今日もおでかけがてら（？）１階の別室に長期滞在していたのですが、なにしろやることと言えば「①ハンターハンターを読む」「②あたしンちを読む」「③庭の緑を眺める」「④横になる（注：ただし寝てはならない）」しかないため、なんかないかなーと思ってあたりを見回すと、ありました。

ラジオのこういうやつが。

っていうよりむしろこのソニーのやつそのものがありました。

「ラジオのこういうやつ」と書いたのは、この物体の正式名称がわからなかったからなのですが、今は本当に便利すぎてボケ防止にならない世の中なので、Googleの検索窓に「ラジオ　」と入れた０コンマ１秒後には「ポータブル」とサジェストされていました。

そうかぁ、ポータブルラジオっていうんかぁ、ラジオのこういうやつは。

あまりにやることがないと人は０から１を生み出そうとする生き物のようで（子どもが遊びの天才なのも同じ仕組みなのでは）、私もやることの選択肢①〜④以外がほしかったのです。そして見付けました、年季の入ったラジオを。

電源を入れてみると「ザザザ……」と今どき聞き馴染みのないノイズが流れてきました。私はスマホアプリのradikoなどインターネット経由でしか真面目にラジオを聞いたことがないので、ポータブル含め物理ラジオのことは全然わかりません。

「おお……番号らしきものが表示されている……」

「FM」と書かれた白黒の表示パネルには「82.5」とかそういう、局番みたいなものが出ています。そうそう、昔CDラジカセがキッチンに置いてあった時、こんな感じやったわー。全然番号とかわからんけど。

局番の部分を勝手に操作していいかわからないので、適当にポチポチと簡体上部の物理ボタンを押してみました。物理ボタンって最近絶滅の危惧にあるよなぁ〜とか、古いものがかえって新しいとはこういう感覚かぁと思わされます（私は昭和最後の年駆け込みダッシュ生まれです）。

FMはどうも拾いが悪いようで、「ザザザ……が……で……です……」のような不明瞭な音声しか聞こえません。こういう音、最近聞いてなかったなーーー！！インターネットでラジオを聞くと、完全に再生できるか無音かの２択なので、こういう曖昧な音に触れる機会はありません。ひゃー、なつかし。

AMに局を変えると、ちょうどスタジオにクラシックセッション系のミュージシャンの方々が来ていて（誰かはわかりませんでした）、『さんぽ』をヨーロッパの舞曲っぽくアレンジしていたり、なにやら楽しくてついつい聞き入ってしまいました。

音質も悪いのに（スピーカーにはステレオと書いてあるけどそんなの関係ないくらい音が割れている）、なんかこう、人の温かみがあるというか、リアリティがあるというか、ああ、今ほんとうにどこかで誰かがバイオリンやらなんやら弾いてるんやな〜と思って、しみじみ。

毎日この音質だったらもしかするといやになっちゃうかもしれませんが、たまには良いもんだなぁと思いました。音から始まるショートタイムトリップ。

ポータブルラジオを聴いていて思ったのは、「情報が限定されていてそれ以上の広がりは絶対にない」ということでした。これは紙の本にも共通する感覚で、「そこに書かれていること以外ない」ところが同じです。

どういうことかというと、スマホでラジオを聴いたり電子書籍を読んでいると、ちょっと気が向けばすぐにその番組や本の内容について（同じ機械を使ったまま）検索で調べることができます。あまりに便利なので、その「検索」という行為を我慢するのは至難の業でもあります。だからつい与えられた情報以外のものも自分から集めてしまう。

一方のラジオ専用の機械や文章専用の紙束には、から情報にそれ以上の広がりはなくって、その媒体から得られることがすべてです。これは状況によって良いこと（情緒がある）にも悪いこと（緊急時には不便）にも転じるのだろうけど、今の私にとっては良いことだなぁと感じました。効果的に余韻に浸れたり、どういう意味だろうと自分でうんうん考えたりできるから。

ヒトは情報を与えられすぎると疲れちゃう生き物だ……みたいな説をどこかで見たような気がします。うーん、確かにそうかもしれんなぁ、疲れてるしなぁ、と日々思っているのですが、かといって自分がいざなんらかの情報を真から必要とした時に、"その"情報を確実に探し当てるには、情報の母数は多い方が良いのだろうなと思います。

そもそもなんのために「情報」のデータベースがあるのかと考えると、やっぱり緊急性の高いモノのためなのかなぁと思うので、情緒のためにそこが絶たれるとデメリットは大きいでしょう。情報の多さについては、あまり善悪を決めつけすぎずに上手く付き合っていきたいものです。

とにかく時間がそのへんの小学生より有り余っているので、ゆっくり情緒に浸りたいと思います。さあ、明日はなにしようかなー（たぶんハンターハンターを読むのでしょう……）。