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『ABC座 ジャニーズ伝説 2021at IMPERIAL THEATRE」を通して見るBWミュージカルとアイドルの関係性


あけましておめでとうございます。
今年もちょこちょことブログ書けるといいな。
特に面白みもないですが気が向いたら読んでもらえると嬉しいです。

そしてこちらやっと書いています。
ジャニアイの幕が開き、すでに幕が閉じるまで数えた方が早いくらいになっていますが、私はひとりジャニ伝を振り返ります。


ジャニーズとミュージカル

そもそもジャニーズはジャニーさんがミュージカルWestSideStory(以下WSS)をジャニーズに見せたことから始まっており、ジャニーズ伝説でもそのシーンが出てくる。
この「ジャニーズ伝説」自体も"ジャニーズ"というジャニーズ事務所の黎明期に実在したグループの盛衰と、彼らをプロデュースしたジャニー喜多川ヒロムの死後、彼らが育てた現在のジャニーズアイドル(劇中では戸塚祥太演じるジャニーさんに導かれる7MEN侍の6人)に続くまでが描かれている作品。
その中で今昔ミュージカル曲や演出のオマージュや、彼らが実際に歌った曲、当時流行した既存の音楽を取り混ぜた舞台になっており、見方によっては「ジュークボックスミュージカル」と定義することもできるのではないかと個人的に感じた。
なお、原作ミュージカルに対して大変真摯に、リスペクトを持って作りこまれていたので、パロディではなくオマージュと表現している。

※書いている本人は1度しか見ておらず、記憶が曖昧なので間違っていたら訂正意見など歓迎です。
専門家の意見ではないため、一個人の感想として読んでくださると助かります。史実などは気をつけて書いていますが、間違った表記もあるかと思いますのでご容赦ください。



In The Hights-ワシントンハイツでの草野球

冒頭の草野球の関してはIn The HightsのOPのオマージュかなと。ラップで繰り広げられる会話と歌があの草野球のシーンにぴったりで、リン=マニュエル・ミランダをここで持ってくるか〜とアツくなった。
リン=マニュエル・ミランダといえばやっぱり「HAMILTON」の制作で有名なんだけど、ミュージカルにヒップホップとかラップを持ち込んでミュージカルの歴史を変えたすごい人という感じ。(こなみかん)
リンマニュエルミランダ自身、プエルトリコ系移民のルーツを持つマンハッタン出身の人で、差別とかそういったものを中心にミュージカルでも描く人。In The Hightsもそうだし、アメリカ建国の父であるハミルトンを描いたHAMILTONでも有色人種を積極的に起用したことで有名。(WSSでもプエルトリコ人たちがマンハッタンに出てくるという描写がある。シャーク団はプエルトリコ系。)
ディズニーではモアナと伝説の海の音楽を制作している。
ジャニーズがWSSを見にいく前、ワシントンハイツで草野球をしているシーン、"GHQ占領下の日本"をこのミュージカルのオマージュの音楽で描くってめちゃめちゃグッときた。
今の子達はラップ聴いて育ってるのでかっこよかったな〜。
アイドル自体もこの頃はマイノリティなわけで、これはマイノリティが市民権を得るまでを描いた作品でもあるのかもしれないと思った。邪推かもだけど。


West Side Storyより「Cool」-雨が降り映画を見にいくジャニーズ御一行

これはもう完全にWSSのCOOLのオマージュでかっこよかった。
実際ジャニーさんは少年隊や嵐にもWSSやらせてて(ただ上演権がべらぼうに高いからやめたのかな?)青vs赤みたいなのは"少年たち"にも反映されてるし(少年たちはかなりWSSの要素。死んじゃうところまで含めてほぼWSS)ジャニーズに脈々と受け継がれるWSSの血って感じ。
WSSがなかったら今日のジャニーズもないわけよね。
それにしてもリフの大光とベルナルドの琳寧、大変良かった。みんなアニタになりたかったんじゃないでしょうか。私はなりたかったです。
ちなみにアイドルへの恋慕は叶わぬ恋ということで、オタクとアイドルはトニーとマリアの関係だなと。
どこまで行っても破滅しかない恋というのはWSSの下地であるシェイクスピアのロミオとジュリエットから脈々と続く悲恋の物語であり、今日はオタクとアイドルの関係性になって現存していると思うと勝手に興奮した。
でも個人的にはジャニーさん自身が1番のマリアだったんじゃないかと思うよね。


Jersey Boys-アメリカ留学

「Jersey Boys」は60年代に人気だったグループ"フォーシーズンズ"を題材にしたミュージカル。
ジャニーズ御一行がバリーのボーカルレッスンに出向いた際に会うJr.SPが演じる4人や、ABC-Z(ジャニーさん役である戸塚くんを抜いた)4人が演じるジャニーズの雰囲気が全体的にJersey Boysの香りだった。
ラストにみんなで「Can't take my eyes off you」を歌っていて、物語の最後がフォーシーズンズで締まるというところでも影響力をかんじる。
時代背景としてもちょうどそのあたりで、またジャニーズ舞台の真骨頂を体現するABC-Zお兄さん達がこの曲をカバーしているところにも縁を感じて熱くなる。
また「Jersey boys」自体もフォーシーズンズの楽曲を通してフォーシーズンズの結成からオリジナルメンバー脱退までを描くジュークボックスミュージカルなので、冒頭で触れたようにジャニーズというグループの盛衰を描いているこの「ジャニーズ伝説」自体をJersey Boysに重ねて見ることができた。
そういえば「Can't〜」はABC-Zさんがカバーしただけじゃなくて、前にジェシーが誰かが歌って、後ろで林蓮音くんが踊ってた覚えがあるんだけど幻影?
ちなみにフォーシーズンズは元来有色人種のものであったブルースやソウルを白人が取り入れたグループ。
今となっては普通のことなんだけど、60年代の当時は結構抵抗感があるものだったらしい。
実際被支配者の黒人奴隷たちの労働歌であった慰めのブルーズを支配者である白人が歌うっていうのは被支配側も抵抗感がかなりあるよね。一応単一民族国家に住まう日本人である私たちにはその辺の意識が薄い気がして、根本からはわかりづらいのかな。でも日本でも変な着物の着方してる外国人が時々話題になってたりするし、それのもっと根深いver.といえば良いのだろうか。(まあその辺は黒人音楽の歴史やアメリカの歴史を遡ってください。他力本願。)
ただ、アイドルも元々世論的に否定的だったものが受け入れられていった歴史があるし、やっぱりWSSやIn The Hights(この作品はどちらかというとヒスパニックの差別だけど。) 、そしてこのミュージカルにも通じるものがあるのかなと
なお、いまだにある程度アイドルへの世の中の抵抗感みたいなのは残ってるだろうし、その辺もアメリカ本国のマイノリティの現状と重なる気もする。



A Chorus Line-留学中のダンスレッスン

鏡が出てくるダンスレッスンのシーン。
60年代アメリカで80年代に流行ったミュージカルのオマージュというのも個人的にはツボだった。
コンビネーションを次々やらされるコーラスラインのOPってやっぱりかなり心に残るよね〜
コーラスラインはこの先何があろうとこの道を選んだことを悔やまないと出演者が歌うシーンがあるけど、それがジャニーズに重なってしまう。Oneの張り付いた笑顔もね。笑
現代ではコーラスラインのような舞台の作り方は問題点がありすぎで推奨されてないような気もするけど、いまでもジャニーズは…笑 まあそのリアルさが良いんだけど、辛くなる原因でもあり。オタクの悲しいサガよ。
ちなみにコーラスラインは主役とアンサンブルを隔てる一つの線のことを言うんだけど、それってデビュー組とJr.を隔てる何かと近いんじゃないか?と思います。
今は少しその線が薄れていて、ジャニーズもそうだし舞台自体も主役が主役然としないものも増えてるから時代は変わるんだけど。それでもやはり主役がいて、脇役がいて、アンサンブルがいて、っていうのは一つの解なんだよね。
実際実力は?って聞かれると別に同等かそれより上かもしれないのに、なぜかそこにひかれる一つの線によって命運が分かれるという芸の世界の残酷さ。
それと同時にその一つの光を目指して走る侍やJr.SPのようなジュニア達に向けて、この道を選んだことへの一つのメッセージなんじゃないかなとも受け取れた。
もちろんダンスシーンが印象的だからコーラスラインのオマージュにしたのかな?と思うけど、ダンスだけなら他にも印象的なミュージカルはあるので、なんらかの意図があって題材が選ばれたんじゃないかな〜とそう思いたいのであった。いっちまえばエゴエゴ利己的なオタクの妄言かも〜♪


というわけで上記4つは今昔ミュージカルのオマージュかなと私が思ったが部分でした。他にもそうじゃないかな、ってのがあったら是非お聞かせください。

Never my loveが米でリリースできずアソシエイションが本国でカバーして、日本に戻ってきたジャニーズはそのまま燻る、というのも切なくて良かった。(これは初めて知りました!)
そしてショータイムはジャニーズの音楽で今昔ジャニーズの歴史を共に振り返り、ジャニーズの世界に浸れたことで、ダブルで楽しめる舞台だった!
過去のジャニーズ伝説を見たことがないから何も言えないんだけど、ジャニーズの舞台の中で一番funnyではなくinterestingの意味で面白いんじゃなかろうか。
トンチキな部分もあるけど内容と相殺されていてバランスの良いミュージカルとして楽しめた。
アイドルという概念は日本で出来上がったものだけど、生きたままその偶像を見せ続け歌い踊る、というのはもうそれは生きるミュージカルだよな〜と思いました。

というわけでジャニーズ伝説についてBWミュージカルと共に振り返りました。
願わくばもう一度見たい。

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