iDeCoの受け取り方について考えてみた話
夏にiDeCoを始めた話を書いた。iDeCoは税制上の優遇措置があり、お得に老後の資産形成ができる。
ただ受け取り時に注意しないと、思いのほか税金を払うことになるらしい。今後、制度自体が変わる可能性はあるけど、現時点制度での出口戦略を考えてみる。
①iDeCoの受け取り方と控除
iDeCoの受け取り方と控除は3つある。
・一時金として受け取って退職所得控除を受ける
・年金として受け取って公的年金等控除を受ける
・一時金と年金の併用で受け取って退職所得控除と公的年金等控除を受ける
受け取った金額がそのまま課税対象になるのではなく、そこから控除額を差し引いたりいろいろ計算した後の「所得」が課税対象になるので、どういった控除が受けられるかによって納める税金がかなり違ってくる。
②退職所得控除
退職金やiDeCoの一時金は受け取り額である「退職収入」に税金がかかるわけではなく、計算後の「退職所得」に対してかかる。退職所得は下記の計算式で求められる。
「退職所得=(退職収入-退職所得控除額)×1/2」
退職所得控除額は勤続年数によって変わり、勤続年数(またはiDeCoの加入期間)が長いほど控除額が大きい。
・勤続年数が20年以下の部分
40万円×勤続年数(20年で800万円)
・勤続年数が20年超の部分
70万円×(勤続年数-20年)
したがって
・22歳から60歳まで38年間勤務した場合(A)
800万円+70万円×(38-20)=2,060万円
・22歳から65歳まで43年間勤務した場合(B)
800万円+70万円×(43-20)=2,410万円
の退職控除が受けられる。
退職金とiDeCoの一時金をまとめて受けとるときは、この2つを合算して退職所得を求めればいい。
(A)の場合は退職金とiDeCoの一時金の合計額が2,060万円を超えると、(B)の場合は2,410万円を超えると税金がかかることになる。
(A)の場合で退職金とiDeCoの一時金の合計が3,000万円だとすると税金がかかる退職所得は
(3,000万円-2,060万円)×1/2=470万円となり、この470万円に対して税金がかけられることになる。
職場からの退職金とiDeCoの一時金の合計が退職所得控除の額を越えてしまうのであれば別々にもらったらいいのでは?とも思ったけどそう上手くはいかないらしい。
・iDeCoの一時金→退職金の順でもらう
iDeCoの一時金をもらってから5年経てば、それぞれの退職所得控除をMAXで使える。
・退職金→iDeCoの一時金の順でもらう
退職金をもらってから19年以上経てばそれぞれの退職所得控除をMAXで使える。
5年はまだわかるけど、老後に19年も待てない…全然現実的じゃない…
早期退職する場合はもらい方に気を付けた方がよさそうだ。
③公的年金等控除
公的年金控除も受給した年金全てに税金がかかるわけではなく、受け取り額から控除額を引いた額に税金がかかる。
課税所得は
収入額の合計×収入に応じた割合-控除額
で求めることができる。
収入にはiDeCoによる年金だけでなく、通常の公的年金も含まれるので、公的年金の受給が始まる65歳までに、受け取ってしまった方がよさそう。
65歳未満で公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合、
・年200万円年金として受給するのであれば
200万円×75%-27万5千円=122万5千円
・年300万円年金として受給するのであれば
300万円×75%-27万5千円=197万5千円
・年400万円年金として受給するのであれば
400万円×75%-27万5千円=272万5千円
が課税所得となる。
退職所得控除の控除額が大きかった分、公的年金等控除はちょっと物足りなく感じる。できるだけ一時金でもらって退職所得控除を使いたい。
④具体的に検討してみる
検討にあたり、もらえる退職金と一時金がどのくらいになりそうなのか見てみる。私は地方のしがない公務員なので退職金は地方公務員の退職手当を参考にすればよい。
令和3年の地方公務員の退職手当の平均額は全退職者で1,374万5千円、定年退職者で2,209万5千円となっている。
公務員の退職手当は何度も見直しがあっていて、年々支給額が下がっているので、
・60歳で定年退職した場合2,000万円
・定年が延びて65歳で定年退職した場合もひとまず2,000万円
・55歳で早期退職をした場合1,300万円
退職手当がもらえると仮定する。
iDeCoについては、毎月12,000円を年利5%で運用したとすると
・60歳まで運用した場合は約1,000万円
・65歳まで運用した場合は約1,300万円
となる。
つまり、
・60歳退職で退職手当とiDeCoを同時に受給するパターンa
退職手当2,000万円+iDeCo1,000万円=3,000万円
・65歳退職だけど60歳でiDeCoを受給してから退職手当をもらうパターンb
退職手当2,000万円+iDeCo1,000万円=3,000万円
・65歳退職で退職手当とiDeCoを同時に受給するパターンc
退職手当2,000万円+iDeCo1,500万円=3,500万円
・55歳早期退職で退職手当を受給してから60歳でiDeCoを受給するパターンd
退職手当1,300万円+iDeCo1,000万円=2,300万円
くらいがありえそうなパターンとなる。
長くなったので、次回の記事で実際にかかる税金について計算してみる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?