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パンを食べるために生まれてきた 〜クロワッサンオムレツサンドの巻〜

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」というのはあまりにも有名なマリーアントワネットの迷言で、今さらこれについて語るのも無粋な気はするのだけど、しかしだ、もしも自分がこの言葉をそのままんま投げかけられたら一体どんな気持ちになるだろう。きっとムッとするに違いない。

まず第一に、当たり前だがお菓子ではパンの変わりにならない。パンをお菓子で代用せよというのは、おはぎでおかずを食べろと言っているようなものである。おはぎでおかずが食べられるわけがない。白ごはんにはおかずを包み込むだけの度量があるが、おはぎにはそんな受け皿は存在しない。ただおはぎとしての自己主張がそこにあるだけだ。

そんなことはちょっと考えればわかる話だ。マリーアントワネットのやつめ、さては極度の甘党か? お菓子が食事でも全然気にならないとか言うタイプなのか? だとしたらまあ、それは仕方がない。マリーアントワネット自身がパンがない時にはお菓子を食べる暮らしを送っているのだろう。私にマリーアントワネットの食生活にまで口を挟む権利はない。しかしだ、こちら側の気持ちはまだまだ収まらない。

なぜなら第二に、私はパンがなくてもパンが食べたいのだ。パンがあろうがなかろうが、パンを食べたい気持ちはパン以外で収まるはずがない。「今日のお昼はうどんだな」と思っていたのに突然パンケーキに気持ちをシフトできるだろうか? うどんを食べたい気持ちはうどんを食べないことには終焉を迎えない。いくらうどんとパンケーキが成分的には似ていようが、そういうことではないのだ。お菓子では決してパンの代わりは務まらない。そういうことではないのだよ、アントワネット。

パンが食べたい時、もしも気に入りのパン屋さんが全品しなぎれだったとしたら、私は別のパン屋さんを回るだろう。行く先々で「今日はもうパンはおしまいです」と言われたら、そこをなんとかひとつお願いしますと食い下がるかもしれない。マリーの気持ちはともかく、私としてはそれくらいにパンが食べたい。きっとみんなもそうだろう。私たちはパンが食べたいのだ。我らはパンを食べるために生まれてきたのだ!

「パンを食べたい」の気持ちはやがて民衆を一つにし、麦の穂は突風に揺れ狂い、みんなで植えた小麦はやがて収穫の時期を迎え、人々は協力して小麦粉を精製し、老若男女大きなまな板の上で生地を捏ね、彼らの熱い想いは火の消えてしまった町の焼き窯に再び炎を灯し、発酵したもちもちのパン生地を焼くこと数十分、そこには直径3メートルもの大きなパンがふっくら出来上がったのでした。みんなは広場に集まると夢中でパンを千切り、ふかふか、あつあつ、いいにおい。お城のマリーさんもパンのおいしさにびっくりして、町の人たちもいい笑顔。おいしくってしあわせなパンの時間になったのでした。めでたしめでたし。

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というくらいにパンが好きだ。今日のお昼はクロワッサンのオムレツサンドだった。トースターで焼き直したクロワッサンに手作りのオムレツとケチャップを挟んで、お好みでレタスとマスタードを添える――。こんなお手軽な神レシピが実現するのもパンの美味しさあってのことだ。お手軽と言っても私が作ったわけではないので全ては母絹代のお料理上手の賜物であり、美味しい食べ物はこうも人を幸せにするのかというくらいに剥き出しの笑顔でサンドを頬張ってしまう。

アツアツのクロワッサンはパリパリと生地が割れ落ちるほどに食感が良く、バターの香りがして、そこに挟んだ手作りのオムレツとケチャップの美味しいこと! レタスとマスタードが別で添えてあったが、さらに食感と風味のパンチが加わっても良いかと思い追加で挟んだ。レタスがシャキシャキとして(後から挟むとパンも湿気らない)、粒マスタードの辛みと酸がクロワッサンのバターを中和する。以前に比べて随分と胃がもたれやすくなったものだが、この組み合わせならもりもり食べられそうだ。あっという間に完食。あーあ、美味しかった。



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もうちょっと読みたい方へ、
こんなパンの話もあります🍞



HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞