【新潟県】「長岡まつり大花火大会」を支える花火師の想いとは

参考:【新潟県】「東京新潟物語」地元を想う、すべての人へ

誰にでも、地元の思い出の1つや2つ、いえ、3つや4つ……今では記憶の底に眠ってしまった、青春時代のキラリと光る1コマがあることでしょう。私(佐野)にとっての地元の夏の思い出は、長岡まつり大花火大会が代弁してくれることが多々ある気がします。

なんだろう。開催日が近付くたびに、「誰と行く?」「どこで見る?」「そのあと何する?」と盛り上がる。15歳のときは当然まだ車なんて交通手段がなかったから、電車やバス、ときには自転車なんてものを使って打ち上げ場所を目指したり。

上がる花火をそっちのけに、わいわいきゃあきゃあ騒いだ日もあれば、なんだこれ、なんだこの花火の量、きれいすぎるぞおいどうした、って思いながら、隣のひとをちらりと仰ぎ見たり。

毎年8月2日になると「夏本番、来たり」と思い、3日を過ぎれば残りの夏を数え始める。新年、とまでは言わないけれど、私にとってはお盆よりもずっと一年を数える指針でした。

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この花火大会の好きなところの1つは、2時間弱に渡る打ち上げ時間の最後に、打ち上げをしてくれた花火師の方々に向かって、「花火師さんありがとう」と信濃川の両岸にいるたくさんの人が、それぞれの手元にある懐中電灯やスマートフォンの明かりを振ってお礼を言うところ。

小さい頃から、ずっと花火大会と花火師さんはふたつでひとつ、セットの意識を持っていました。そして、ずっとずっと聞いてみたいと思っていた。

「あの瞬間、明かりを送られる花火師の方は、何を思っているんですか」と。

だから今回、花火大会の打ち上げを支える企業のひとつ「新潟煙火工業」の専務取締役 小泉さんにお話を伺えるとなったときは、佐野ちょっと小躍りする気持ちになりました。

ここからは以下記事とあわせてぜひお読みくださいませ。

参考:【新潟県】「長岡まつり大花火大会」夜空に咲く2万の花に想いを乗せて

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佐野:まずは、新潟煙火工業について教えていただけますでしょうか?

小泉さん:新潟煙火工業は、新潟市を拠点とする花火製造業者です。長岡花火以外に、新潟県内の花火大会はもちろん、全国の花火大会の花火を手がけています。

佐野:そうなのですね。1つの花火大会の準備をするのに、だいたいどれくらいの時間がかかるものなのでしょうか? 

小泉さん:私たち新潟煙火工業は年間を通して花火の製造をしています。花火は一玉一玉作ることもありますが、製造工程ごとにまとめて作ることが多いので、1つの花火が完成するまでに1ヶ月〜1ヶ月半ほどかかることもざらです。

とは言え、やはり花火大会が多いのは夏なので、繁忙期は7、8月になりますけれどね。花火大会当日に向けて、長期的に準備をするという感じでしょうか。

佐野:なるほど。一人前の花火師になるまではどれくらいの修業が必要なのでしょうか。

小泉さん:昔は10年と言っていたようですが、一概には言えません。ありきたりな返答かもしれませんが、花火師は一生勉強なんです。花火には数多くの種類がありますし、各工程によって求められる技術もまったく違いますから、単純に経験をたくさん積んだからと言って、容易には超えられない壁が存在します。それに、会社ごとに方針も異なるから、難しいですよね。

佐野:花火師をしていて、うれしい瞬間というのは、どのようなことでしょうか?

小泉さん:やはりモノを作る仕事ですから、花火が打ち上がってきれいな花を咲かせた時にはとても嬉しいなと思いますね。特に、打ち上げて、歓声がわいた時。

花火はやはり、人に見ていただいてなんぼ、というものですから、自分の手がけた作品が多くの方に喜んでもらえたことを感じる瞬間は、何者にも代えがたいです。

でも、打ち上げる瞬間まで、その花火の良し悪しや美しさは、僕たち花火師にもわからないもの。そこが悩みどころでもあるんです。いくら自分で、これは力作だ、いい出来だ、と思っても、想いとは裏腹な結果になることもありますし、またその逆もあり得ます。花火師が作るものそのものは、「玉」でしかないのでね。表面はキレイに整っていても、中身は見えない。そこはすごく苦労することの1つですね。

そういった意味で、なかなか思うようにいかないから、先ほど申し上げた通り一生勉強したいと思うわけだし、やっぱり常に追求する心は忘れられない。

だから余計に、きれいに打ち上がってくれた花火に歓声があがったときは、嬉しいのでしょうね。

佐野:聞かせていただいてありがとうございます。私も毎年きれいな花火が見られて幸せです。さきほど、たくさんの花火大会を手がけられているということですが、小泉さんにとって、長岡大花火大会はどのような花火大会なのでしょうか。

小泉さん:長岡大花火大会は、空襲や震災の慰霊・復興、ひいては平和への願いが込められた花火大会です。でも、僕自身が空襲や震災を身をもって体験したかと言われれば、そうではない。

でもやっぱり、僕も新潟県で生まれ育った人間なので、近くでそれに対して苦労してきた人たちの姿を見てきた一人ではあります。その意味では、長岡がすごく頑張ってきたんだ、今も頑張っているのだという気持ちを代弁するような気持ち、ただ美しく花火を打ち上げようと思う以上の想いを込めて望んでいると思います。

佐野:はい。最後に1つ聞かせてください。長岡大花火大会の最後に、「花火師さんありがとう」の時間があります。その時、花火師さんは何を思っているのでしょうか?

小泉さん:土手の両岸から、一斉に明かりが贈られてくる瞬間は、やっぱり非常にうれしいですよ。幸せだなと思っています。ただ、私たち花火師も、「今年も見てくれてありがとう」という想いを同時に贈っています。だから、きっとあの時間は、信濃川を挟んで、互いの気持ちが行き交う瞬間なのでしょうね。

佐野:そうだったのですね……! 長年の想いが花火師さんに聞けて、うれしかったです(笑)。ありがとうございました。また来年も、長岡大花火大会を見に行けたらと思います。楽しみにしておりますね。

(写真提供:長岡市デジタル写真館《長岡市観光企画課》新潟煙火工業株式会社

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