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人が生きていくものに必要なもの【立花】

新型肝炎の影響で、のきなみ、イベントや新事業が中止、延期になっている。

ふだん、満員電車に揺られて出勤していた人たちも、自宅で仕事をするスタイルや出勤時間をずらすなどして、対応している。

わたしが暮らす北海道下川町は、見た目はそんなにふだんと変わらない。

宿泊施設はキャンセル続きでイベント好きな町ゆえにほとんどの催事は開催を見送られ、なんとなく退屈な日々だけれど、コロナに感染した人は今のところ出ていないし、町内をランニングしている人もいる。

雪解けも始まったし、気温も日中は氷点下になることも少なくなったから、動きたくなる気持ちは、よくわかる。

コロナによる自粛の雰囲気のさなか、新卒一年目の夏休みにキューバに行ったことを思い出す。

ボーッとカリブ海をながめていた、あの1日。

ボーッとしすぎて何時間そうしていたのか分からない、ゆめうつつを行ったり来たりして、気づけば夕日が波間に浮かんでいた。

「あ、頭が空っぽになるって、こういうことなんだ」と、わたしは感動した。

同時に「わたしが何も生産しなくても世界は回るのだ」とも、思った。

いま「ふだん当たり前にしていること」や「疑いようもなく忙しいこと」が、否応なしに中断され、スローペースになっていると感じている人も少なく無いように思う。

そして「当たり前だと思っていたけど意外と無くてもイケるのでは」と感じている日々の習慣やリズムも、あるのではと、思う。

「何も生産しなくても地球は回る」のだと、実感している人も、いるのでは? そしてその感覚に救われた人もいるのでは?……という仮説は、無邪気で呑気すぎるでしょうか。

けれど、心身ともに健康で、でもいつもどおりのタイムラインで動かない、動けない人にとって、このもどかしさは逆に、ほんとうに必要な物事を、見返すきっかけになるのかもしれない。

事実、わたし自身が軒並みいろいろな案件が中止、延期に追い込まれ「おお、こんなところにも影響が」と驚くこともあったし、そんなことでは済まない出来事が世界で起きていることは重々承知なのだけれど、不謹慎と言われるかもしれないが、わたしがワーカホリックのままキューバに旅に出たときの、あの「頭空っぽの感じ」が、少し重なったのも正直なところで。

切実な”被害"と呼んでもいい状況下にある人たちの暮らしも思いつつ、「いつもどおり」がちょっとだけ身軽なかたちで、取り戻せたらいいなと、思うのでした。

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