渡辺浩平/watanabekohe

1997年生まれの20歳です。 札幌在住。Twitter @manu26102

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最近の記事

2018.8.19

夜中に目を覚ます。 季節は秋のはじめ。暑さや湿気で肌が蒸れて寝付けないわけではないし、睡眠リズムが崩れるほど長い昼寝をしたわけでもない。 原因は視界の端にあった。 白い天井の端、視界のぎりぎりのところに何かが居る。しかし僕にはそれを完全に捉えることができない。目玉を動かして視界を移動させても天井のそれはまったく同じ方向に同じ距離だけ移動する。あたかもそれが生まれつき自分の瞳についている傷か汚れなのだという錯覚に陥る。 目を瞑る、真っ暗な世界に自らを没入させようと試みる

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    • 「小林の話」渡辺浩平 https://drive.google.com/file/d/1mAf2Ysh12BcgyNZFX2U-sjOTXjqniV3r/view?usp=drivesdk

      • 「少年少女反逆団」

        *  片想いしていた子の三回忌でカニグラタンを六つも食べるべきではなかったのです。僕はトイレの便器に顔を入れ喉に指を突込みながら後悔しました。ああ、ひどい。便器の水たまりにさっきまで胃にあった僕の中身が浮かんでいます。そこに涙が一粒こぼれ落ちて波紋が広がりました。とてもきれいです。全体は白濁としているけれど、その中に薄ら赤い線が見えます。それがまさしく紅ズワイガニです。「北海道産紅ズワイガニのグラタン」さっき見たお品書きにそう書いてありました。僕はその名前と味に魅了され、会場

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        • 「青い壁」

          *  僕が青い壁の存在を知ったのは会社に向かう朝の車の中であり、その日は雲ひとつない本物の快晴であった。年の2/3以上は雨か曇りという気候が特徴のこの町で、あそこまでの青空を見るのはかなり稀なことだった。十数年住んでいる人間でもなかなか経験するのことない青だと思う。  僕は長い渋滞の網を抜けるため、地元民も知らないような素晴らしい抜け道を通っていた。その時である、意識せずに流していたラジオのDJが(用意された原稿以外の話は全く退屈な男だ)、青い壁の存在を知らせてくれた。

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          「春のキルミイ」

           *  春が近づいてくるということは、春の匂いが近づいて来るということでもあり、春の匂いが近づいて来るということは、僕の体調が優れなくなってくるということでもある。  幸いなことに生まれ持った大きな病気もなく、今これを書いている25歳までは至って健康体で生きてきた僕が、どうして春の匂いを嗅ぐたびに(春の匂いなどという平凡なもので)体調を悪くし、市内で最も大きな病院の最上階のベットに横たわっているのだろうか(それも大げさな人工呼吸器を付けられた状態で)。そして、これはこの先

          「春のキルミイ」