも迷惑ばかりかけていてごめんなさい。

でも、不意に部員から「ありがとう」と言われた瞬間、何も見出せずにに真っ暗だったア式の活動に明るい色がつきます。
ボロボロになりかけた自分も少しだけ癒されます。
だから、また頑張ろうって思えます。

ア式は本当に居心地が良い。
だから、もっと居させてください。

そして必ず、「オンリーワン」、いや、それをも超えた「スペシャルワン」として、ア式蹴球部に何かをもたらす存在になってみせます。


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明日の担当は、"日本を可愛さでリードする存在"の2年マネージャー高原さんです。
どんな可愛い内容のブログを書くのでしょうか。
はたまた、ギャップを感じさせるような大人チックな内容なのでしょうか。
彼女の手のひらで転がされないように皆さん注意してくださいね。
明日の更新も楽しみにしていてください!

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林 隆生(はやし りゅうせい)
学年:2年
学部:スポーツ科学部
経歴:東京都立小石川中等教育学校

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