「ダサい」から「クール」へ移行するために

河内一馬 / Kazuma Kawauchiさん(@ka_zumakawauchi)のnoteの記事がとても刺激的で面白かった。
刺激されて、グルグル考えさせられたので、文章として残すことにする。記事を読んでない方はまずはコチラ↓を読んで欲しい。というか読んでください。本当に凄い内容です。

以下、河内さんのnoteの記事をここでは「クール論」と呼ぶことにする。
河内さんのクール論は、サッカーに限らずあらゆる組織にいえる提言だと思う。

「弱い」と「強い」、「ダサい」と「クール」の、「因果関係」と「移行の順番」を河内さんは示してくれた。
「クールで強い組織(クラブ)」が理想の姿なのは間違いない。今「弱い」としても、今「ダサい」としても、あらゆる組織はこの理想に向かって動き出すべきだ。

では、どこから始められるか?
どこから変えていけるか?

というのも、実際には大きな課題の1つである。

この記事は、河内さんの書いた内容を読んで、
「じゃあどうすればいいの?」
「実際変えるのってなかなか難しいよね」
と一瞬でも思ってしまった私や貴方に対してのレジスタンスでもある。

この記事では、まず「なぜ難しいのか」を言語化する。その上で「どう解決していくか」のルートを2つ挙げる。あくまで「ルート」だ。どちらの道も険しいのは変わらない。だが進むことはできる。

「理想はある。変わらないといけない事もわかっている。でもどうすれば脱却できるのかわからない。」
そんな渦中にある人たちが、現状に飲み込まれないように明文化しておくことが、この文章の目的でもある。

■「ダサい」を変えるのは、なぜ難しいのか

「クール論」本文にも記載あるが、「クールを作るには時間がかかる」。更に、そこから強くなるにも時間がかかるのだ。そのためには資金が欠かせない。

継続には体力=金が必須である。

「ダサい」ことをしてモガく組織の多くは、そんな体力がないことが殆どだろう。「クール」で居続けるためには時間=金がかかる。このジレンマは河内さんも自覚的な筈だ。
「クール論」の中でマンチェスター・シティの成功例が挙げられていたが、マンCは「金を得たことでブランディングを行った」と明記している。先に「金」ありき、である。つまり順番としてはこうだ。

「金」→「クールで弱い」→「クールで強い」

だが、まずその「金を得る」ことが世の中難しい。数年規模の資金となると尚更だ。ではどうすれば良いのか?

ジリ貧状態の組織では、往々にしてこんな発言が力を持つ。
「まずは力を蓄えなければ」「そのためには手段を選んでる場合じゃない」「それから理想を目指せばいい」「今はそんな時期じゃない」
至極ごもっとも。グウの音も出ない正論だ。正論なので論理で対抗するのは難しく、大抵の場合はその方向性で落ち着く。
だが昔から薄々、この方向性には疑問を感じていた。この正論に従った組織に、理想の方向へ舵を切るタイミングは果たして訪れるのだろうかと。

■どう解決するか 第1のルート

■「ダサい」から「クール」へ
勿論、世の中を見渡せば「ダサい」から「クール」に舵を切った組織も存在する。ユニクロがその成功例の筆頭だろう。

ユニクロのブランディング戦略

かつてユニクロは「キャッチャー」だけど「ダサい」極みのようなCMを打っていた。例えばコレ。

だが今ではヒートテックに代表されるように、長年愛用されるシリーズ商品を意図的に作り出し、「作ったものを売る」ブランディング戦略で、「売れるものを作る」ファストファッションとは一線を画した存在になっている。

最初はダサかったユニクロは、資金を自力で獲得してブレイクスルーを果たし、ブランディングに本格的に舵を切っていった。先の正論プランを採用した場合、目指す目標到達点はここだ。
順番にすると、こうなる。

「ダサくて強い」→「クールで強い」

「ダサいけど儲ける」→「金」→「クールに転換」と言いかえてもいい。

一方で、戦力=選手が1年単位でコロコロと移動するサッカー業界は、「ダサくて強い」から「ダサくて弱い」に容易に転がり落ちる特殊な世界なのだろうと思う。だがそれ以外の多くの業界では、企業や組織が成長・洗練していくパターンは「ダサくて強い」→「クールで強い」の方が多い。それほどまでに「資金がある」ことは企業や組織に好転を促す。

サッカー業界には詳しくないので、「ダサいけど死ぬほど儲かる」というビジネス戦略がはたして存在するのかは知らない。(他の業界には存在する。)もしサッカー業界にも存在するなら、それを実行することは絶対に正しい、というのが持論だ。

事実、資金力がある個人や組織ほど、考え方がまっすぐである。目先の結果に捉われる必要がなくなるからだろう。

■ダサいことをする理由
「まずは儲けるパターン」で成功を収めたユニクロは、「苦しくて」ダサいことをしていたわけではないのも重要だ。
一方、多くの組織が行う「ダサい宣伝行為」は、苦しい現状を生き抜くために「仕方なく」行わるのが殆どではないかと推測する。
苦しい状況の中で、今を生きるために近視眼的な飛び道具プランで糊口をしのぐ毎日。だがそれでは、生き抜くだけで精一杯で、抜け出すことは難しい。
ブレイクスルーの訪れる気配が一向にないまま、中の人達が生きていくために運営される組織。そこでは、理想に向かうためではなく、明日を生きるために「ダサい」ことが繰り返されてゆく。
これが、先の正論プランを採用した時に1番陥りやすい罠だ。自ら負の連鎖に足を突っ込んでいると言える。

「ダサい」道を選ぶならば、「キャッチャーさ」という推力で瞬間風速を最大化して、〈負の連鎖状況〉という「重力」から脱出するための第2宇宙速度を獲得しなければならない。

■では、日本のサッカー業界の実情はどうなのか

河内さんの記事に触発された「えとみほ」さん(@etomiho)がJリーグの中の人の立場で内部事情を語っていて大変興味深かったのでリンクを貼っておく。このえとみほさんという方は、IT事業の立ち上げを経て今はJ2リーグの栃木SCでマーケティングをしている方だ。


有料記事(見出しだけでの拡散を避けるため)だが、Jリーグの中の人のリアルな話が読めるので興味のある方には是非ご一読を勧める。この中では、氏が所属する栃木SCやJクラブ全体のマーケティング予算事情が赤裸々に書かれているのだが、その数字には正直驚いた。「月にあと幾らデザインにかけられれば、ほとんどのJクラブのクリエイティブは飛躍的に向上する」というその金額が、まるで中小企業のようなリアルな数字だったからだ。その金額が実際にあったとしてもデザインは後回しになるであろうことも予想され、つくづくこのイメージ戦略問題は根が深い。Jクラブの財布事情は一体どんな状況なのだろうか。

■Jリーグのクラブ決算
つい先日発表されたばかりのJリーグ全クラブの決算を見てみよう。
下記は、開示・公表された全クラブの営業収益のみを抜粋して金額順に並べた一覧である。

クラブによって、かなりの格差があることがわかる。例えば同じJ1でも、浦和は甲府の4.6倍で、60億円以上の開きがある。表には入れなかったが純利ベースでは浦和と甲府は3億強の開き。差は縮まったように思えるが、浦和の支出は74億に対して、甲府の支出は16.8億。その差は約57億円もある。選手や環境・宣伝・広報などに注げる資金の歴然たる差が見て取れる。

一方で、リーグ全体の営業収支はJリーグ史上最高額を記録したらしい。

動画配信サービスのDAZNと交わした10年2100億円の独占契約のおかげで、Jリーグ配分金は昨年度の62億2500万円から122億7000万円とほぼ倍増した。ただ実際は成績に応じて配分額が大きく異なるので、格差は広がることになる。とは言えベースアップは確実で、この配分金増額が各クラブのマーケティングやブランディングに良い流れを齎してくれることを期待したい。

Jリーグの収支内訳や収入源についてはこの記事が詳しい。興味あれば是非。

フットボールマネーリーグ

ちなみに、海外のサッカークラブはどうなのか。
「フットボールマネーリーグ」という世界のクラブの収益ランキングを、世界最大規模を誇る会計事務所デロイト社が毎年発表している。最新版はこちらだ。

欧州におけるサッカービジネスの巨大さが数字で見て取れる。「クール論」でも言及されていたユヴェントスは第10位(約551億円 / 4億570ユーロ)に位置する、世界トップレベルの収益を誇るクラブだ。
ただちに日本と比較するのもあまり意味がないが、この差が欧州と日本の余裕の差でもある。

話を戻そう。
組織としての「精神的」=「資金的」余裕を得るためには、ダサい方法しかないのか。皆この道を通らなければならないのか。この悩ましい疑問には、まさに河内さん自らが答えを出してくれている。「クール」からスタートする方法だ。

■どう解決するか 第2のルート

■「クール」を売りにする
SNSが発達した今、口コミの影響力は爆発的に大きくなっている。1個人の意見が何万人に拡散されうるし、逆に粉飾された宣伝はあっという間に化けの皮を剥がされる時代だ。
組織も個人も、ブランディングが大きな効果を発揮して、ひとたび承認されれば膨大な賛同者を得ることも夢ではない。
「クール」であることが、そのまま資金に直結しやすくなっているのだ。
河内さんはアルゼンチンでの活動費を、そのクールさで集めてみせた。(本田圭佑選手への呼びかけは起爆力としての「キャッチー」さだろう)

河内さんの書く文章は「これからの日本サッカーの展望」に、新しくて本質的な提言が盛り込まれていてどれも凄まじいのだが、最近氏はこんなことを書いている。

ここでは、スポーツにおいて「WEB戦略は必須」となっていることが説かれている。選手や監督のみならず、クラブにとっても必須なのだ。
個人よりも身動きが取りにくいと思われている組織でも、「クール」を売りに賛同者を集めながらスタートしていくことは、絶対に出来る。

「弱い」→「でもクール」→「賛同者を得る」
→「クールだから強くなった」

「今はそれどころじゃない」と自分に言い聞かせて「現実的な対処」をしていると思い込んでいる者は、時代が変わってきていることに気づいていない。理想を堂々と掲げることが、何よりも強い時代になってきている。

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宇野航

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