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2022年6月 名古屋ご挨拶旅(と、クリエーターズマーケットの出展レポ)

 初日
 朝6時に目覚め、商売道具の詰まったどでかいキャリーケースをころころ言わせながら、東京駅へ。ぷらっとこだまの切符を受け取り、東海道新幹線弁当なる沿線の名物を詰め込んだ駅弁を購入し、それに乗り込み旅のはじまりです。

 いつもなら、そのままクリマの会場に向かうのだけれど、本日は金曜日。イベント前日入りして、名古屋を巡ろうと予定を組んでおりました。といっても観光をするわけでなく、今までお取引をいただいたお店へのご挨拶旅です。
 というわけで、駅弁を食べ終え(茶飯が美味かった)、何度目かの名古屋駅に到着。明朝、回収がしやすい駅スグの地下街のロッカーにキャリーを預ける。 そうして、まずは市営地下鉄東山線に乗り込み、○ヶ丘というネーミングの元祖はどこなんだろう、と考えながら星ヶ丘駅へ。駅直結、三越の五階。リブレット三越星ヶ丘店さんへ(金山店さんへは昨年末お邪魔しました)。10時半頃と、まだ恐らく混雑はしていないだろう時間帯を選んだので、めっちゃ忙しそうな感じではないけれど、やっぱり品出しをしている店員さんに声を掛けるのは気が引けるものです。が、ぐずぐずしてたら始まらんので、漫画コーナーにいらした方にご挨拶。自分の作品が飾られているラックを示しながら「あちらでポストカードを扱っていただいている小説工房わたなべの~」とお声掛けすると、「あぁ!」という感じで、にこやかに店長さんへと取り次いでいただいた。そうしてこちらもにこやかにレジカウンターから出てこられる。名刺のご交換。店長さんと売り場でしばし話し込む(お取引いただいているのだから敬称は様が適切だと思うが、少なくともこの文面では何だか畏まるのは違う気がするので「さん」とさせていただきます。個人名をここに記すのも何だか違うし)。金山店同様、コースターのが売れているということ。対して透明小説=ポストカードはゆっくりだとか。ポスカをOPP袋に納入したのは自分だが、お客さんには光の反射とインクの質感を感じてもらいたいから、商品は裸のほうがいいんじゃないかなぁ、といったことを売り場を見ながら思う(せっかくお取引いただいているのだから、何かしらご協力してお店の売上げに少しでも貢献したいなぁ、と)。なお、店長さんよりオススメの名古屋めしを伺ったところ「ひつまぶし」とのことでした。
 そんなわけで売り場の写真もいくらか撮らせてもらい、お店をあとにする。このまま地下鉄の予定なんだけれど、まだ名古屋に着いてからロクに外を見ていないので、わざわざ地上にのぼって、洒落た感じのお店の並びを眺めて、ついでに財布に現金がなかったから銀行で金を下ろす。やっぱ旅は、空と町並みを感じなくては。

 そうして地下鉄で元来た道を戻り、今池駅で乗り換え、今度は桜本町へ。地上を歩いて、名鉄本線に電車を乗り換えます。10分程度の歩きだったけれど、知らない町並みを歩くのは、やっぱり楽しいものです。自転車置き場でさえ、何だか足を止めて眺めたくなる。と、桜駅に到着。ホームがこっちとあっちで2本の、ひなびた感じ。というか暑い。昼前なのに学生が多いのはどういうわけだろう。
 さて、どこか懐かしい真っ赤な車両に揺られて来たのは、有松駅。有松は宿場町ではないけれど、東海道中の茶屋集落で、絞り染めが有名なのだとか。伝統的建造物もいくつか残っていて、まさに自分の好みの町並みではあるのだけれど、今日はあまり観光できる時間がありません。というわけで、さっそく駅前のKONMASAビルへご挨拶。
 KONMASAさんは、有松出身の現代アーティストで、その名のビルにはカフェとアートギャラリーがあり、オープンから1000日目に諸行無常を体感するためKONMASAビルは消滅する、とのこと。アーティスト個人がお店をやっているって話は(自分が疎いかもだけかもしらんが)聞いたことがないし、そもそも消滅が前提のお店というのが、何とも。
 というわけで、KONMASAさん自身がお一人でお店を切り盛りしていて、ご挨拶に応じて下さる。まずは腹が減ったので一階のカフェで、高級な梅茶漬けをいただくことに。調理の間、一階を見て回る。コースター小説発見でござい(ありがとうございます)。他のアーティストが作ったKONMASAさんをテーマにした感じの作品が陳列されている。タンクトップやら、ロウソクやら。で、再び着席して、注がれるほうじ茶を眺め、お茶漬けをいただく。梅はもちろん、海苔も大葉もたっぷり。セットのお茶も好きに選べて、ダージリンのアイスティーを選んだが、これまた美味かった。最後にシフォンケーキ。ほっとします。そんな感じで食べながら、KONMASAさんと会話に興じる。

 ご自身の来歴のこと。アーティストとしての出発点(とある美術作品に感銘を受けたというお話だったが、そのときの感動がリアルに伝わってきました)。今後の構想。恩返し。親孝行。諸行無常。色即是空。空即是色。
 正直なところ、こちらのお店に訪ねるまでは、KONMASAさんのイメージは下記の通りで、

 まるでどういう人物なのか想像がつかず、駅からビルまで結構緊張していたのでした。が、色々と話しているうちに気づいたのだけれど、この人のこと好きだなぁ、と素朴に思いました。等身大の人間を感じるというか、上記の写真からだとわかりづらいかもだけど、作品に対してとても真面目――というより、真剣だということが話を通じて、とても良く伝わってきました。だから自然と、自分はどうなんだろう、ということも考えます。

 お店に飾られている他の方の作品についても解説して下さって、地元中学校の美術部が作った立体的な絵や(毎度ではないだろうけれど、講師をやっているといったことも話してました)、地元有松の絞り作家さんのコンクリート作品も。

(話が脱線するけれど、今回の訪問も含めて、現代アートの鑑賞に際して思うのは、「よく分からん」「理解できない」といって思考を投げ出すのではなく、これを作った人は真剣なんだという前提で、作品を鑑賞することなんじゃないかなぁ、と。真剣だという前提があれば、どういう意図があるんだろうと、思考を費やします。考え続けます。そうして自分なりの理解に至ったとき、はっと気づくことがある。それこそが、現代アートなんじゃないかと。閑話休題)

 そうして一階奥にある瞑想をするための真っ暗な部屋「月の間」を見せて下さる。中で映像作品も。KONMASAさんが仰っていた「修行」を体現しているようで。あとは階上のギャラリーも拝見させていただく。廃棄されたロボットに千日間待つことを命じた記録を展示した、写真展。3階は一転暗い部屋で、飾られている絵に、スマホでライトを当てると、文字が浮かぶといった仕掛け。ムンクの叫びのような自画像の涅槃図。4階はKONMASAさんの象徴とも言えるタンクトップが飾られている。このあとの予定が詰まっていて、少しばかりに駆け足になってしまったのが反省点。江戸時代の町並みも巡れてないし、有松、また来ましょう。
 KONMASAさんに長々と滞在させてもらった感謝を伝え、またご連絡しますとKONMASAビルをあとにする。とても楽しい時間を過ごすことができました。

(ちなみに瞑想を体感した人には、一階の床面に一筆何かを書いてもらっているということでマジックを手渡される。多くの方が自分の名前を書いていて、じゃあ俺はどうしようと考え、帰り間際、自分の座っていた椅子の下に、「名」と一文字書く。自分には――というか、人間には本来名前はない。あるのはその存在ばかり。だから、○やら空白を書いても良かったのだけれど、そのときは「これが私の名です」ということで「名」と書き残しました。無論、これもお店の消滅とともに消える。この行為も諸行無常の一環である)

 さて、お次は北へと移動します。真っ赤な名鉄本線に乗り込み、名古屋を過ぎて一宮市へ。一宮駅で男子高校生が駅ピアノを録音じゃないの!?と思うくらい華麗に弾いていて、三度見する。
 で、一宮市。ご挨拶のお店まではバスに乗ればすぐなのだけれど、今旅してるし、3kmだし、足で行っちまいましょうかと、蒸し暑い中膝栗毛。広い道路を行くのがわかりやすいのだけれど、その土地の雰囲気が伝わって来づらいので、わざと町の中を歩いて行く。そしたら「メリヤス検査所」といったちと寂れた看板が。門が閉じられ、中は草木がぼうぼう。もうやっていないのだろうか。メリヤス。確か生地のことだよなぁ、昔の小説でたまに見かける言葉だよなぁ、とスマホで検索して、やはり編み物の古い呼び名と知る。で、その検査所がある。ということは、一宮という町は古くから編み物の盛んな町だったんだいうことが見えてくる。その他にもドレスメーカー女学院と看板のついた、今でいうアパートっぽい外観の建物も。きっと、かつてはドレス縫製を教える学校だった(こっちも今はやってなさそうだった)。ネットや何かの冊子で知るのではなく、やっぱり自分の足でその町のことを知っていくのが楽しい。
 途中、神社=神明社にも立ち寄る(伊勢神宮の心霊を勧請した神社)。この神明社、前回木曽路を歩いたときにもちらほらと見かけたけれど、特に東海地方で信仰が篤かったのだろうか(まぁ、伊勢も東海だし)。なんてことを思いながら参拝。鳥居の脇には百度石なんてのもあった(あとから調べたら、百度詣りする際の起点、要はスタート地点となる石なのだとか)。

 さて、少しばかり幹線道路を行き、「Camp Shop Lantern」に到着。木造ガラス張りの洒落たアウトドアショップです。オーナーにご挨拶。レジ台にコースター小説を発見(ありがとうございます)。こちらは以前noteでもご紹介しましたが、お洒落だったり少し捻りが加えられていたりといったキャンプ道具が集められた、アウトドアのセレクトショップといった感じのお店です。こちらも元繊維工場だったようで、外観はノコギリ屋根なのだとか(うろ覚えだけれど、一宮にはかつて8000ものノコギリ屋根があったとか)。同じ元工場内は、今年の愛知国際芸術祭の会場にもなっているようで、まだフル稼働って感じじゃなかったけれど、ちょっとしたギャラリーもありました。というわけで、一度お店を出て元工場内をぐるり。何かの展示を見るよりは、工場の名残である巨大な(多分)織機や、糸巻機なんかに目を惹かれておりました。そうしてお店に戻り、オーナーさんとしばしご歓談。キャンプと小説で、何かできないだろうか、なんてことを。

 夕刻。お腹も少し減ってきたので、ではそろそろと握手を交わしお店をあとにする。帰りは流石にバスで駅まで。色々と歩き回った一日だった。明日からクリマでの商いが始まるのだけれど、旅の目的はもうほとんど終えたような心地だった。そうして名古屋まで戻ってくる。名鉄百貨店の巨大広告人形、ナナちゃん人形にご挨拶。で、ホテルに入る前の夕飯。昨年、定休日だったために入れなかった鰻屋「うな善」に今度こそ入る。前回はひつまぶしを注文して、三通りの食べ方を試したけれど、やっぱ普通に食べるのが一番美味いわ、と思ったので、鰻丼を頼む。それだけじゃ格好つかないし、まぁ疲れたので瓶ビールも注文。タブレットの背をメニュー立てに預け、モンテ・クリスト伯を読みながら鰻を待つ。で、おまちどおさま。うん。やはりめちゃ美味。感動しますわ。今まで食べた鰻の中でも、二本指に入りますわ(三島の桜屋も美味い)。ただこちらのお店は、昔から関東風の焼き方がメインのようなので、今度はそれを試してみましょう(どうにも東京からわざわざ名古屋に来て、関東風を頼むというのが、勿体ない感がある)。ごちそうさまでした!

 さて、少し歩いてホテルにイン。これまでは駅から少し離れた温泉ホテルを利用していたけれど、今回は少し近場にいたしました。ウェルカムドリンクに生ビールが無料とのことだったが、酒はもう別にいいやでアイスクリームをいただく。少し狭いけれど、大浴場で足を伸ばして今日の疲れを癒す。そうして床に就くが、今日のご挨拶まわりがなかなかに楽しくて、特にKONMASAさんのお話に、考えるところが多く、ちょっと目が冴えていました。
 そうして眠りについたら、変な夢を見る。道を歩いていて、まぁとある汚物を踏んで、それがぴしゃっと跳ねて服にこびりついたのだけれど、近くの見知らぬ家で水道を借りて汚れを落とそうとするが落ちない。ので、その家の人が白いスプレーを汚れを覆うようにぶっかけてくれ、即座に乾いて、塗布された薬剤を端から摘まむと、見事汚れと一緒にペリリと剥がれた、なんて夢を見る。
 で、夜中に起きて、今の夢は何だったんだろうと考え、そもそもそういう汚れの剥がし方を俺は知らない、ということに気づく。実際にそんな汚れの対処方法があるかは知らないけれど、自分の知らない手段が、夢の中で示された、ということに驚きを覚える。
 夢って、自分の過去の記憶や感情が入り乱れて再構築されたものだと思っていたが、自分の未知の実用的な方法が出てくる、なんてことあるのかと考え、これまた面白くて眠れなくなる。いやはや。

 2日目、3日目(クリマの出展レポ)
 ささやかなバイキングで腹を満たし、ナナちゃん人形にご挨拶して、クリマ会場のポートメッセ名古屋へ。まぁ、旅日記のようにこまごまつらつらと綴るようなことでもないと思うので簡単に記すけれど、売上げ的にはもちっと伸びて欲しかったがそれが主目的ではないので、楽しかったし、まずはそれでOK。こういったイベントに継続的に参加するにつれ、顔見知りも増えてきた。クリマのジャンルごとのブースの割り当ても見えてきて、自分が申し込んだら大体どの位置になるのかわかってきた(今の位置は、人通りは多いが、光を背にしてしまうのよね)。実は新作の小説のしおりも用意していたのだが、東京で受け取ったときに印刷ミスがあり、刷り直し分をホテルに届くようにして2日目の夜に受け取ったのだけれど、これまた印刷ミスがあった、ということに東京に戻ってから気づく(これは別途、投稿いたいしますが無償で刷り直し分のお届けを承ります)。
 なお三度目の名古屋なのにまだ手羽先を食べてなかったので、2日目の夜、手羽先居酒屋に行ったら、カウンターも含めて満席と言われ、驚く。仕方がないので目についた担々麺屋に行ったら、めちゃ美味くて感動する。
 ホテルとしては今まで泊まった温泉ホテルのほうが満足度は高かったかなぁ。風呂もそうだけれど、朝食がほんと美味しくて、旅の宿は朝食も大事なんだなぁと今になって感じる。それとベッドが体に合わなかったみたいで、寝起きに腹筋が痛くなるというのを二日続けて味わう。
 というか前回は、クリマを終えて木曽路を旅してたんだから、ほんと楽しい旅を企画してたもんだとクリマ中に何度か思い返す(今回は終わったら、即東京に帰りました)。
 とまぁ、こんなところでしょうか。初日のご挨拶旅も含めて、楽しい名古屋でした。次はもっとゆっくり巡りたいものです。それでは。


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