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映画:『アリータ』感想

ネタバレとかありなので、閲覧の際は気を付けてね!



日本の漫画『銃夢』を原作に、CGと融合した実写映画化された本作。監督もジェイキャメということで、『アバター』のように実写とCGが高次元で融合した映像を見せてくれた。アリータもその例に漏れず、CGだけが浮いてしまうというようなことはなく、実写にすごく融合していた。とはいっても、一目見ればすぐにCGと分かるのだけど、なんか知らんが融合している感はある、という不思議な感覚だった。色々思うところがあり、長所と短所を述べていくが、先に長所からいってみよう。

CGだけでなくアクションもかなり気合が入っていて面白かった。そこらへんはさすがによくできている。登場キャラも、極端に体を機械化した、機械か人間か分からない感じが良くできていたと思う。ただ単純にCGのキャラと実写を融合させただけでなく、一人の人物の中でも実写部分とCG部分(機械の部分は多分CG)が融合しており、なかなかの技術だと感心した。最近はこういうCG技術はゲーム方面に向けられている。ところで、映画におけるCGは評判が分かれることが多い。ゲームだと最初から全部CGのため、CGをいくら使ってもかまわない。しかし映画でCGを使いすぎると「どうせCGだろ」と批判されてしまうことが多い。CGはなんでもできる反面、使い方次第では観客の興をそぐことにもなりかねない。その点でこのアリータは実写もCGもどちらも必要なものであり、批判をうまくかわせていると思った。

そしてもう一つが、ちゃんと戦いを描写していたということ。サイボーグとはいえ、けっこうバラバラにしたり、腕を引きちぎったり、色んな暴力シーンが出てくる。しかしそれを(ほぼ)逃げずに描いてくれているのは、最近の規制バリバリのコンテンツ産業において挑戦的だと思う。まあ、この程度で挑戦的ってどんだけPCに毒されてんだよって思うわけだけど・・・とにかく、アクションが結構途切れることなく連続して続いており、二時間の映画でとりあえずつまらないとか、ダレルとかいったことはあまりなかった。アクアマンと一番違うところはそこである。

さて、短所について述べていたい。まず思いつくのは、色んな要素を詰め込み過ぎ、ということである。恋愛、アクション、格闘、戦争、貧富の差、人間とサイボーグの隔たり、レーススポーツ、記憶喪失・・・ちょっと要素が多すぎではないだろうか? 主人公アリータが失われた記憶を探す物語が一応の主軸ではあるんだけど、その主軸もなんだか弱く、過去の記憶で分かるのはアリータが戦闘用のアンドロイドであったことくらいである。戦争の結果、一つだけの空中都市が残り、それだけが世界で唯一の空中都市として機能している。この空中都市の設定も、おそらく「何も考えてないんだろうなぁ~・・・」と思えるくらいなにも具体的なことは出てこないので、どうにものめりこめない。結局アリータの記憶はなんだったのか、それは映画を見ても、ほぼ分からないままだろう。

そして一番謎なのが恋愛要素である。アンドロイドと人間が種族を乗り越えて恋愛する話・・・でもなく、アリータの好きな男は瀕死の重傷を負って、助かるためにサイボーグ化してしまう。その時点で「種族の壁を乗り越えた恋愛」というテーマはなくなってしまう。そしてサイボーグ化した彼ピッピろうことか空中都市に登っていくのだが、その途中で都市側の防御用の罠が発動、アリータが必死になって助けようとするも、最後は空中都市から落下死してしまう。

そしてここが問題のシーンなのだが、彼ピッピが落下死したところで、思わず笑ってしまった。というのもこのシーン、どう見てもタイタニックのラストでデカプリオが海の底に沈んでいくシーンを彷彿とさせるからだ。生き残った女が落下するイケメンを眺める構図など、まるで同じである。タイタニックを見た人なら、ぜひとも見て欲しい。きっと一緒やん!ってなると思う。そう考えると、貧富の差とか恋愛とか、こういう部分は相当タイタニックと酷似しているな、ということが分かってしまう。

恋愛描写などはともかくベッタベタで、こんなもんにCG使って金かけるくらいならもっと色んなアクションや格闘を盛り込んで欲しかった。もっとゴリゴリのアクション映画で良かったように思うが、どうだろうか。アバターは恋愛要素がちゃんと主人公の行動の動機にもなっていたし、結末にも影響していた。アリータはそこらへんが少し弱く、アンドロイドの恋愛を見せたかったのか、アクションを際立たせるために必要だったのか、何かよくわからない感じである。これは一つ目で述べた「色んな要素詰め込み過ぎ」問題とリンクしていて、結局メインのテーマがぼやけてしまったように思える。

あと、アリータの目が大き過ぎかなって思った。岡田斗司夫が言っていたが、ちょっと賛同してしまった。あとは町の人が義体をつけすぎ。その割に銃は禁止されているのも納得できない。人体の代わりになるような高度な義体技術があるなら、銃なんていう原始的な構造のものなど簡単に作れるはずだ。違法な改造銃などで回っていてもおかしくないであろう。その辺のちょっと考えればすぐに見えてしまう矛盾も残念だった。原作の『銃夢』自体が相当古い作品なので、時代の進歩につれて時代遅れになってしまう部分は当然あるだろう。そういう部分を、原作を破壊しないように時代に合わせてアレンジするかが見たかったのだが、意外にも原作を踏襲しているようで、もうちょっとそこらへんはひねっても良かったのでは、と思っている。

総じて、いい点も多いが、残念な点や微妙な点もそれなりにある。映画館で軽く見る程度には、飛び回るアリータが迫力あって気持ちいいのだが、そこ以外で見るべきところが特にないというのがなぁ・・・

まあ、最近のアクション映画の中ではまだよく出ている方なので、気になるくらいなら見るのをオススメする。

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