GYPSY 感想

ルーザーヴィルの感想書く前に先に書いちゃったのであげます。
絶賛してる感想ではないです。


概ね流れとしてはこんなものかな、と思いつつ、せっかくのジュールスタインなので歌唱で圧倒されたかったな。と言うのが大まかな感想。


1幕
ローズの語り口に抑揚があまりないからか、淡々と物語がながれていく。ストレートプレイであればこれはこれで良いのかも?思うんだけど、なんせミュージカルなのでもっと母娘の関係性、母親の異常性がコミカルに濃淡ありで見えても良いんじゃないかな?とは。(たんに好みの問題でもあるが。)
大竹しのぶさんは健闘していらっしゃったんだけど、年齢には抗えずかなあ。
1幕のラストの見せ場である、Everything Coming Up Roseでぐっと気持ちを掴まれて、大きな拍手をしてから休憩へと席を立ちたかったが、どうしても歌唱に対する体力の心配が勝ってしまい、それができなかったのは残念であった。

1幕はHave an Eggroll ,Mr.GoldstoneからLittle Lambのルイーズの孤独の描き方はすごく好きだった。生田絵梨花さんの柔らかな声で人形に語りかけるLittle Lambはルイーズの誰にも見てもらえない孤独と、母親の圧力によって10歳から抜け出せないいびつさが際立っていて個人的に好きなシーンでした。
しかし、ジューンとタルサが惹かれ合うタイミングが全く見えなかったことでAll I Need a Girlにおけるルイーズの選ばれない悲しみや切なさが薄く見えてしまった。これは2幕のルイーズの葛藤が薄くみえてしまう部分にも繋がっていると思う。

タルサのダンスやFarmboysたちは芸達者ですごく楽しくてよかったんだけど、ダンスシーンでタップダンスを想定してみにきたらタップがなくて間延びする感じはある。
子役も動きがタップしてるのにシューズ履いてないから音鳴らなくて??とはなった。
無駄にタップ見るの好きだからタップ見たかったよ〜〜

2幕
2幕は話の流れ的にも母娘問題に切り込んでいくので楽しさは少ないから仕方ないんだけど、間延びが多く、集中できないところがちょこちょこ。わたしの集中力のなさが原因かもしれないけど。

2幕の楽しみであるYou Gotta Get a Gimmickってもっと客席を巻き込みまくっても良い楽曲とシーンであるはずなのに淡々と進んでいき間延びし過ぎていたのが勿体無い。
もっと遊んでも良い曲だと思ってたから、もっともっと飛び抜けてフリークなマゼッパたちが見たかった。

2幕前半のもたつきにより、ルイーズのストリップ出演→喧嘩→和解が速足で過ぎ去ってしまったような印象。
ストリッパーになり、母親のコントロールからの脱却を図った前と後のルイーズの心情の変化はもう少し丁寧に見たかったなあ。
Rose's TurnはEverything〜と同じくで、もっともっと歌唱で圧倒されたかった。たしかに大竹しのぶさんの芝居のちからで今まで手塩にかけて育ててきた娘から否定される苦しみ、葛藤、崩壊は感じられた。しかし、それをこちら側に圧倒的に浴びせてくる歌唱を求めているミュージカルなんだよなあ、というところで惜しい。
最後ローズとルイーズが抱き合うシーンもぬるっとしてしまいメリハリが少なく感じてしまった。

個人的総評
なお、この作品を全く知らずに今回のプロダクションを見たら普通に楽しめるorローズがあまりにも所謂毒親すぎてドン引きする(結構そう言う感想多い気がする!)のかもしれないけど、ローズの毒親さがもはやおもしろおかしくなっちゃうくらいの歌唱で圧倒されるとまた全く違った印象になるミュージカルであるなと個人的には思いました。
昔そういうプロダクションを先に見てて大号泣した覚えがあるから、今回はちょっと拍子抜け感が否めなかった。(大竹しのぶさんに期待しすぎていたのかもしれない。でも長丁場だから体力的にはきついよね…というなんともいえないきもち)
ルーザーヴィルと同じくで、これでもいいんだけど、"ミュージカル"として成立させるためにもう少し詰めが欲しい。(有名人やアイドルを起用する時点で稽古期間とかスケジュールの問題があって難しいのは重々承知の上で、一観客としてのわがままです。)

余談
"GYPSY"という現在はロマに対する差別用語でもあるこの言葉がこの作品に冠されていることについて、ショービジネスはどこまで行っても足元が揺らぎ続ける仕事であり、安定はなく一寸先が闇である仕事に身を置く人間たちの全ての苦しさと、夢や理想を追い求めるショーというある意味遊牧的で自由なものを追い求める人たちの光と闇を端的に表すすごい題だなあと改めて思った。
また、1920年代、良き母親、良き妻を女性に求める時代にシアトルに留まり続けることのできないローズの苦しみ、自由を渇望する気持ち、そのローズに抑圧されて育った二人の娘が自由を求めて自分の人生を生きていこうとする姿全てが"GYPSY"という題に込められてるんだなあと、当たり前のことを今更ながら感じて感動している。
大好きな演目だからまたどこかで見られたらいいなあ。

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