For all the unsung heroes.
SIXES男子日本代表、第二のオリンピック「The World Games」で日本ラクロス史上初の銅メダル獲得。女子は6位入賞。
そして、10人制ラクロスの女子日本代表は、World Championshipで歴代タイの世界5位。
この歴史的快挙に、いくつかの感情を抱いた。それを紐解きながら、文章に残しておこうと思う。
7月13日(水)朝9時。イギリスを相手に、銅メダルをかけた3位決定戦が始まった。それまでの戦績を見た限り、どっちが勝ってもおかしくなさそうだ。
6台のカメラを駆使したエンターテイメント性の高い映像。会場に爆音で鳴り響くアップテンポなEDM。テンションがあがる。
案の定、常に2-3点リードしつつも一進一退。3点リードで迎えた最終Q、ラスト2分35秒で初めて同点に追いつかれる。
試合ラスト2秒。イギリスの決定的シュートを日本のゴーリー福島裕樹が阻み、試合はサドンデスビクトリー形式の延長戦へ。その時の会場の盛り上がりは、こんな風に紹介されていた。
イギリスのポゼッションから始まり、息の詰まる3回のターンオーバーを経て、日本のオフェンス。延長戦開始1分30秒。沸き立つスタジアム。山王戦直後ように、駆け寄り抱き合う選手たち。
そこには、まさに僕が思い描いていた、ヒーロー達の姿があった。
見る者の目をくぎ付けにし、心を揺さぶり、夢と希望を与える。そんな、絵に描いたようなヒーローだ。
僕は、その日一日、初の銅メダル獲得の影響に備えた作業に追われながらも、少しの興奮と心地の良さに包まれていた。
今年は、史上最多の4つの代表が3年ぶりに世界大会に出場することになった。日本ラクロスに大きな爪痕を残す、コロナによる空白の2年間。
コロナはどこの国においても、等しくラクロスを奪った。もちろん、国によっていろいろと事情は異なる。それでも、この大会は「日本ラクロスが過ごしてきたこの2年間」が問われることになるんだろう。ハッシュタグの #待ってろ世界 にはそんな気持ちも込められている。
僕らのようなJLAの事務方は、日本代表を直接強くすることはできない。代表が強くなるための環境を一つずつ地道に整えて、あとは託して祈るだけだ。正解は分からないし、わかりやすい結果が出ることは少ない。だから、この「わかりやすい結果」は、特別なものだった。
「環境」というと、練習場所の確保とかエクイプメントの手配とかがすぐに思い浮かぶが、本当はもっと広くて深いものだと思う。
JLAに入ってから、そういう「日本ラクロスの生態系」みたいなモノがよくわかるようになってきた。今回の「ヒーローたちの活躍」の奥に、膨大な量のエネルギーと想いと行動が見て取れた。
例えば。
8年前に一生懸命新勧活動をした学生と、そのラクロッサーにラクロスの面白さを教えてくれた先輩。
5年前のイスラエル大会で、他国の試合データに分析用のフラグを立て続けてくれた100人以上の全国の学生。
2年前、コロナ禍での活動で、毎日チーム全員分の体温を管理し続けたマネージャー。
1年前、枯渇するグラウンド状況の中で、何とか大会を成立させるために奔走した全国の大会委員。
言い出したらキリがない。いくらでも遡れてしまうし、どこまでも広がってしまう。
全てが、今につながっている。
この歴史的勝利は今ラクロスに関わっているすべての人と、今までラクロスに関わってきたすべての人の勝利なのだと思う。
誰一人「日本代表を勝たせるために!」なんて考えてもいなかったと思う。きっと、ただその時に必要だと思ったこと、心が動いたことをやっただけだ。それでもそのエネルギーの総和が、結果として今の日本代表を形作っている。
日本のラクロスコミュニティのつながりは、濃くて強い。だからこそ、一人ひとりのエネルギーが、そのまま代表チームを作り、支える力になる。
ラクロスのヒーローは、スポットライトを浴びて輝く人だけを指すのではない。
For all the unsung heroes.
この勝利は、まぎれもなくあなたのものだ。
そして、今ラクロスに夢中になっている名もなき英雄が、
きっと未来の「ヒーロー」になる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?