カネコアヤノの新譜について

 4月23日、カネコアヤノが『タオルケットは穏やかな』以来約1年3ヶ月ぶりとなる新曲『ラッキー/さびしくない』をリリースした。その直後から大きな話題を呼び、SNS上では多くの感想が寄せられた。「完全にサイケになってる」「ボーカルが遠い」「坂本慎太郎味が強い」「今カネコアヤノに最も影響を与えているのはbetcover!!」等、見ていて面白いしわからなくもないが、うわべでしか理解できていない部分もあるので、しっかり解析した上で、カネコアヤノの新譜及び音楽性の変化について述べていく。

 カネコアヤノは『タオルケットは穏やかな』で完全に「陰」に転向した。

 『タオルケットは穏やかな』には『光の方へ』や『栄えた街の』といった明るい曲がない。ジャケ写がモノクロだからとか(バンドメンバーが変わったから)とか単なるそういった理由ではなく、色が見えない。『祝祭』『燦々』『よすが』は降り注ぐ太陽と青空が見えるのだが、『タオルケットは穏やか』以降はずっと曇っている日々または、冬の夕焼け(空は濃いオレンジ色に覆われているが、街並みは暗く真っ黒である)から夜に入り完全に真っ暗になっていく時間帯を思わせ、全体的に翳りが見える。

 この感覚的な説明を音楽的な専門用語に言い換えると、フォーク・ロックやインディー・ロックからサイケデリック・ロックに変化したととれる。サイケの主な特徴としては

・曲の構成や調子、拍子の変化が複雑である
・歌詞の内容がシュールで複雑なものとなっている
・エレキギターでのハウリングやワウワウ、ディストーションが用いられることが多い
・エキゾチックな楽器が使われることが多い 等

 最近のカネコアヤノの楽曲の特徴をそのまま書いてあるように思える。そして「サイケデリック・ロック」と言えば、坂本慎太郎(ex.ゆらゆら帝国)を思い出さずにはいられない。

 カネコアヤノは坂本慎太郎とツーマンライブも行なったことがあり、彼からの影響を受けていない訳が無い。現在のカネコアヤノの音楽性はソロとなってからの坂本慎太郎や『Sweet Spot』『空洞です』頃の円熟して解散へと向かう後期のゆらゆら帝国に似ている。

 カネコアヤノの音楽はゆらゆら帝国で言うと『Sweet Spot』にまで辿り着いているのか。

 カネコアヤノが何を思い、何を聴き、何を考え、音楽を作り「最近はさびしくない」と歌うのか。それをわかりきるのは不可能だ。

 また、betcover!!という年下のアーティストから多大な影響を受け、音楽活動を邁進している事実が意外だったのだが、カネコアヤノを好んで聴く人は、betcover!!を聴いていることも多いし、イントロの感じもよく似ている。なんならカネコアヤノと柳瀬二郎は交際していて結婚したという情報もある。そうなると、前段落の3行の意味が大きく変わってくる。

 カネコアヤノの今後がとても楽しみである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?