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[2] F1エンジニアにも種類がたくさんある

F1エンジニアに憧れる人へ。実際に目指してきた経験を元に、F1に憧れる人へ連載を始めました。筆者は:日本の高校→イギリスの大学→英F1チームインターン(2017-18)等してました。
・収録マガジン:「F1で働く
・前回記事「[1] F1エンジニアになるのが「難しい」と言われる4つの理由と、その妥当性
・毎週日曜更新予定!

こんにちは、わたぽんです。
今日はF1エンジニアとは何をしているのかについて。


F1チームで働いてみたいと考えた時に、どうしても以下の三つにその対象が絞られてしまう傾向にあります。

・F1ドライバー
・F1エンジニア&メカニック
・F1チームオーナー

この内、F1ドライバーとチームオーナーは異次元なので省くと、自然と「F1で働くにはエンジニアやメカニックになるしかない」となります。だからかな、よく「文系でもF1で働けますか?」という質問をいただきます。答えから言うと文系でも仕事はあります。が、今はエンジニアに絞っているので、いわゆる"文系職"についてはまた別記事でまとめますね!

エンジニアとメカニックの違いについては、知っている方も多いかと思います。エンジニアが設計等をして、メカニックが実際に製造したり、組み立てたりするんですよね。これは調べるとネットで既に出ています。


では、F1のエンジニアってなんですか?
あるいは、あなたがF1のエンジニアに憧れているとしても、具体的になって何をしたいのですか?

こう聞くと、詰まったり、答えがあやふやになる人が出てきます。F1エンジニアになりたいと言っても、F1エンジニアにも色々ある。結構幅が広いんです。だからそもそも「F1エンジニアとは何者なのか」ハッキリ把握しきれていない人もいるんじゃないでしょうか? 

というわけで、今回はF1のエンジニアの職について、分解分解。


F1エンジニアの立ち位置的なもの

F1のエンジニアって、現代のF1レース結果への影響力の大きさから、時々神格化されてしまってる時があります。僕もしていました。エンジニアが良ければ、全て良い、みたいな。でも結局は、F1エンジニアはF1全体における駒なんですよね。その点はしっかり認識しておいてください。F1チーム内でも、主役はあくまでドライバーであって、エンジニアではない。エンジニアは速いF1マシンを設計し、レースでドライバーが全力を発揮して勝てるように考える、サポート役です。

とはいえ、F1エンジニアのレース結果への影響力が小さくないことは確か。発想一つで、順位を上げられる。逆にちょっと考えをミスれば、それもレース結果となって現れる。そんな職業です。


F1エンジニアの種類

よくある分け方はこんな感じでしょう:

・空力担当
・パワートレイン担当
・サスペンション担当
・シャシー担当

僕もパーツごとに分けようかなと思ったのですが、それってあまり意味ないんですよね。みんな知ってるもん。それに、"車を作る"だけがF1エンジニアの仕事ではありません。

それよりも、それぞれの担当領域で、どのような分野があるのかを紹介します。実際に仕事として考える時、得意パーツだけじゃなく、自分の得意な"技"も重要になるからです。大きく5つに分けられるかと思います。

(1) 設計
(2) シミュレーション
(3) 実験
(4) データ分析・トラック分析
(5) レースエンジニア職

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(1) 設計

そのままですね。笑
F1マシンの設計をしていきます。頭の中にある案を、3D CAD(Computational Aided Design)ツール上、あるいは設計図上で形描いていくのがその役割。

車以外のものを設計する仕事もあります。パーツを作るための型や治具、もしくは開発やその他仕事のためのツール開発等のことです。

(2) シミュレーション

数ある案や形状を、パソコン上でシミュレーションテストする役割です。シミュレーションと一言に言っても、その中身は複雑。例えば空力ではCFDという分析ソフトを使うのですが、その設定方法によって分析結果は簡単に変わってしまいます。だから条件設定や計算方法を綿密に理解し、コントロールできなきゃいけない。プログラミングやソフトウェアの知識も豊富に必要なこともあり、シミュレーション担当それだけで一つの役職となりえます。

(3) 実験

実験内容や規模にもよりますが、実験を専門にする仕事もあります。エアロで言えば、風洞担当エンジニアという職がありますね。R&D(Research & Development)もここに含まれる人が多いです。

余談ですが、今年Experimental methods for aerodynamics(空気力学に関する実験方法)という講義を大学で受講していました。その中で教わったことは、「どの実験方法も完璧ではない」ということ。F1の場合、実際にサーキットで起こっていることとは違うことが、実験場では起こっています。それぞれの実験方法に利点、制限があるので、それを専門的に扱う人も必要となるのです。(先に挙げたシミュレーションも、全ての計算・分析モデルは完璧ではないので、その意味では似ていますね。)

(4) データ分析・トラック分析

データ分析・トラック分析。どちらも「分析が仕事」。例えば各コーナーでの車の挙動や、レース戦略についての分析ですね。(だからストラテジスト職やパフォーマンスエンジニア職も含んでいいかな。)
実際に何かを設計するというより、作られたF1マシンを元に、そのパフォーマンスを最適化することがその仕事です。工学と同時に、高い統計分析能力なんかが重視されます。

(5) レースエンジニア職

「車のパフォーマンスを最適化する」…その意味ではレースエンジニア職も同じなのですが、レースエンジニアには他とは大きく違う役割があります。それが、「ドライバーとの主要な接点となる」ということです。ドライバーとの密なコミュニケーションが求められる、ある意味最もスポーツらしいところ。多分、日本でF1エンジニアと言った時に、このレースエンジニアを想像してる人が多いかなと思います。無線通信でドライバーと話してみたいですもんね。笑

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仕事場所

次に仕事場所。これは長くなるので別記事でしっかり書こうかと考えているのですが、ここでもかるーく触れておきます。

エンジニアの仕事場所は、主に二つです。

・サーキット
・オフィス

世の中の他の仕事との大きな違いは、サーキットが仕事場となることでしょう。

しかし、全員がサーキットで働けるわけではありません。レギュレーションで決められています。残りの人達はみんなどこかのオフィスで働くことになります。サーキットで働くことに憧れる人が多いのも分かりますが、みんながみんな、サーキットへ行けるわけではないのを覚えておいてください。サーキットで働くには、それ相応のスキル・能力・役割が必要とされます。僕が言えることは、「オフィスベースの仕事とサーキットベースの仕事を、一緒にしてはいけない」ということです。



F1を目指す人へのTips

今回は簡単に言うと、「F1エンジニアとは?」への答えとなります。取り上げたのは、

・F1のエンジニアの立ち位置=サポート役だけど主役級の働き
・エンジニアの種類5つ
  (1) 設計
  (2) シミュレーション
  (3) 実験
  (4) データ分析・トラック分析
  (5) レースエンジニア職
・仕事場所…オフィスとサーキットは違う


[1] F1エンジニアになるのが「難しい」と言われる4つの理由と、その妥当性』に引き続き、どこを目指すのかに注力。少しは目指す先が見えてきたでしょうか。


次回も(もう一つだけ!)F1エンジニアの仕事について書きます。華やかではない部分って、あまり紹介されないでしょ?

お楽しみに!


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