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FYI.15 働き方改革とNP(ナースプラクティショナー)

国が推し進めようとしている、医師の働き方改革。端的に言えば、医師の長時間労働是正に向けた取り組みで、その1つにタスクシフト/シェアがあります。医師が抱える膨大な仕事の中で、他職種が担えるものは積極的に移管していこうというもので、その主な担い手の中でNP(Nurse Practitioner : 診療看護師)が注目されています。

NPとは、「日本 NP 教育大学院協議会が認める NP 教育課程を修了し、本協議会が実施する NP 資格認定試験に合格した者で、患者の QOL 向上のために医師や多職種と連携・協働し、倫理的かつ科学的根拠に基づき一定レベルの診療を行うことができる看護師」とされています。看護師のスペシャリストとしては、日本看護協会が認定する認定看護師や専門看護師がすでにありますが、それらよりも、より診療に関わる部分での看護師の裁量権を認めようとするものです。米国など他国では、医師の診療補助のほか一部診断、処方、投薬などがNPに認められている所もありますが、日本では「医師の指示のもと」という原則があり、処方などは認められていません。

今年の2月に行われた内閣府規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキンググループで、医師・看護師のタスクシェアの観点からもNPを国家資格にしてはという提案がありました。しかし、「わざわざNPを国家資格にしなくても、現行の特定行為研修を推進するなどすればよいではないか」などと日本医師会などが反対しました。5月24日には、在宅医療におけるNP制度創設を強く懸念する提言が、やはり日本医師会などから出されました。

個人的にはそのような懸念も理解はできますが、今後、ますます需要が拡大する在宅医療の提供体制を整えるために、医師だけでは対応しきれないとなれば、NPの導入は避けられないのではないかと思うところです。例えば、「特定行為に係る看護師」は「10年間で10万人育成」という目標を掲げて2015年から国が育成を始めていますが、昨年9月時点で研修修了者は6324人のみです。また、今回のコロナ禍で多くの人が在宅療養を強いられる事態が生じた時に、現状の在宅医療体制の問題が露呈したのではないかと思います。ここに具体的なテコ入れのプランを示せなければ、国民としては「いざという時に駆けつけてくれる医師がいない状況が続くなら、NPでも駆けつけてくれるほうが有難い」という気持ちになるのではないでしょうか。

4月から週に1回、患者相談窓口に立つようになったのですが、そこで、高齢の患者さんなどから通院が大きな負担になっているという声をチラホラと伺います。外来受診のために病院に来て、院内で移動中に転倒しそうになった、待ち時間が長く辛い、といった話を伺うたびに、医療ニーズがあるのに自力で通院できずに困っている患者さんが、すでに地域の中でかなりいるのではないかと思うこの頃です。

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