見出し画像

日本で一番の居心地の良い歯科医院にしたい

 歯科医院と居心地のよさは相反する関係だと思います。ベルトコンベアみたいに横一列に並べられて、ガーガーキーキーうるさく、薬品臭い。妙にギラギラ眩しくて、緊張するし、みんなイライラしている。まるで工場のような場所です。私たち医療従事者は慣れているから気付きにくいのですが、普通に考えて異常な空間です。
 私たちが安心できる、居心地が良いと感じる場所ってなんだろう。思いを巡らせ、行き着いたのがこれです。

 竪穴式住居です!私たちのご先祖が何万年も愛用していた最高のデザインです。私たち日本人が落ち着くところは、このように小さくて木があるところだと思います。この中に隠れるように入って、小さな出入口から森を見ていたんだろうなー。

 そこで1階診療室には竪穴式住居をイメージして地窓を設置しました。地窓から小さな植栽が見えます。少しでも外と緑が見えるだけで心理的に落ち着くことができます。地窓は空間の重心を下げることができるため、狭い空間でも広く見せることができます。


 クリニックのドアは店舗用ではなく、住宅向けの木製ドアにしております(アルス製の高性能な木製ドアです)。外から建物の中を見ることができないため、最初に入るときに少し緊張感が生じます。この状態でドアを開けて、狭いと感じてしまうと不安感につながってしまいます。
 玄関からこの地窓がちらっと見えることで、空間に立体感が生まれ奥行きを感じることができます。また全体を見渡している感覚、外が見える安心感があるため、玄関から中に入った時に「ここは大丈夫だ」と安堵することができます。

 目線の先や手の触れる部分には、なるべく木を使うようにしています。ユニットを倒した時の天井、受付のカウンター、相談スペースの机。私たちは何万年も木でできた建物の中で暮らしていました。触るところ、見えるところに木があることで、温かみを感じ、安心感につながると考えています。構造材含めて、可能な限り埼玉県産の木材を使用しています。地元の木が地元に住まう人に適しているのではないでしょうか。

 私の担当した建築士さんは相当大変だったと思います。口うるさい施主で本当に申し訳なく思っておりますが、おかげで素晴らしい建築が完成しました。

ワタベデンタル

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?