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大盤解説会

2024年4月23日(火)
私は中高で将棋部だったこともあり、全然強くはないが将棋は好きで、最近はタイトル戦をAbemaで中継してくれているのでよく観ている。
そんな中で、私が住む四街道市に近い成田市にて名人戦の対局が行われるとのこと。
対局自体は棋士が集中できる環境で行われるので目の前で観戦することはできないが、代わりにタイトル戦では「大盤解説会」というものが存在する。対局場の近くの施設で、棋士による対局の様子の解説が行われるというもので、分かりやすくいえばトークショーに近い存在だろう。
ただこの大盤解説会、行ったことがないとなかなかにハードルが高く、それなりに将棋の知識がないと厳しいのではないかと怖くて行けない人も多いと思うので、この機会に実際に行ってみてどうだったかを記録しておく。

まずチケットの購入について、大抵はネットで申込ができるが、その回によって会場も異なるため、申込方法・値段・定員どれも様々。将棋連盟の公式サイトに案内があるのでそれを参照。成田対局に関しては2日制の対局で、1日目の解説会を2000円で入手できた。これは破格だと思う。野球の観戦チケットでも最近は外野でも2000円以上するのに、それを野球以上の長時間行われる大判解説会で2000円とは、すごすぎる。

いざ当日。2日制の1日目ということもあり、解説会は13時半~18時半までとのこと。これが2日目だと10時半~終局(21時頃)までという長丁場となる。2日目のチケットは3000円だった。
席は全席指定なので開始直前に会場に到着。成田文化芸術センターが会場で、定員224名、ほどほどの広さの映画館といった感じ。前から6列目の座席が割り当てられたが、8列目以降は空席となっていた。YouTubeで配信も行われていたので、その都合か、それとも定員より申し込みが下回ったか。座席は指定席だが、前から順に自動的に割り振られていくようで、自分では選べなかった。ただ、6列目でも十分前方がよく見える。東京ドームとかのライブで肉眼ではステージに立つ人がほぼ見えないのとは対照的だろう。
特にドレスコードとかもなく、客層も若い人から年配の方まで様々。将棋というと私が中高生の頃はお年寄りの趣味みたいなイメージがあったが、ずいぶん広い層に浸透したのか。そもそも大盤解説会に来る人は将棋が好きな層なので、元々このくらいの客層なのか。

13時半に解説会開始。解説は四街道市出身で有名な木村九段、聞き手は佐倉市出身の小高女流初段。この地元メンバーの組み合わせもアツく、今回の参加の決め手となった。
また、対局者は藤井名人と豊島九段。豊島九段はニコニコで一時期流行った「豊島、強いよね」と言われた側の棋士として有名。また、私と同じ1990年度生まれの唯一の棋士ということで応援している。
まずは対局自体は朝から始まっているので、解説会が開始時点に指されているの29手目まで順番に解説していく。とはいっても、序盤の駒組みなのでスムーズに進む。この序盤の解説をしている最中、藤井名人により30手目の5五角が指された。そのため最終的に30手目まで解説したが、木村九段曰く「この5五角、AIでは候補に上がっているが普通は指せない手」とのことで、「豊島九段はここから長考でしょう、解説としては手が難しいし進まないしで最悪の展開です」と笑わせてきます。時刻はまだ開始から30分の14時丁度頃。まだ解説会の終了まで4時間半あるが、2日制の1日目だとここから進んでも20手くらいだろうし、話す内容は持つのだろうかと不安になる。ただ、木村九段は話が面白いことで有名なので、多分大丈夫そうだ。
手が進まない間は成田市についての話などがされる。名人戦の成田対局は20年前が初開催、その後10年おきに開催で、今回が3回目。1・2回目はどちらも羽生・森内の対局だったとのこと。
14時15分、これから15分間休憩に入るとの案内。学校の授業のように、45分トーク、15分休憩のサイクルで回りそうだ。

14時半、解説会再開。登壇者も順番に休憩をとるようで、木村九段は休憩。代わりに立会人の森内九段が登場。解説会の案内には木村・小高の名前しか書かれていなかったので、森内さんの登場に驚き。森内九段も同様に解説を行い、また成田に関する話題を話す。
わずかに手が進み、32手目まで進んだところで、「次の一手クイズ」が開催。これは大盤解説会恒例行事のよう。将棋に詳しくない方でも楽しめるよう、壇上の棋士が候補手をAとBの2種類考え、さらにCのその他も加えて3択から選ぶ形となる。
今回はA…8六歩、B…5六飛、C…その他となり、私はその他を選択し、投票箱に用紙を入れて投票。15時15分から休憩となる。

15時半から解説会が再開し、今度は副立会人の渡辺和史六段と木村九段による解説となったようだ。ただ、5時間もの長丁場、ずっと会場にいるのも長いのでこの時間帯は途中退室して成田山周辺を散策することとした。解説会は途中退室・再入場は可能だ。なんだか大学生の3限サボりみたいな感覚に陥る。どうやら16時15分から休憩に入ったようなので、そのタイミングで会場に戻る。

16時半から解説会が再開。4限目ですね。3限の時間には手が一手も進まなかったので、結果として良いタイミングでサボることができた。解説は副立会人の佐藤和俊七段と小高女流となった。また、この休憩のタイミングで33手目が指され、次の一手は8七歩。私の記載したC…その他が正解となった。
まずは正解者へ抽選でプレゼントが渡されていく。このタイミングでサボっていたら当選しても賞品がもらえないところだった。商品は棋士のサイン色紙。色紙なら貰って嬉しいし、主催者側もそんなに費用がかからないし確かに丁度良い商品だろう。なんと8名もの人に当たる。今回の解説会に参加した棋士と、両対局者の色紙があった。残念ながら私は抽選には外れた。抽選終了後はここ数手の解説を行い、少し早めの17時から休憩。

17時15分から再開。大盤解説会会場のすぐ隣で指導対局会というものも開催されており、ちょうどそちらが終わったようだ。指導対局会に参加していた棋士が順に登壇し、トークをされた。島朗九段、森下卓九段、石井健太郎七段、近藤誠也七段、高橋佑二郎四段が登壇。タイトル戦一戦だけでも、対局者だけではなく、本当に多くの棋士が関わって成立しているのだなと感じる。島九段・森下九段の長年の棋士生活からの心境の話は印象的だった。また、今年新四段に昇段したということで気になっていた存在の高橋四段の姿が見られたのも良かった。高橋四段はまだ公式戦の対局なしという状況でもこうした場に来られて、新入社員感がすごく今後も応援していきたいです。また、2日制の対局のため、封じ手クイズというものもあり、恐らく次の36手目で封じ手だろうという木村九段の予想のもと、各棋士に封じ手の予想を聞いていた。

18時から再開。登壇者は木村九段と小高女流。休憩時間中に36手目が指され、7七桂成という手。これは新四段の高橋四段だけが予想した手で、おおっとなる。
そこから少し進み、恐らく次の39手目が封じ手となるので、棋士が封じ手候補を考え、それを解説していく。
候補手はA…6六銀、B…4八玉、C…その他となった。
無事に18時半に封じ手となり、応募用紙を投票。当選していた場合は郵送で賞品がもらえるとのこと。18:46の快速東京行きに乗って帰宅。

ということで長丁場の解説会であったが、結構楽しかった。戦形や囲いまで詳しく分からなくても、駒の動かし方と棋譜の読み方が分かれば全然問題ないだろう。ただ、司会が木村九段というスーパースターなので、人によっては少々話題に困る場面もあるのかもしれない。途中退室もできるので、状況次第で周辺を散策するのも良いだろう。しかし、今回周りを見た感じだと、常に9割方は着席していて、1割くらいが離席しているくらいの割合だった。今回は午後だけだったが、丸一日のパターンの長丁場だとどんな感じになるかも気になるのでまた見に行きたい。

ちなみに封じ手は2七歩打となり、C…その他が正解となった。小高女流が「ここに歩が欲しい」と何度か話題にしていた手。当選していれば賞品が届くかもしれない。
なお、対局の結果は終盤まで均衡した展開が続いた中で、最終的に藤井名人が勝利となった。今後の対局の展開も見逃せない。

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