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創業してから崖っぷち。〈その一〉

起業を試みる人たちに向けて。何らかの参考になれば…と思い記録しておきます。

創業の理由は某所の陶磁器製造・装飾技能をサポートすること。
と書くとカッコイイ感じになりますが、実態は小さな陶磁器工房とその工房主の希望に乗っかりながら、歴史学の知識を活かした仕事を作り上げていこうという試みから創業に至っています。そんな動きから5年半。
創業早々崖っぷちに立たされた履歴を振り返ってみようと思いました。

法人化って必要⁉

当初は法人化するつもりはありませんでした。2017年頃の話です。
京都芸術大学(当時は京都造形芸術大学)の通信教育部に在学中、名古屋勉強会で知り合ったが集まります。作陶の現状を知ったうえでなにかできることはないか? と感じた仲間です。
皆バラバラのところに住んでいたので、オンラインでミーティングするのが比較的あたりまえな感じで、アイデアを出し合っていました。
ただいちばん大切なのは取引先として信用を得ること。これを実現するために、展示会などのアイデアを良く考えていたものです。

その一つが「盆(才)展」。
たまたま知り合った盆栽屋さんと名古屋市徳川園で盆栽展に仲間だった作家の陶器の鉢で盆栽作品を飾り、背景に現代アートを組み合わせた展示会を開催。評判が良かったことも手伝って合計3回開催することができました。
4回目は…コロナ禍で開催できず、そのまま現在に至っています。

そのほかのアイデアの一つで、僕がフリーランスの仕事でお世話になっている企業さんからあるものを作れないか? と相談され、既存製品の企画アイデアを提示する傍ら、バリエーションのひとつで陶器製のものを提案してみました。
実際に試作を作って、効果測定とリサーチ、社内プレゼンを通過できれば、正式な製品として高級商品を扱うカタログショップや通販の会社への紹介がほぼ決まっておりました。

効果に対しては、既存の陶器を使って実験をして、ほぼ問題がないことがわかり、作品事例を見せながら試作を待つばかりとなります。
同時に某オーディオメーカーからも声をかけていただき、高級ノベルティ向けにスピーカーの筐体にできないかとの相談もしてもらい、あとは試作に望むだけという体制が整います。

そのあたりから言われたのが、今のまま(個人事業主)では取引口座が開けないよと…。
当然立ち上げたばかりの組織の信用などゼロなので、あらゆるところと小さな取引を繰り返し、取引口座開設に挑まなくてはなりませんでした。
そして合同会社設立へ向かうのが2019年5月、実に令和元年の出来事です。

創業1ヶ月後に工房が潰れた⁉

令和元年6月4日早朝に工房横の国道からトレーラーが突っ込みました。

積み荷の砂利が工房を埋めたのと作業場が埋まりました。工房の建物はかなり傾き、作業所は潰れました。

CBCでニュース報道もされました。(左で潰れているのが作業場)

工房主は創業当時の仲間で、住居と住人は幸い無事。ドライバーも軽いけがで済んで死亡事故にはならなかったのが不幸中の幸い。
ただし工房主のショックは計り知れないものがありました。

さて…ぶっちゃけ途方に暮れました。
工房を建て直すにしても事故処理が終わらなければいけないですし、作陶する工房主本人の気力が戻らないといけません。
工房主本人を差し置いてデザインを進め、元々量産をお願いしようとしていた会社に試作を出しても良かったのですが、猛烈に落ち込んでいる工房主本人を差し置いてそのようなことをしてしまうと後々遺恨を残しそうです。

僕らは事故処理(保険会社との交渉や事故を起こした会社との交渉のサポート)を行いながら、他の小さな仕事をこなしながら取引を積み上げ、半年が経ちました。
その間工房主は…当時サラリーマンだったこともあり、会社が終わったあとと土日で交渉処理を進めつつ、事故を起こした会社が隣の空き家を借りてくれ、そこに工房の道具を運び込むなどをして時が経っていきました。
ところで半年、正確には6月から12月までなのですが、土日と祝日をを含んだ休日は26日間ありました。お盆休みも含めるとおおよそ1ヶ月あります。
物の移動と掃除、環境づくりにそこそこ時間はかかります。
なので自ら作ることは難しいと思いますが、一応9月ごろからオンライン会議で試作をどうするか聞いていました。
デザインだけ出して進めて良いのかどうか。しかし答えは曖昧でしたが。

さすがに待ってもらっても3ヶ月が限度

おいおい。最初の話はどうなった?
もちろん事故のことは伝え、工房の再建には少なくとも半年、再稼働までには1年ほどかかる旨は了解してもらいました。
ただ確実な話を3か月後にはしないといけません。
さて…僕らはどう返事をしようか悩みました。

〈つづく〉

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