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エッセイストになりたいねん

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自分の人生や日々の生活に起きたことをエッセイにしています。
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2019年2月の記事一覧

イギリス音楽体験記|ウォータールーの夕暮れ

イギリス音楽体験記|ウォータールーの夕暮れ

イギリス留学も終盤に差し掛かった頃のことである。半年住んだロンドンにもすっかり慣れた一方で、私は不完全燃焼に陥っていた。思えば冬の間中うつ状態で家に籠もりきりで何もしていない。学校はサボり倒したし、罪悪感で死にそうである。せめて最後に一花咲かせて帰りたい。故郷に錦を飾りたい! いやまあロンドンは故郷じゃないけど、とにかくこのままでは終われないという焦燥感があった。

そんな折に日本人の友達に教えて

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食べ道楽 | やせる味覚の作り方

食べ道楽 | やせる味覚の作り方

私が太ろうが痩せようが本当にどうでもいいことだとは思うけど、それにしたって深刻なレベルで太ってきて困っている。意志の力では抗えないほどの強い呪いのようなものが掛かっていて、私の体の外周を外へ外へと引っ張ってくるのだ。げに恐ろしき運命(さだめ)かな……!

"本当のデブ"の領域に片足を突っ込んで気がついたことが様々ある。例えば、肉の肥大化によって身体の思わぬ部分に谷が生まれ、ちょっと痛かったりするの

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どんよりイギリス記|人見知りだった私が留学でちょっとだけ前を向いた話。

どんよりイギリス記|人見知りだった私が留学でちょっとだけ前を向いた話。

大学を卒業してすぐイギリスに留学した。もとい、すぐと言っても五月末の出発だったので時間に全然余裕はあった。当時の私は人生に対してまるでやる気がなく、せっかく行けることになったイギリス留学もさほど楽しみにはしていなかった。タイムマシンがあったら頭をハリセンでバシバシ叩いてやりたいくらいだ。

とはいえ私にも無気力の理由は様々あり、要するに人生がつらかったのである。自分に全く自信がなかったため大学四年

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塔の上の武田鉄矢

塔の上の武田鉄矢

姿見の中に武田鉄矢がいた。情けないが自分の話である。

事件はお風呂上がりに起きた。一日二回目のお風呂に入りホッカホカの私。肌はバラ色に上気し、濡れ髪が大人の色気を演出…しているかと思って鏡を見たら、どう考えてもそこにいるのは武田鉄矢だった。

伸びきった前髪は蒸気でベタッとしているし、分け目も絶妙な位置だ。伸び切った髪は毛先が四方八方に向いていて、こりゃどう見ても哲也だよ。狂おしいほどに哲也だよ

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食べ道楽 | 初恋と子ども時代とチョコレート

食べ道楽 | 初恋と子ども時代とチョコレート

バレンタインデーって、恋する女の子のための一日らしい。そうやって人ごとみたいに思うくらいにはすっかり俗世と離れてしまった。もはや尼の域である。もしくは修道女である。私は特に“ゴッド"に自分の人生を捧げるつもりもないのに、気づけば修行の道を邁進していた。もしくは悟りを拓かんとしているのか?

しかしながら、こんな恋とはご無沙汰の私にも、甘酸っぱい思い出の一つや二つあるのだよ、ワトソン君。

小学校二

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食べ道楽 | パン屋さんだらけのワンダーランド

食べ道楽 | パン屋さんだらけのワンダーランド

◇ まえがき
食に関する連載を始めることにした。"衣食住"は人間生活の基本だが、なかでも"食"に興味のない人は少ないだろうと考えたからだ。

"衣食住"における"衣"と"住"の部分は、すっぽんぽんで野宿でもギリギリなんとかなるかもしれない。野生動物なんかみんなすっぽんぽんで野宿でなんとかやっているものだ。しかし"食"がなければ人間はあっという間に死んでしまう。

「美味しいものが好きで…」という自

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試乗キャンペーン実施中

試乗キャンペーン実施中

これまでに二度、試乗に失敗した。どうも自分の身体に合うシートが見つからないのだ。ボディは気に入っているのに、座り心地がしっくりこない。背もたれの角度、座面の柔らかさ、足元の構造など、こだわるべき点はいくらでもある。どれも些細なことかもしれないが、毎日使うものだから妥協はしたくない。せっかく車体搬入までしてもらったのに申し訳ないが、こればっかりは譲れないのだ――。

などと書くとまるで車の話みたいだ

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