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中野喫茶室ー5場②

役者     お前この前顔合わせで台本忘れたときとかさー、ギリギリでマネージャー来てプロデューサーにばれなかったって言ってたじゃん

新人役者   たまたまでしょ

役者     俺も稽古ん時足怪我してさー、そん時とかも来る予定なかったのに偶然車で現れて病院運んでもらったんだよな

新人役者   そんなん仕事だし

役者     お前がここでふてくされてるから迎え行けって言うのも?

新人役者   は?

役者     メール来たの、だから俺来たの。てか一緒にいると思ってたけど・・・お前、絶対やりたいって言ってたあのオーディションダメだったんだって?

新人役者   あいつそんなこと喋ったのかよ

役者     違うよ、それは一緒のやつ受けに行って、落ちたやつに聞いた

新人役者   俺の態度がわりいから落とされたんだって。子役みたいで気持ち悪いんだって、なんだよ子役みたいって。嘘だって。俺ちゃんとやってんのにさ、すげー真面目にやってんのになんだよそれ

店員1    お待たせしました

役者     あ、どうも

店員1    嘘つかなくても大丈夫じゃないですか?

新人役者   は?俺嘘とかついてねーし

店員1    その不良みたいな感じもなんかそこそこいけてますよ~・笑

役者     不良って・・・おっさんかよ

店員1    無理すると疲れますよ~楽にやってんのがいいでしょ~

    ドアが開き、入ってくる作家

店員1    お帰りなさい、いました?

作家     いなかった、てか北口行ったらブロードウェイ?入って、2階に行こうと思ったら3階に行っちゃって地下行ったら地上にあがるエスカレーターなくてなにあそこ!○○○(その日の野菜)がすごい安くて買っちゃったよ、見てこれ、肉屋と魚屋と服屋が並んでんの、もびっくりしたんだけど!

店員1    ザ・中野ですね

作家     ドラマだけだねやっぱ

店員1    なにがですか?

作家     喫茶店で喧嘩してて水ばしゃーんてやるのも街に探しに出て偶然見つけちゃったりするのもさー、無理でしょほんと、そんな偶然ないって、何万人いるのよ、どうやって偶然見つけるのよ、は~疲れた~ドラマほしかった~なんかこうさー、作品のネタになるようなドラマ?事件?ほしいじゃない、

店員1    そんな劇的な事件なんて普通に生活しててそんなないでしょ~・笑

新人役者   携帯見ない限りないな

役者     お前ほんと携帯見るの好きね

作家     あ、嘘つき少年のオオカミだ!

新人役者   は?てめー何言ってんだよ

作家     怖い!キャラかわってるし!

店員1    嘘つきって言っちゃってるし・笑

作家     え!なんだっけ!

店員1    オオカミ少年でしょ

作家     あそれ、あれ、二人は仲直りしたの?なんで

役者     喧嘩なんかしてねーし

新人役者   てめー人の話聞いてたのかよ

作家     見て!僕、ここの席!近い!聞こえただけ!え!聞こえるでしょ!てかなんでそんなキャラ変わっちゃったの!?どしたの!ぐれた!?

新人役者   ぐれたってお前もおっさんか

店員1    まままままま

    ドアが開き、飛び込んでくる営業マン
    入ってくるなり人間ジュークボックスに土下座

営業マン   ごめん!のまれた!!あとちょっとだったんだよ!絶対あれ、来るはずの台なんだよ、今日はたまたまなんだよ、俺、ツケの分も全部稼ごうと思ってあたりきてたのにまた突っ込んじゃってそしたらのまれた!ごめん!

作家     うっわ・・・最悪だ・・・・・・・

店員1    ドラマですね~

    営業マン、店員1にも土下座

営業マン   ごめんなさい!稼げませんでした!ごめんなさい!!!

店員1    お兄さん、うちのツケ、いくらたまってるかわかってんでしょうねえ~

営業マン   はい!ごめんなさい!本当にすいません!明日、必ず!必ず!

    ドアが開き、戻ってくる店員2

作家     戻ってきた!なに!色んな展開急にありすぎ!出るか、水、出るか

店員2    お疲れ様です~

店員1    おう、どこ行ってたんだ

店員2    あ、ブロードウェイの黒猫カフェに偵察行ってきました~

店員1    なにかつかめたか

店員2    うちもメイドはじめますか!ハハハ

作家     え、怒んないの?あれ?え?ねえ、怒んないの?

店員2    何がっすか?え、俺なんか怒られるんすか!

店員1    お前なんで黒猫カフェ行ったんだ

店員2    あれ、なんだっけ、俺、走ってたらメイド服着た子が声かけてきて・・・マジ財布持ってなかったらから焦りましたよ~

店員1    ちゃんと払ってきたのか?

店員2    あなんか、昨日ごみ袋買ったじゃないですか、おつりがエプロンに入っててラッキーでした!

店員1    お前のその、客を覚えない感じ、ひどくなってきたな~

店員2    え、客っすか、あ、いらっしゃいませ~

    バックヤードに消える店員2

作家     なんで・・・

店員1    走ったから

作家     ?

店員1    走ってる内に全部忘れちゃったんでしょうね~あいつバカだから・笑・いや~若いって素晴らしいな~

    土下座したままの営業マン

役者     なんか、取り込み中みたいなんで俺ら帰りまーす

店員1    あ、ほんと、すいませんねえ、ありがとうございました

新人役者   いくらだよ

店員1    お、いいねえその感じ、不良っぽいねえ~悪い子だねえ~

新人役者   うるせえよ、俺はこういうやつなの!あ、おっさん俺に絡むとなー・・・

店員1    絡むと?

新人役者   うちのマネージャーが店ごとぶっつぶしに来るからな!

作家     豹変!

店員1    ハハハハハ・820円になります。うちは消費税オマケですよ

新人役者   いちいちうっせーなおっさん

役者     事務所行って謝るぞ

新人役者   謝んねーし、俺、悪くねーし、俺こんなんだし

店員1    ありがとうございました~

    出ていく役者二人。残った土下座営業マン
    見守る作家

店員1    どうしましょうかね

営業マン   明日!明日すげーのあるんです!整理券もほら!明日のグランドオープンはもうすげーんすよ、マジで、明日絶対勝てるんでそれでだめなら・・・

    カウンターにあるペンで紙にメモを書きつけて渡す

営業マン   それでだめだったらそしたらここに電話してください!

店員1    これどこ?

営業マン   実家です!

作家     親頼みかよ!

店員1    いいよ、うちのツケよりこいつの金、先に返せよ

営業マン   はい!明日また来ます!ありがとうございました!
    
    勢いよく出ていく営業マン

作家     嘘でしょ

店員1    (片付けながら)いいドラマ見れましたね~

作家     いやいやいやいや、ないでしょ~あれ冗談でしょ?

店員1    冗談なんですかね~

作家     あり得ないでしょ、黒猫カフェ行ってたってどういうことですか

店員1    あそっち?

作家     そっちもだし借金土下座と親の電話番号でごまかすあいつもだし、何あのキラキラボーイの豹変もいったい、なに!冗談でしょ?

店員1    彼らなりに一生懸命なんじゃないですかねえ

作家     一生懸命って・・冗談でしょ・・・

店員1    またいしたことないですよ、あるでしょ、よそから見たら冗談みたいだったり嘘みたいだったりするんじゃないですか?

作家     何がですか?

店員1    普通に生きてて起きるドラマとかって、割と冗談みたいな感じなんだと思いますけどね~でも本人は必死ですよね、あ僕ね、昔役者やってたんですよ、そん時ありますよ

作家     え!役者やってたんですか?どういうこと!?え!そうなんですか!

    レジから百円を出し、人間ジュークボックスに入れる店員1

店員1    そん時ねえ、喫茶店でムカついて、マネージャーに水かけたことありますよ

作家     え!ほんとですか!え!ドラマじゃなくてほんとに水かけたんですか!

店員1    ハハハハハハ、嘘みたいでしょ?


【音楽】   「M8(今・元気ver. )/ナリナリ」

【明かり】  M8はじまったら全暗転。音楽残り、いつの間にか、CDの音にすり替わって
いる、曲後半、人間ジュークボックスに一筋の明かり。誰もいない






おわり


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