SNSが普及してから見ず知らずの人の心の内側がいきなり覗けるようになった。体があって、肉体と肉体が対峙して、そこから心の交流が生まれる、みたいな過程をすっ飛ばして。今じゃ当たり前のこと過ぎてさほど不思議に思わないけど、小さい頃の自分が知ったらびっくりするだろうなぁ。隣の席の子の考えてることだって、なんにもわからなかったのに。今はなんだか、脳みそから電極が生えてて、どこでもない誰かと繋がってるみたい。変な感じ！

知らない人の生活や考えていることを眺めていると、私からしたらすごく羨ましいような生活をしていても、満足そうじゃないというか、幸せじゃなさそうに見えることってけっこうある。同等の条件を与えられてても、幸せそうな人もいればそうじゃない人もいたりして。これってなんでだろうなぁとよく考えるけど、やっぱり幸せは自分の心が決めるものだからなのかなぁ。「私はこの条件で幸せになるぞ！」っていう妥協とか、現状への納得が必要なのかもしれない。ハングリー精神も大事だけど。

たとえば今の私は実はそこそこの幸せを感じている。朝昼晩と食べられて、暖かい家があって、お風呂に入れて、ベッドで眠れて。人間の本当に基本的なことが満たされているからか、体調が安定しているのもあって（※約一年自宅入院中）、心は意外なほど安定している。たまに文章を書いたりして、評価がもらえたら嬉しいし、今の状況でも十分に生を感じられている。これってやっぱり、「もうこの状況でも幸せになるっきゃない！」という決意が生んだものかもしれない。幸せな気持ちは自分の内からしか湧いてこない。

もちろんやりたいことなんていくらでもある。たとえば一歩くらい外に出たいし、窓枠で切り取られてない、頭の上一面の空が見たい。できれば自分の足で歩きたいし、たとえば人と話したり、会ったりできたら楽しいだろうなぁ。みんなみたいにオシャレしたり、メイクしたり、カフェに行ったり、飲みに行ったりしてみたい。仕事や趣味だって出来るようになったらいいのにな。もっと言ったら、ほんと、普通な身体に戻りたい。あ、こんなこと言ってたら悲しくなってきちゃう……（笑）

念のために言っておくと、こうやってやりたいことを書き連ねたのは、哀れみが欲しいわけじゃなく、単なる具体例を示すためです。その方が想像しやすいだろうし、わかりやすいだろうから。でも悲しくなるのは本当だ！　それでも、ちょっと悲しくなってでも、わかりやすく伝えたかったので書きました。

なんて、こんなふうに、今の私にはできないことがたくさんある。だけどそれは、恐らく多くの人にとっては当たり前のように出来てしまうこと。他愛もないこと。だって毎日家から一歩出る度に感動なんてしないもの。してたら逆に情緒不安定だ。でも今の私なら確実に泣いちゃうよ。だけど妬んでもしょうがない。自分のことを可哀そうがってもなんにも始まらないから。

この文章を通して何かを訴えたいわけでも、何かを提案しているわけでもないんです。なんだろうなぁ。私が体験しているこの不思議な感覚を、みんなはどう感じるんだろうと思って、伝えてみたくなったのです。奇病で自宅入院なんてなかなか出来る体験じゃないし、レアな意見かなと思って。せっかく電極で脳みそが繋がってるんだし。

ほんと、私からしたら凄く凄く羨ましいような人がたっくさんいて、もうみんな羨ましいけど、それでも幸せじゃない人はたくさんいて、不幸だー！　って嘆いてたりして。それでこの、なんにも出来ない私が、一人で歩けもしない私が、そこそこ幸せなんて、これってなんでなんだろう。本当に不思議な、変なことだよなぁ。単純な絵本の世界だったらきっと私が不幸側に描かれてそうなものを。心の中って見えないなぁと改めて思う。あ、誤解してほしくないので念のため言うと、私は幸せを自慢したいわけではないのです。辛いことなんて山ほどあります。さりとて、どんな状況であれ人は幸せを感じることができる、ということを身をもって示したいのです。

私も昔はいろんな人が羨ましかったことを思い出す。今とはまた違った羨ましさで、劣等感から湧いてくる悔しさのような。ほんと、幸せになりたくて幸せになりたくて、あれもこれも欲しくて、渇望して渇望して。なのに全然満たされなかった。欲求ってきりが無くて、山は登っても登っても高い山が登場して。コンプレックスや向上心があるから人は成長できるけど、満足を知らない心は決して満たされることがない。あの頃の私が得ようとしていたものって一体何だったんだろう。幸せが欲しかったのは間違いないんだけど。

今はなんにも持ってないけど、自分の中に何か大事なものが見付かった気がする。核のような、揺るぎないような。それが何なのかは分からないというか、上手く言葉に出来ないのだけど。なんて何もかも悟ったような気になっても、結局何年か先には、「やっぱりなんにもわかってなかった」とか言って、今の自分を恥じているのかもしれないなぁ。

なんて物思いに耽るのでありました。

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もうちょっと読みたい方へ、
具体的にはこんなことしてます