歌を聴いている時だけは、他者の感情に飲み込まれて、普通になれている気がする。

他者の音と言葉に飲み込まれて、自分でなくなるのが全く怖くないのが、音楽だった。

音楽を真似て言葉を発するのは、苦ではなかった。

音楽だけが自分の心に落ちてくれる。

音楽を永遠に聞き続けることで、この身を生かし続けたい。

ヘッドホンをして、普通の言葉を心に流し続けることで、やっと心臓が脈打ち、全身に血が巡る気がする。

音楽が自分の心を普通にしてくれる。生かしてくれる。

祈りは空っぽをずっと聴いていた。

ずっと聴き続ければ、自分が壊れない気がした。

でも体が普通になろうと、普通に生きようと努力して、音楽を真似て言葉を発していく。

音楽が生き方を教えてくれる。

自分の不確証な、中途半端な生き方に、豊かな血を
通わせて、明日も生きようと思わせてくれる。

音楽を聴き続けると、閉じこもって動けなくなった体が、少しずつ動き始める。足が動くようになる。

明日は、久しぶりにカラオケに行きたい。

暗闇の中、防音扉を閉めて、光る画面を見つめて、言葉を発していたい。

音楽という他者に飲まれて、その中で生きていたいと思えるようになった。

一人の渦に飲まれて、何もわからなくなるのなら、

今、外に出なければならない。

だから私は、明日外に出て、遠くに行って、一人で普通の言葉を出す空間に行かなきゃならない。

それで普通になれた気になって、満足できるから。

明日が久しぶりに楽しみになる気がする。

好きな音楽を聞き直して、明日を望もう。