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「雑草、どれ〜?」

玄関先で仕入れた花材のコンディショニングをしていると、時間を持て余した下の子が「じゃっしょう取りしゅる!」(雑草取りする!)と力強く宣言しながら出てきた。手には食材保存用のビニール袋をかぶせている。以前買ってあげた子供用軍手はみつからなかったらしい。そこまでしたいのか、雑草取り。そして一言

「じゃっしょう、どれ〜〜!?」

…抜くべき雑草を認識してなかった(笑)。そりゃそうだ。彼女にしてみれば庭に根ざした植物はすべて遊びと興味の対象であり、ドクダミでさえ”くさいやちゅ”と名前をつけて認識し、避けている。

そもそも雑草なんて植物はなく、自身が名前を知らない植物をひとまとめにして雑草と呼んでいることが大概です。また、特定の目的から外れたものもこう呼んだりします(今回は家庭菜園の”雑草”を抜いてもらう)。

そんなわけで子供には、菜園に植わっているプチトマト、大葉にピーマン、ズッキーニ、枝豆以外のものは抜いてくださいとお願いしましたところ、「一緒にやるの」とお誘いいただいたので、花材のコンディショニングに区切りをつけて一緒に雑草取りにはいりました。

梅雨の盛りに這い回るように広がるツユクサを始めドクダミ、コセンダングサ、ヒメジョオン、フキにミョウガにアップルミント。シダ植物、球根類などなど。
「お、いいかたち。一杯いけるかな」なんて普段なら花材にしているようなものも、子供と一緒、教えがてらすべて雑草として引っこ抜いちゃいます。

もちろん、そのまま生やしておけばいずれ花材として活躍することもありましょう。ところが梅雨明けからの旺盛な生長を考えれば、花材不足の心配は無用。玄関へのアプローチや家庭菜園周りなどへの侵食が著しい雑草はしのごの言わずに刈ってしまったほうが得策です。なにせ雑草は害虫(これも雑草同様、人の生活にとって害という意味)の住処となることも多い。

そんなわけで次に次にと抜いていくのですが、いざ始めるとどうでしょう、抜いているのは僕ばかり。さっきまでの勢いはどこへやら、子供は10と抜く前に気持ちはどこか別へ移ってしまったようです。こちらは始めたからにはと区切りのいいところまではサクサク抜いてしまおうとペースを上げるものの、気持ちが離れるとその場からも離れたくなるようで、僕が作業を続けることも許してもらえません。

子供の何気ない一言から、普段から気を払っているつもりでいた植物に対しての、向き合い方を再確認させてもらった思いです。

そういえば、知り合いの花屋さんで花の名前を全然覚えない人がいました。それでもその方の組んだブーケはたいそう評判がよく、扱う対象を言語化しないままに別の様態(切り花をブーケ)に変え、人の感性に訴える作品を生み出すというのは理にかなったもののように思われました。

花の名前と特性を知った上で、消費者に伝えるというのも、花屋さんの責任として必要な部分かもしれません。一方でこうした要素は、美しさや感性を揺さぶる作品と直接的に関係しているわけではありません。実際花の名前をたくさん知っている人が、素敵なブーケを組めるかというとイコールではないでしょうから。

ただ、たくさんの花(の名前や特性)を知っていると、素敵なブーケを組むための花合わせや代替えなどをみつけるための道筋は立てやすくなるわけでして。ここら辺、それぞれの要素を塩梅よく充実させていかねばと思う次第です。


ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。