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日本は「非魅力的」な旅行先...海外の超富裕層がガッカリする理由とは?

ニューズウィーク日本版 の意見 • 昨日 14:42

<日本には外国人観光客を楽しませる観光地は多い。だが超富裕層が「カネを落とせない」事態に陥っているのが現状だ>
日本もついに「コロナ後」となったせいか、海外ミュージシャンのコンサートの波が押し寄せている。同時に仕事ではなく日本に遊びに来る有名人も多く、京都や有名ラーメン店での写真などがSNSに載っている。有名外国人にとって日本は、仕事の場としての経済大国だけでなく、遊びに来るのにも魅力的な国になってきたのかもしれない。
そんな様子を見ると皆さんは、日本には外国人を楽しませる観光地や遊び場がたくさんあると思われるかもしれない。確かに神社仏閣は見どころが多いし、飲食店のレベルも高く、ショッピングにも困らない。だが、私の知っている外国人観光客の多くは、観光地以外の遊び場が少ないと言う。特に大人が遊びに行く場所がない。
少し前まで日本人の海外旅行はパッケージ旅行が中心で、朝から分単位で予定が詰め込まれていて、一カ所でも多くの観光地を回れるように日程が組まれていた。そのため夜はぐったり疲れてホテルで寝るだけ、が普通だった。
だが欧米や中東の旅行者は、日本人のように勤勉に観光しない。一カ所の観光地にゆっくり時間を取るし、集合時間を守らない人も多くて、予定を詰め込むのは不可能である。そういう余裕のあるスケジュールのため、外国人観光客は夜になっても元気いっぱいで、夕食後も遊びに出かけたい。だが日本には外国人客が集まって大騒ぎできるような遊び場が少ないようである。
何よりもよく聞くのは、お金はいくらでも出せるのに対応してくれる店やサービスがない、という話だ。夜の東京を空から眺めるヘリコプターサービスやリムジンの送迎サービスを探しても、どこも数が少なく、出払っていて対応できないと言われる。昼食付きの東京湾クルーズも、数日前のリクエストには応じてもらえない。


ある時、富豪一家から1~2カ月間遊びに行きたいから、広くて豪華な一戸建て(邸宅と言うべきだろう)を5軒借りたい、賃料に糸目はつけないから探してほしい、とリクエストを受けたが、見つからなかった。Airbnbでも、東京の短期賃貸向け物件は小さな戸建てしか掲載されていない。私の知り合いのアメリカの別荘は、夏の2カ月間だけ約2000万円で貸せるそうだ。そういう物件が日本では見つからない。
逆に考えれば、今まで日本ではそういった富裕層向けサービスの需要が少なかったということなのだろう。一億総中流と呼ばれた時代もあったし、他国に比べれば貧富の格差もずっと小さかった。だから、金さえあれば何でもできるという風潮が広がらず、2倍の金を払うという外国人客のヘリやリムジン予約を優先させる、などという考えがない。このような国はほかにはあまりない。
私は格差の小さい、均質化した日本を悪いとは思わない。人口のほんの数%に満たない人たちが国の総資産の大部分を持つ、などという国で暮らしていくのは、富裕層でもない限り大変そうだ。ましてやこのSNSの時代、セレブと言われる人たちの豪勢な暮らしを携帯の中で見せつけられながら、その月の生活費を算段して暮らすのは随分メンタルに悪そうである。
だがコロナ禍がやっと終わろうとしている今、日本はもっとインバウンドを呼び込み、大きなお金を落としてくれる外国人客を待望している。佐世保や大阪に統合型リゾート(IR)を誘致しようという計画もその一端だ。そして大金を落とす外国人客は強欲でワガママだ。彼らのために、日本はどこまでルールを曲げ、金のためにプライドを捨ててニコニコできるだろうか。札束で頰を張るようなことをされたことのない日本人にとって、インバウンドのカルチャーショックはこれからが本番だろう。
石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。YouTube:「イラン出身シャハランの『言いたい放題』」 Twitter:@IshinoShahran


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