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映画音楽を作る上で考えておきたい事、つまずきポイント


大学で映画音楽を教えています。

授業内で扱う内容は大きくは下記のように4つに分類されます。

  1. 映画音楽ならではのオーケストレーション

  2. 音楽で物語を効果的に演出する為に、音楽の始まりと終わりのタイミングはどこが適切か

  3. 映像と音楽の距離感

  4. 上記3つを踏まえた上でのシーンに合わせた作曲

まあ、ここから派生して、効果的な打ち込み表現、生楽器の効果的な取り入れ方、TV、映画、時代、国による表現の違いなど、ここには書ききれないほどの色々な事を授業の中で学生と共に考えています。

映画音楽ならではのオーケストレーション

映画には台詞があり、台詞が聞こえないとダメなんです。当たり前だ。
メロディが動きまくると台詞が耳に入ってこなくなる事が多いので、映画音楽に於いてはメロディをあまり饒舌にしない事が多いです。それでいて表情、感情豊かな音楽である必要がある訳です。
メロディを饒舌にできないのであれば、どうするか。
内声をしっかり動かして豊かな表現を生み出すんですね。

内声というのはメロディとベースの間を動く音の事です。肉まんでいうところの、餡です。
表面はツルッとしていても、中身が超美味いってやつです。

音楽の始まりと終わりのタイミングはどこが適切か

音楽は人の心に一瞬で侵入して、聴く人の感情を自在に操ってしまうという、すごい効力があります。
それ故に、不用意に音楽を入れてしまうと、物語をミスリードしてしまいますし、抜群のタイミングで入れると見ている人を一気に物語の世界に引き込み、登場人物と同じ感情を抱かせる事ができる訳です。
また強調したい台詞の前でそれまで鳴っていた音楽をフッと消すと、その台詞は観ている人の心にスーッと浸透していきます。
どういう音楽を入れるかも大事ですが、"どこに音楽を入れるかを考えられる"事がとても大事なんです。

映像と音楽の距離感

とあるシーンの音楽を作曲する時、その音楽が誰目線のものであるのかは曲を書き始める前に考えておく必要があります。

  • シーンの中に登場している人物と同じ目線(気持ちに寄り添った。距離感:近い)

  • シーンには登場していない、そこに居ない誰かの目線(気持ち代弁。距離感:つかず離れず)

  • 神目線(物語全体を俯瞰した大きな表現、或いは伏線。距離感:遠い)

  • その他目線…(シーンのノリをよくしたり、ちょっとしたツナギだったり。距離感:色々)


上記3つを踏まえた上でのシーンに合わせた作曲

どういう楽器を選んで、どういう曲を書けば、そのシーンで伝えたい事が観ている人に伝わるのか、そこに向かって曲を書く必要があります。素敵な曲を書けばいい訳じゃない。
つまり、難しいんです…

学生のつまずきポイント

・オーケストレーション
これは大丈夫です。

・音楽のタイミング
つまずく学生が多いです。実習を繰り返すうちに徐々に理解できてきます。
毎年、数人は何も教えてないのに、このタイミングを完璧に分かっている学生がいます。完全に向いていますが、そういう学生が映画音楽の道に進むかと言えば、そうでもないところが面白いところ。

・映像と音楽の距離感
つまずく学生が多いです。最初から自在に距離感を操れる学生はほとんど居ませんが、実習を繰り返すうちに徐々に理解できていきます。

つまずきの要因

なんなんでしょう。読解力がとか、早送り視聴がとか、色々とこじつけられそうですけど、実際のところ分かりません。

映画音楽が好き、やりたい!という学生はこの辺りの理解が速いです。理解できるから、好きだし、自分でもやってみたいって思うものなんでしょうね。


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